バランスって大事だと思う。
どんなにいいことでもそればかりやっていればいつか破綻する。
先日のゴンザレスモモスケについて書いたことが意外なほど評判が良かった。
となると今度はバランスを取るために評判のよろしくないであろうことを書こうと思う。
森見登見彦という作家がおられる。
日本ファンタジーノベル大賞を受賞した『太陽の塔/ピレネーの城』でデビューした。
ワタクシはこの作家をデビュー時から注目してきた。
京都大学に在学中に書いたというデビュー作の内容は、
恋人に振られた学生がなぜ自分を振ったのかという疑問から元カノを観察するといった、それってストーカーじゃ…という行為から妄想を増幅して暴走する、
私にとってかなり共感できる小説だった。
それだけでなく小説中にでてくるとある現象。
その描写のリアルさに「こやつできると」うならせたのである。
さてその現象とは。
ワタクシがいたペット屋はごく普通の総合ペットショップであった。
ただしもとは鳥が中心であったようで、
会社名も、とある鳥から来た名前であった。
ただしワタクシが店員であった当時は鳥というのはあまり人気あるペットではなかった。
イヌネコは別にして、熱帯魚はアクアリウムブーム。
爬虫類もレプタイルブームがあった。
ウサギやハムスターもまだ小動物ブームは来てなかったが、
その前兆はあったし、もともと女の子には人気があった。
私が足を洗ってからインコ、オウムをイヌネコの様に飼うコンパニオンバードという流行がきたが、
その頃はまだセキセイ、ボタン、オカメぐらいで一般的ではなく、
急激な自然破壊とサイテスの強化で入荷自体が減っていく次第であった。
というわけで鳥の売り上げはあまり芳しいものではなかったが、
会社の成り立ちから売り上げの割には大き目の規模で鳥を扱っていた。
ただし店員の立場だと鳥はやっかいである。
なぜならかなり汚すから。
餌はまき散らすし、水浴びはする。
羽毛は抜けて舞うし、相方の頭を真っ白にするフケが出る鳥もいる。
というわけで毎日の掃除が大変。
したがってペット屋店員の一日は鳥かごの清掃から始まるのであった。
まず餌を飼える。
続いて底替えと呼ぶカゴの掃除。
場所の関係でいくつかのカゴを連結している業務用のを使用。
そこに新聞紙を引く受け皿も当然でかい。
新聞紙の利用数も半端じゃく多いので、本社が入手した新聞紙を定期的に送ってもらう。
多かったのが○教新聞。
私が配達少年のときに配りたかった憧れの新聞である。
なぜなら給料が段違いに良かった。
でも当時は学会員でないとその仕事に就けない。
うちのおかんはいろんな新興宗教をはしごしていたが、
なぜか○価学界だけは無縁だったので、
「入信しないかな~」と思ってました。
その○教新聞、まずいのは名誉会長さんの顔写真がかなりの頻度で載る。
それを鳥かごのそこに使うもんだから写真にあれが直撃なんてことも…
おとなりのゲームセンターの店員さん、何度か釣りにも行く仲良しだったが、
家に行くと○○革命とかいう本を貸してくれる熱心な学会員さん。
その人にとがめられないかヒヤヒヤしておりました。
そして最後に水の交換。
これを毎日開店前にやっていて大忙しであった。
この毎日の掃除以外にも定期的にカゴ自体も洗浄する。
鳥をだして金網についた糞をこそぎ落としたり、
パネル類を拭き掃除したり。
このパネルの拭き掃除を冬場行ったときに、
しばしば悲劇に見舞われる。
この長いカゴを何段かのアングルに乗せているので、
下から順に拭いていく。
上は届かないので脚立を使用。
このアングルの一番上には大型のカゴを置いて、
クロカミインコ、アオボウシ、ゴシキセイガイなどの中型インコを飼っていた。
