平日の午後、時計が2時半を回ると慌てて療養型病院に入院しているロボの処に、ほぼ、毎日‟面会”に行く。

 

 玄関に入るとまずは手をアルコールで消毒。次に体温計測機に顔を寄せて検温する。時々いくら待っても計測が終わらないのは‟どういうことか!俺の顔は認識できないのか!人間の顔でないのか!”と怒って素通りする。

 エレベーターを降り面会者記録用紙に記名し、よたよたと病室へ向かう。入り口のネームプレートのロボの名の上には「発熱中」の赤文字の札が張り付けてある。チラッと"3週間目か”と思いながら病室に入る。

 

 お隣の見舞いの人に目礼してロボのベットサイドに行く。お隣は「美佐江(仮名)よ、今日は曇り、ここは涼しくていいわね。外は暑くて・・・」と10分の面会時間一杯語り掛け「また来るね」と言って毎日、帰って行く。

 

 私はコミ症なので終始、無言である。替わりに軽擦をする。まずは左の背中半分を30回。反対に回って右半分を30回。そして胸と腹を擦る。腹にはじっと手を当て暫く様子を窺う。右手の甲をミトンの上から擦った後、腕全体を軽擦。右足の点滴ラインに触らないようにしながら、膝から下と大腿に分けて擦る。左側にまわり排尿チューブに気を付けながら同じように擦る。そして左手と腕を擦ると、もう一度胸と腹を擦り手を置く。そして最後に髪を梳く様に頭部を指で擦る。

 

 「また来るね」と声を掛けると、殆ど聞き取れない声で「ありがとう」と囁くのをアイコンタクトで確認して部屋を出る。ここまで15分で収まるようになった。

 

 そう言えば今日は胸元にアイスノンが巻かれ、"発熱中”の札が取れていたな。