僕らの序章






キーンコーンカーンコーン──



チャイムが鳴ると共に日直が号令をかけるのがこの有名私立養成学校の校則である。
過去に国が誇る偉人達のほとんどが養成学校に入学していた、という伝説があるほど在学生・卒業生の能力がハイレベルであった。
知力はもちろん、運動能力や技術力が長けている者のみ入学出来る為、養成学校入学というだけでエリートコースが確定する。
だからこそ校則は厳しく、教師はさらに厳しい。


だが、養成学校のほんの一部、落ちこぼれ学級というものが存在する。

そのクラスでは『校則』なんてものでは拘束出来ないほど様々な生徒が集められていた。


「席につきたまえ」
眼鏡をかけたどこからどう見ても『教師』という容姿の先生は静かに言葉を発する。
いつも騒がしいクラスだが今日はいつもよりさらにざわめいている。
「今日からこのクラスに編入することになったドラえもん君だ。仲良くするように」
簡単に紹介すると空いている席に座るよう指示しホームルームを始める。
ドラえもんは少し緊張しながら席に着く。
教室を見渡すと誰一人先生の話を聞いていなかった。
(僕、このクラスでやっていけるかなぁ・・・)
はぁ、とため息をつき下を向く。


何故このクラスに編入させられたか?
答えは簡単。


授業の妨害。


先祖代々最高の『執事』として名を馳せてきた一族に生まれ、将来は立派な執事になる為に死ぬほど勉強し、推薦無しの自力合格で入学。
しかし無理をしたのがいけなかったのか、授業についていけず、更に何をやっても失敗し授業を妨害、入学半年目で落ちこぼれ学級に。
涙が出てくる。


いつの間にかホームルームが終わり先生がいなくなっていた。
とりあえず次の授業の準備をしようと時間割表を探す。
(・・・このクラス、時間割表がない?)
どのクラスにも必ず時間割表が教室のどこかに張り出されているはず。
(なんでないの!?)
ドラえもんの顔は青ざめ、嫌な汗が背中を伝う。
授業が始まる五分前には準備しなければ評価が下がる。
落第は確実。
それくらいこの学校は厳しい。
(どうしよう・・・)

「心配いりませんよ」

今にも泣き出しそうなドラえもんに、静かに声を掛ける。
「え・・・?」
「私たちのクラスに時間割は存在しませんから」
窓際一番後ろの席、つまりドラえもんの隣の席から冷静過ぎな言葉が返ってきた。
「授業は先生が来るまで分からないので。おそらく、数学だとは思いますけど」
同じクラスでも年齢はバラバラの為、いくつか分からないが自分と同い年くらいだろう生徒に話し掛けられドラえもんは少し安心する。
「そうなの?良かったぁ~」
数学の教科書を出そうとカバンを探るが、入っていない。
(あっ・・・忘れてきたっ!)
前の教室に置きっぱなしだったのを思い出したが、すでにチャイムは鳴っている。
「ちなみに教科書は必要ないですから」
「え!?」
「このクラスの授業は小学校で習うようなレベルですから。足し算が出来れば上出来ですよ」
「そうなんだ・・・」
ハイレベルの授業は嫌だがそこまでレベルが低いと悲しくなってくる。
「もし教科書を使いたいなら私のを貸しますが?」
「え、本当?ありがとう!!」
教科書を受け取ろうと手を伸ばした時、初めて目が合った。
「そうだ、名前聞いてなかったね!君の名・・・」
名前は?と言い終わる前に彼は立ち上がる。
「授業が終わったら机の中に入れておいてください」
そう言い残すと教室を出ていき、入れ替わりに教師が入ってきた。
疑問に思うことがありすぎてドラえもんはハァとため息をつく。


ドラえもんが編入してきたクラスで初めて話した彼とは次の日のホームルームまで会うことはなかった。
そして彼───王ドラの名前を知ったのは編入三日後、初めて出来た友達から教えてもらった時だった。



ここから僕らの物語が始まった───。




NexT...LogIcAl DevelopMenT 《Due》









ドラズ受け別RANK
**ドラズ溺愛RANK**
★擬人化ドラランク★
◆擬人化ランキング◆


■ドラえもんズBL長編小説
・エル×王ドラ
・擬人化/シリアス/オリキャラ


僕らのシリーズ学生時代編。

視点は各話によって変わります。

学生時代編では友情メインなのでエロはありません・・・多分。



不快な思いをしたら読むのを即効止めることをお勧めします。


☆目次☆

■――僕らの起承転結。
      ドラえもんが特別クラスに編入。
      でもそこは今までいたクラスとは違い•••。
      ここから僕らの友情は始まった。

