第3話
「コソッと渡す」をモットーにお買い物を終えた部下が帰ってきた。
「ありがとうな」言葉に力はなかった。
俺はコソッと茶色の紙袋を受け取り4階のトイレへと向かった。コソッと。
初体験だった。
ドロっとした軟膏を自らの肛門に流し込む。なにか悪い遊びを覚えようとしているかのような気持ちにさいなまれた。
辛かった。なぜか辛かった。
「痔に~はボラギノ~ル♪」でお馴染みの脱力系CMの向こう側にはたくさんの羞恥心と痛みを抱えている人達がいるんだと悟った。俺は今、向こう側にいる。
他の社員がフロアで営業活動を行っている中、俺はトイレで1人注入していた。
情けない感情が込み上げてくると同時に母の優しい顔が浮かんできた。
これも仕事のためだ。チューブを振り絞りフロアに戻った俺の表情はまるで万引き犯のように怪しかったという。
これを続ければ治るんだ。「継続は力なり」をモットーに生きてきた俺は自分自身を奮い立たせた。そう、こっち側に戻るために。
しかしこの時の俺は、本当の痔の怖さを知る由もなかった。
次回に続く。