2016年 イ・ジュニク監督

カン・ハヌル主演


あらすじ

28歳の若さで福岡で獄死した詩人ユン・ドンジュ。

満州のキリスト教家庭に生まれ、ヨンヒ専門文科で詩作活動をする。従兄のソン・モンギュと共に25歳の時渡日し、立教大英文科へ入学。同志社大学へ移り、帰国しようとする時に治安維持法嫌疑で逮捕される。


登場人物


ユン・ドンジュ(カン・ハヌル)

すごく大人しくて、心優しいナイーブな人でした。

そんな青年が何故命を奪われなければならなかったのか?当時の無法な限りの軍国日本の在り方が、これからという若い才能を無惨に潰していきます。


ソン・モンギュ(パク・ジョンミン)

ドンジュの従兄。同じ家で育った。文学青年だったけど民族独立運動にのめり込んでいく。快活で弁が立つイキイキとしてキャラで、パク・ジョンミン出てくるとモノクロ映画がカラーになる感じっ。


高松孝治教授(キム・ウジン)

立教大学の教授。ドンジュを目にかけ、詩を書かないか?と目をかける。ハングルを使う事自体危険なこの時代において、高松教授のような存在が日本にもいた事がこの映画の希望。立教大の奨学金の名前にもなっているのですね。


深田久美(チェ・ヒソ)

高松教授が世話する知人の娘。とても品のある女性で美しかったわ〜。

日本語のドンジュの詩を英語に翻訳し、そこからハングルへと出版しよう、と提案する。


刑事(キム・イヌ)

ドンジュを尋問する刑事。安定の日本人役キム・イヌさん。



私は詩人茨木のり子の「ハングルへの旅」で詩人ユン・ドンジュを知りました。

この本は、茨木のり子さんが50歳になってから韓国語を習い始めたことの詩人として、学者者として愉快に綴るエッセイ。

そこで、ユン・ドンジュの実弟ユン・イルジュと会った話も。イルジュさんは建築家で成均館大の教授だそうです。

イルジュさんは

「父がどんな思いで福岡から兄の骨を抱いて釜山、それから汽車にゆられて北間島(旧満州)の家まで戻っていったのかと…」淡々と言われたそうです。



韓ドラを見ていると、韓国人の文学への造詣の深さに驚くばかり。「揺れながら咲く花」「ブラックドッグ」「ロマンスは別冊付録」「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」ドラマの中に文学や詩が出てきて、胸を打たれることが度々あります。

日本で生きてきて、サラッと「はーい、詩を詠みます」みたいな場面に出会したことがないので、ドキッとしますね。同時にピュアさに憧れる。

民族の誇りが奪われていた時代があって、それを必死に守って繋いできた人たちがいる。

「マルモイ」「金子文子と朴烈」より、より重苦しさはあるこの映画。見る事は辛い、でも、見なければならないと思う作品でした。


韓国人ならみんな知っている詩人ユン・ドンジュ。

その詩を、劇中でカン・ハヌルが詠んでくれます。

辛い内容の映画ですが、素敵な詩です。

「星をかぞえる夜」

季節が過ぎてゆく空には

秋がいっぱいみなぎっています

私は何の懸念もなく

秋の奥の 星々を すべて数えられそうです

胸の中にひとつふたつ

刻まれる星を

今のこらずかぞえきれずにいるのは

たやすく朝が来るからでありますし

明日の夜がまだ

残っているためでもありますし

いまなお私の青春が

尽きてはいないからであります