大阪市西区のマンションで平成22年7月、幼い姉弟2人の遺体が見つかった虐待死事件で、殺人容疑で再逮捕された母親の下村早苗容疑者(23)=23年1月31日まで鑑定留置=に対する精神鑑定が、主に「多重人格」かどうかを調べる目的で実施されていることが2日、関係者への取材で分かった。国内の症例は少なく、幼少期の生い立ちが影響した可能性もあるため、大阪府警と大阪地検は慎重に周辺捜査を進めている。
【写真】幼児2人の遺体が遺棄されたマンション
下村容疑者は22年12月、産経新聞記者の接見取材に、鑑定医から多重人格かどうかを調べると告げられたことを明らかにし、「(事件は)覚えているが、自分がやったこととは思えない」と話した。
府警と地検は、仮に多重人格と診断されても責任能力に問題はなく、刑事責任を問えるとみているが、裁判員裁判での立証をにらんだ綿密な捜査が必要になりそうだ。
複数の関係者によると、今回の精神鑑定で対象になっているのは「解離性同一性障害」と呼ばれる多重人格の有無。後天性とされ、耐えがたいストレスから逃れるために元の人格とかけ離れた人格が出てくる精神障害という。
本人は無意識のうちに人格を変えるため、長時間接している周囲の人でないと発見しづらいという。虐待や性犯罪などの被害者に散見されると指摘する専門家もいる。
府警の調べに対し下村容疑者は「私が家に帰らず、食事や飲み物を与えなかったので死んだ」「後悔している。2人は今も私を恨んでいると思う」と供述。一方で大阪・ミナミの繁華街で知り合った男性らと遊び歩いたり、三重県四日市市で男友達らを食事に誘ったりしていたとされる。
府警は22年7月30日に死体遺棄容疑で、8月10日に殺人容疑で下村容疑者を逮捕。地検は8月25日、大阪地裁に約3カ月間の鑑定留置を請求、地裁は認める決定をしたが、その後、鑑定留置期間を23年1月31日まで延長した。再延長がなければ、地検は精神鑑定の結果を踏まえ、勾留(こうりゅう)期限の2月上旬に起訴するかどうか判断するとみられる。