清拭が終わってさっぱりとした私は、休む間もなく一般病棟に戻るため、ストレッチャーに移された。
この時はスライドボードでベッドとストレッチャーに橋渡しをして、4人くらいで移動したが、やはり傷に響く。
何をやっても、手術後は痛いのだと、ようやく観念をする。でも痛いのは辛い。
お腹に大切な硬膜外麻酔のボトルを抱えさせられ、HCUと別れを告げる。
天井をひたすら眺めるだけだが、結構なスピードで移動している感じがする。
一般病棟に戻って来たが、手術前にいた部屋に戻らず、ナースセンターの奥の部屋に運ばれた。
入院時に何か奥に部屋があるなと思っていたが、その部屋のようだ。
てっきり、看護師さん達の休憩室だと思っていたが、リカバリールームだった。
ここで、HCUの看護師さんから、一般病棟の看護師さんにバトンタッチ。
HCUを出る時と同じ要領で今度はストレッチャーからベッドに移される。
また痛いけどしょうがない。
今は午前10時で、術前のガイドブックではお昼ご飯を食べることになっていたけど、あと2時間で食べ物を胃に入れるなんて無理に決まってると思い、少し呆れる。
一般病棟に戻って来てもやることは同じで、ただひたすら痛みに耐えて時間が過ぎるのを待つだけ。
相変わらず胸は痛かったが、ふと気がつくとあれほど痛かった腰の痛みがなくなっていた。
清拭の間中体は動いていたし、HCUから一般病棟への移動で散々腰が動いたためか、爆発するような腰の痛みは綺麗に消えていたのだ。
このことはすごく嬉しかった。
もうこれで無駄に足を動かす必要はない。
リカバリールームの良い点はいくつかあったが、最も良かった点は時計が見えるところにあったこと。
病室には基本的に備え付けの時計が無いようだが、リカバリールームのアナログの時計はとても見やすくて、時間が進むのを感じることができた。
そして、またひたすら時が過ぎるのを待つ。
最近はスマホが必ず手にあるからひたすら待つなんて滅多にないことだ。
しかも、ボーっと待つのではなく痛みに耐えながら待つ。
まさに自分は病人なんだと思った。
一般病棟でもHCUと同じで両手はかろうじて少し持ち上がり、足は動かせるが、体は動かせない。
首の向きを変えることで息のしやすい頭の位置を探す。
息が深く吸えないので、浅くても可能な限り息を取り込めるように必死に工夫をする。
右手に握らせてもらったナースコールだけが、他人に助けを求める手段となる。
この頃から右手の近くにナースコールのボタンがないと不安に感じるようになった。
体を起こせないため、手探りでボタンを探すしかないのだが、いくら探しても手に当たらない時は、見放されたような寂しさと、看護師さんを呼べないという単純な不安に苛まれることになる。
やっぱり、HCUはハイケアなんだなと当たり前のことを思う。