序 僕らの序章
  『このクラスの授業は小学校で習うようなレベルですから』
起 僕らの起因
  『口説いた女は数知れず、男も羨むこの美貌、誰が呼んだか眠りの王子、
   エル・マタドーラとはこの俺様のことさぁ』
承 僕らの承認
  『ごめん、王ドラさんがヒドい人にしか聞こえないんだけど•••』
転 僕らの転機
  『もう••••••火事場の馬鹿力ァァァ!!!』
結 僕らの結実
  『助かったな、ドラえもん。直接触ってたら全身かぶれてたぜ?』
余 僕らの余韻
  『空って青いなぁ•••』








ドラズ受け別RANK
**ドラズ溺愛RANK**
★擬人化ドラランク★
◆擬人化ランキング◆


プロローグはいつも突然で、

それがエピローグだとは気付かない。



古泉一樹の絶望 Ⅰ




一万五千回以上繰り返した夏も、波瀾万丈だった秋も、不可解な冬も、今は昔の出来事だ。
いや、内容はとんでもなく濃いモノであり、一つの出来事で長編映画が撮れるくらいなのだが、そんな回想をしていたら語り終わるまでに俺は還暦をむかえてしまう。
結局『いつも通り、ハルヒに振り回された日々』としか簡単に説明が出来ない。
残念な事に、俺はハルヒの奇行に対して少々耐性がついたようだ。
冬休みと呼ばれる長期休暇も終わり、徐々に渡される学期末テストの答案用紙に怯えながら、過ごす二月下旬。
もう一つ重大なイベントとして男子と女子、もっぱら男子だが、バレンタインデーというお菓子メーカーの策略と分かっていても胸を弾ませる日があった。
バレンタインデーとは意中の女の子の好きな人が分かる日だ、と言ったのは誰だったか•••。
なんにせよ、特別に面白い事はなく、まあSOS団からチョコレートを配給して貰った為、残念な男子にならずに済んだ。
朝比奈さんから頂いたチョコは神棚にお供えしておきたいくらいだった。
ただ、古泉が紙袋いっぱいにチョコを詰め込んだ物を持って部室に顔を出し、下校時に下駄箱から数個ほどプレゼントらしき物が出てきた時は、この世の不公平さを嘆いてしまったが。
まあ、そんなイベントも次の日になればもう誰もその話題に触れる者はいない。
あれだけチョコチョコと騒がしかった谷口もテスト期間を挟んで数日経つとケロリと忘れている。
俺も今日渡された物理の結果を早く忘れたい。
そんな事を考えながら部室のドアを開ける。
「遅いわよ、キョン!何やってるのよ!!」
相変わらずSOS団の団長様はお元気でいらっしゃる。
「日直だったんだからしょうがないだろ」
「そんなものは気合いでなんとかしなさい」
こんな理論もクソもない事を当たり前のように言う奴が何故物理の点数がいいのか俺には理解出来ん。
「はい、お茶です。淹れたばかりなので火傷に気を付けて下さいね」
朝比奈さん、その言葉で俺の心は大火傷ですよ。
今日も可愛いメイド服を身にまとい天使のような笑顔で微笑みかけてくれている。
それだけで嫌な事は全てリセットされる気がする。
俺は定位置となりつつあるイスに座り、窓際で分厚い本を読んでいる長門を視界に入れる。
こちらも相変わらずのようだ。
古泉はまだ来てないのか?
ここ最近、古泉は団員の中で部室に来るのが一番遅い。
特進クラスに在籍している所為なのか、それとも別の理由があるのか分からないが、以前のように俺が部室のドアを開けて古泉が一人でボードゲームをしているという姿を見なくなって久しい。
「遅くなりました」
俺が来てから三十分後に古泉は部室へ入ってきた。
いつも通りの笑顔だが、少し顔色が悪い気がした。
「大丈夫よ、今日はそんなに忙しくないから」
俺の時と随分反応が違う。
すいません、と謝りながら古泉は俺の正面へと移動する。
「今日は何をしますか?」
「なんでもいい」
「そうですか、それではチェスなんてどうでしょう?」
ボードゲーム置き場からチェス一式を取り出し、セッティングを始める。
開始十五分、ここから古泉が形勢逆転するのはほぼ無理だ。
チェスなんてオシャレなゲームは以前コイツからルールを教えてもらったが、その日のうちに対古泉の勝率は7割となった。
チェスに限らず、オセロも将棋もカードゲームもわざと負けてるんじゃないかと思うくらい古泉は弱い。
五分五分の勝負が出来るのはババ抜きくらいだ。
ツメが甘いというか、先読みが下手というか。
頭が良いくせに、変なヤツだ。
「チェックメイト」