ゴンザレスはさすがにその図体を収容するカゴは置けず、ウサギやハムスターのあたりにいた。
この中型インコのをどけて上のパネルを拭くのだが、
「あれ?」となることがある。
パネルは白いのだが、カゴの下に茶色っぽいシート状のものが。
「こんなもん敷いていたっけ?」
この湧いた疑問はすぐ消滅する。
ぞわ、ぞわ、ぞわわわ~
茶色いシートが一斉に動き出すのだ。
正体はチャバネゴキブリ。
鳥のアングルは照明用の蛍光灯が点いている。
そのために直下に蛍光がある天井パネルとインコかごの間は狭く、暖かいというゴキブリパラダイスなのだ。
人呼んでゴキブリ絨毯。
いやいや最初に見た時はホント驚いた、あやうく脚立から落ちるところあった。
他所の店では、入社したての女の子がこれに遭遇。
泣き出して会社をやめちゃったというすさまじい破壊力を誇るのである。
じつはこれは京都大学でも存在するらしい。
森見氏の太陽の塔ではゴキブリキューブという名で登場。
むむぬ、なんか格好いいネーミング。
作中では主人公がゴキブリキューブを発見。
それを捕獲して、元カノにモーションかけている恋敵?に元カノからのプレゼントに偽装して送るという、
なんとも危険で卑劣なテロ行為に使用される。
その主人公に元カノからプレゼントが届き、
狂喜乱舞してあけると中身はゴキブリキューブで下宿先がゴキだらけになるオチ。
そこで主人公は大量破壊兵器バルサンの使用でゴキを虐殺するのだが、
逃げ惑うゴキが食い残しのカップめんに避難するも力尽きる。
そのカップめん内のゴキが、スープの油で翅をさらにつやつやさせるといった一連のリアルな描写に、
「こやつできる」と思い、彼の著作を読み続けた。
次作の「四畳半神話体系」でもその期待を裏切らなかったが、
「命短し歩けよ乙女」あたりから女性の方たちから支持されるようになった…
それは予想外であった。
さてそのゴキブリキューブ、実は自分の家でも発生させたことがある。
そのころ家で熱帯魚やら爬虫類を飼育していた。
使わない押入れをプチ温室に改造しては生き物を収容。
そんな生き物の中にボールパイソンという小型のニシキヘビがいた。
そのヘビは水槽で飼っていたのだが、その水槽はそれまで机の上で熱帯魚の飼育に使用していたモノ。
水槽には裏側が見えないようにバックスクリーンという黒や青のシートを貼る。
この水槽もバックスクリーンが貼ったままであった。
またヘビという生き物は照明が必要ない。
カメやトカゲは日光浴が必要栄養素の形成に不可欠だが、
生き物を丸呑みするヘビは必要ない。
ということで直接照明を点けずに、温室の間接照明のみのやや薄暗い環境で飼育していた。
そんなある日、模様替えで水槽を移動。
その時ボール君の水槽に光が差し込み、それによってワタクシは発見した。
ゴキブリキューブを。
バックスクリーンと水槽の隙間にコロニーを形成したチャバネ君たち。
さて困った。
下手に手を出して拡散させたらおかんに殺されてしまう。
かといって大量破壊兵器の使用は魚や餌コオロギのことを考えると無理。
う~んどうしよう。
爆弾処理に赴いたらとんでもないトラップに遭遇した特殊部隊の隊長の心境であった。
結局、
①バックスクリーンの端をしっかり張る。
②熱湯の入った盥を用意、水槽の下に置く。
③バックスクリーンの上部、それと下部の盥の直上部分だけ隙間を開ける。
そして
上から針金でエイエイ突いて、チャバネ君を盥に叩き落とす。
これをおかんが出かけたわずかな隙に作戦実行。
まあなんとか家庭の平和は守られました。
虐殺したチャバネ君許せ。
あの世とやらはおかんとチャバネ君が待っているんでしょうか?
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