【動機・概要】

 これまでに作ってきた真空管アンプをベースに、色々と回路変更して遊んでいます。新たなシャーシ加工がいらないので、思い立ったらすぐ半田ごてが握れますニヤリ

 

 さて、6AQ5があまり良く言われないのを時々見かけますびっくり。6V6を無理やり7ピンMT管に押し込んであるので、最大電圧Ep(max)が315 → 250Vに下がってるし、最大プレート損失Pd(max)の12W まで使ったら高熱のため寿命が縮むし、華奢でラジオの音声用に使うのがせいぜい、などなどニヤリ。そのためか(?)ヤフオク等でも 6AQ5やその高耐震管の6005は低価格ですね。50年近く前に初めて作ったアンプが6AQ5シングルで、1970-80年代にレコードやFM放送をずっと聴いていたボクとしては、6AQ5の低評価がちょっとかわいそうに思ったりもしてます爆  笑

 「ミニワッター文化」を色々と見せてもらって、また自作の経験も踏まえて、普通の家庭の部屋で使うんだったら最低500mW出力があれば実用になることを知りました。じゃぁいっそのこと、”華奢で安価”な 6AQ5をう~~んと軽く使ってミニワッター(→ 1W級なのでモノワッター?)にしたらどんな感じになるのか、興味がわきます。

 そこで 以前に作ったAMP-1DXX改(NPO法人 ラジオ少年、2020年10月作製、6AQ5(T)シングル)をベースに、出力トランスを ミニワッターで評判の良い T-1200(東栄)に乗せ換えます。T-1200の許容DC電流 25mAの範囲内で、プレート特性の直線性や対称性の良さそうなところを探し、あとはB電圧やバイアスを調整することで、6AQ5(T) / 6005(T)シングル・モノワッターができますニヤリ

 

【終段回路】

 6AQ5を三極管接続(三結)、Ip 25mAで作動させることを条件に、Ip-Ep特性に負荷線を引いてあれこれ考えてみました。Ep175V、Eg -10Vで、Ip 25mAとなります。この動作条件だとプレート損失(Pd)は僅か4.4Wですびっくり。ここで直線性/対称性が良いことを期待して負荷 7kΩとし、A2級を想定して Eg -30V ~ +10Vで励振することにします。出力は1.1~1.2W程度(トランス損失を考慮しない場合)が得られそうです。実用的には十分なパワーと思われます。また、この範囲だと、全体的な直線性/対称性はそれほど悪くないように見えますグラサン

 

 

 ここでEgの振幅を40Vppとしているのは、励振用のオペアンプの最大出力電圧の制限です。本来なら50~60Vppは欲しいところですが、汎用オペアンプでそのような高出力電圧を得られるものがありません。でも、6AQ5(T)の直線性/対称性の良さそうなところを切り取って使うというのなら、目一杯使うのでは無く 40Vpp(Eg -30~+10V)で良いのかもしれません。

 

 実測値ではありません。規格表(GE)から読み取ったグラサン入出力特性です。直線性/対称性はそこそこ良いように思えます。

 

 A2級を想定したカソードのパスコンの入れ方は、いまだに自信がありません。一応、出力トランスのコールド端とカソードをバイパスするともに、カソード抵抗もバイパスしてます。後者は、A2級領域に入った時のバイアスの変動抑制(?)やG1-K間の入力インピーダンスが低くなることへの対策のつもりですが、これで良いのか確証は全くありません。まあそうは言いながらも、これまで6BQ5(T)シングル6AQ5(T)/6P1P(T)シングルで同様のことをして来て、普通に聞えてますので、それ以上深くは追及していませんニヤリ

 

 普通に鳴ってますが性能の保証はありませんニヤリ オペアンプドライブの参考文献はこちら

 

【励振回路】

 今回は出力電圧が大きく、比較的大電流もとれるNJM5532DDを使いました。ただし、バイポーラ入力でオフセット出力が大きくなりがちですので、反転入力側をDC的に浮かせてあります オフセット出力は数mVでした。数dBのNFBも含めて、AF入力1.4Vppで6AQ5のG1励振用に40Vppくらいが供給できるよう計算したつもりです。なお、NJM5532DDは、内部で位相補償がされているそうです。安価(80円@秋月)な割にネット上の評価も良いようです。

600Ω負荷でも 40Vpp出力が得られてます(NJM5532DD)

 

 普通はAF信号入力にVRを入れていますが、今のボクの使い方ではほとんどここで音量調整をしないので、遊びでNFBにVRを入れてゲイン調整としました。もちろん周波数特性やダンピングファクターも変化するはずですが、ま、それもまた楽しいってことでグラサン

 

【結 果】

 今は10畳ほどの部屋で能率86dBの小さなモニタースピーカーで聞いていますが、音量はフルパワーにできないくらい十分にあります。また歪感もなく、普通にベースもバスドラもハイハットも聞こえていますので、実用上問題は感じません(いつも通りのいい加減な評価ニヤリ。ただ出力期待値Po 1W程度(モノワッター)とはいえ、A2級領域を含めての話です。今回の設定でA1級領域と言えば、Eg -20V ~ 0VでPo 300mW程度でしょうから、さすがに大音量の時はA1級/A2級の境界をまたいで鳴っていると思います。カソード電流にグリッド電流が重畳することによるバイアスの”揺れ”*ってどんな感じなのか不安はありますが、特に音質の違和感は感じていません。

*)耳がさけるほどの正弦波を入れると確かに1Vほどバイアスが深まりますが、音楽だとよほど大きな音量でも 200-300mV深まる程度でした。少なくとも大音量時にはA2級領域まで入っていることは確認できたのかなと思います。カットオフまで10V以上の余裕があるので、AB級にまでずれ込むことはないです爆  笑・・・よね?

 

 さて、可変にしたゲイン/NFBはどうなるか、楽しみでした。少なくともVRでゲインは変化しています。オペアンプで良くやるゲイン調整と同じですね。NFB抵抗(VR)値の計算は合っているかちょっと心配でしたけど、数十kΩオーダーでちょうど良かったみたいですニコニコ

 NFB量の変化は、F特性やダンピングファクターにも影響するといろんなところに書かれています。劇的な変化を期待していましたが、VRを100kΩ~10kΩ程度の範囲でいじっても、”個人的”には音質の差は感じませんでしたえー。VRを0にしてしまうとちょっと音の雰囲気が違うように思いますが、これは他に原因がありそうなので、今回はこれ以上のコメントは止めておきます。

 

 6AQ5を”優しく使う”という目的で、常用域でA1級/A2級の境界をまたぐ使い方になってしまいましたが、違和感はありませんでした (グリッド電流を流すのが 優しいのかどうかと言うことはさておいてニヤリ。結果、6AQ5(T) / 6005(T)とT-1200の組み合わせのA2級 モノワッターもありかなとの結論になりました。Eg > 0V域でG1(CG)に十分な電流を供給する能力があるオペアンプを使って直接ドライブしているからでしょうね。これまで試してきた小型管球のA2級動作では、RL 1kΩに耐えられるオペアンプであれば、大体大丈夫そうな気がします。

 

→ 追記事あります