今さら BCL/SWLをしたい訳ではないのですが、今度はDSPラジオで短波を聞くとどんな感じなのかと言う興味で、入手しやすいDSPラジオキットを購入してみました。Elekit の TK-739 です。これはAM/FMラジオのキットですが、心臓部の Si4825(Silicon Labs) と言うDSPラジオICは、AMの受信周波数を中波だけでなく短波にも設定できます。これを短波受信実験に流用することにしました。バンド設定方法は以前に使った AKC6952 と同様で、電圧制御方式です。

 

 Si4825のバンド設定表(AN738)に従い、短波放送局の多そうな 6 ~ 18MHZにある 11バンドを選びました。それぞれ数百kHzのバンド幅となっています(narrow)。ラダー抵抗(アレイ)とロータリースイッチを使えばよいのでしょうが、今回は”お試し”だけですので、 VR B 100kΩで短波バンド選択をすることにしました(上図:SW BAND、下図:SW band selector)。11バンド程度ですと、VRでも意外とはっきり選択できるものです。

 短波のフロントエンドには、パッシブ型のプリセレクターのような感じの同調回路を付けました(AMZコイル 14MHz + ポリバリコン 260pF)。まあ気休めですが、何とか 6 ~ 18MHZをカバーできています。

 

 

 どうせならと言うことで FM(76~108MHz)バンドも選べるようにしました。チューニングVR(50kΩ)に30kΩを直列で入れて、76~95MHzが受かるようにしてあります(バンド・スプレッド)。短波受信の時は30kΩをシャントして、バンド全体をチューニングします。FMのフロントエンドには、2SK241Yを使ったプリアンプも付けました。

 お試しだけですので、ケースは100均の食品用プラスティック容器です。スピーカーには手持ちだったフォスターのP1000Kを使いました。これはちょっと贅沢です。

 さて、ここでトラブル発生!ガーン AF回路が不安定で、フェージングのようなゆっくりした周期で発振しているようです。TK-739のAFアンプにはTA7368が使われています。オリジナル回路のままだと問題ないのでしょうが、あちこち立体配線を引き回してますので、それが発振の原因と思われます。色々いじってみたのですが、なかなか安定しません。結局AFアンプを、手持ちのNJM2073D(BTL)に組み替え、やっと安定しました。キットの流用なのでもっと簡単に行くと思っていましたが、大きな誤算でした。

追記(2022.08.30):TA7368は Vcc = 3Vで使うと発振気味だが、Vcc = 5Vにすると安定するとのWEB記述を発見。確認実験はしていませんが、重要な情報かも。

 

 短波放送受信は結構高感度です。アンテナはFM用折り返しダイポールしかないので、それに繋ぎましたが、多くの局が強力に入感します。中国語、韓国/朝鮮語、ロシア語、英語、日本語など、賑やかです。プリセレクターのバリコンを回すと、バックグランドノイズが「シュワー」っと増えてくる感覚は、なかなか懐かしいものです。

 コイルパックの塊のようだった高1中2スーパーとか、ダブルスーパーの方が良いのだとか、あれは遠~~い昔の話なんですね。もちろんバリコン・チューニング(VFO)の滑らかなアナログ感覚とか、ノイズに埋もれた微かな信号を拾い上げるとかは、DSPラジオでは再現できそうにありませんが、それでもDSPラジオ 恐るべしです。

 

 ”おまけ”で付けたFMですが、これは今回の Si4825よりも、先に試した AKC6951/6952の方が好みです。まず感度は、AKCの方が少し良いようです。さらに Si4825のチューニングの”選択性”が、AKC6952よりも甘い(ブロードな)印象です。Si4825で強力な局を受信すると、チューニング・ノブの広い範囲で復調してしまいます。ボクの住んでる北摂では強弱十数局の入感があるので、スパッとしたシャープな選択性でないと使いにくいです。

 

 ここ一ヶ月くらい DSPラジオに興味を持ち、ソフトウエア無線(DSPラジオをパソコンで制御する SDR)も含め一通り体験しました。 どれも 1,000~3,000円程度の出費で体験できるのがすごいことです。ネット情報によると、たぶん2,000年以降でこう言う状況になっていたのでしょうね。今回、コロナ禍によるテレワークで「BGMのFMを聞きたい!」と思わなければ、永遠に「浦島太郎」状態のままだったでしょう。

ソフト無線SDRのフリーソフトによるFM放送受信時のスペアナ

 

 無線関係では FM放送がきれいに聞こえればそれで十分なので、これ以上のめり込むことはないと思いますが、手ごろな価格でいろんなことが勉強できてとても有意義な「玉手箱」ならぬ一ヶ月でした。