「・・・もう一勝負しませんか?」
「何度でも受けるさ」
俺としては楽しい。
長門と勝負した時、完膚なきまで叩きのめされてかなりショックだった。
分かっていても、負けると悔しいものだ。
それに比べ、古泉はいい感じに負けるものだからちょっとした優越感に浸れる。
ちょっとくらい優越感に浸ってもバチは当たらんだろう。
「次は負けませんよ」
ははは、その四手目が失策だと気付いてから言うんだな。
今日はハルヒの突拍子も無い行動も無く、平穏の時間が過ぎていく。
五戦目を始めてすぐ、古泉の手が止まった。
「古泉?」
声を掛けると、ビクリと震えすぐにいつも通りヘラっと笑う。
「すいません、ボーッとしてました」
「お前、大丈夫か?」
顔色もさっきより悪くなっている。
「ええ、大丈夫ですよ。気にしないで下さい」
コトっと古泉は駒を置いた。
「そう、か」
また、だ。
いつからか覚えていないが、古泉は俺を拒絶し続けている。
一定のラインを超えさせない為に。
それが無意識になのか、意図的になのかは分からない。
意識しなければ気付かないくらいの、意識しなければ気付かない振り出来るくらいの、拒絶で。
だから俺は気付かない振りをしている。
あくまで、気付かないように装う。
なるべく古泉を見ないように、俺はゲームを続けた。
しばらくすると古泉はスッと立ち上がった。
「すいません、お手洗いに行ってきます」
「お、おう」
足早に部室を出て行く。
戻って来るまでの間、特にすることもなくただチェス板を見ていた。
あと十手もしないうちにチェックメイト出来るだろう。
この勝負も俺の勝ちだな。
ナイトを指で弄りながら古泉を待っているが、中々戻って来ない。
腹でも下しているのか?
もう十五分は経っている。
俺はガタリと立ち上がり、部室のドアに手を掛ける。
「キョン、どこ行くの?」
「トイレ」
簡潔に答え、そのまま出て行く。
部室から少し離れた場所にあるトイレに入ると、一番奥の個室トイレからゲホゲホと咳き込んでいる声が聞こえた。
嫌な予感が頭を掠め、恐る恐る奥に進むと一番奥の個室トイレのドアは開きっぱなしだった。
そこを覗き込むと、洋式トイレに上半身を預けるようにして倒れている古泉の姿があった。
「おい、古泉っ!?」
「・・・っ・・・」
苦痛に歪んだ古泉の顔が白い便器に埋もれている。
便器の中には何度か吐いた跡として吐瀉物が溜まっていた。
「・・・うっ・・・え・・・・・・」
まだ吐き足りないのか苦しそうに口を開け、吐き出そうと下を向くが、吐き出されるのは胃液のようなものだった。
俺はどうすれば良いのかすぐに判断出来ず、とりあえず古泉の背中を擦るという事しか思い浮かばなかった。
「はぁ・・・あ・・・」
古泉は胸元を押さえ、何度も何度も吐き続けているが一向に治まる気配がない。
これはただ事じゃない。
こういう場合はどうすれば良いんだ?
救急車を呼ぶのか?
それとも保健室に連れて行った方が良いのか?
下手に動かすよりも先生を呼びに行った方が良いのか?
考えようとして結局頭の中は真っ白な状態で、苦しんでいる古泉をただただ見ていることしか出来ない。
「ちょっと、キョン!そこに居るんでしょ!?」
トイレの入口から甲高い声が聞こえてきた。
ハルヒ、か・・・?
「古泉くんもそこに居るの?二人してどんだけ長い時間」
「ハ、ハルヒ!」
ハルヒの言葉を全部聞き終わる前に俺は声を裏返しながら叫んだ。
「古泉が、古泉の様子が変なんだ!」
「キョン?」
「古泉が吐いてて、胃液しか出なくて、でも苦しんでて」
俺の言葉は文として成り立っているのか自分でも分からないほど混乱していた。
それでも理解してくれたのか、ここが男子トイレという躊躇いもなくハルヒはトイレに入ってくる。
「古泉くん!?」
古泉の状態を見て、俺に視線を移す。
「ちょっと、いつからこの状態なの!?」
「お、俺が来た時はもう・・・」
「来た時って・・・アンタがトイレに行ってもう十分以上経ってるのよ!?すぐ先生を呼ぶなり保健室に連れて行かなきゃダメでしょ!!」
そう言って、ハルヒはトイレを出て行こうとする。
「お、おい」
「今、先生連れてくるからそこで待ってて!」
ハルヒの足音が遠退いて行く。
「ぁ・・・」
古泉が再び下を向く。
「・・・は・・・ぅ」
古泉の身体が震え出す。
徐々に震えが大きくなり、触れている自分の手から震えが伝わってきた。
「古泉!」
「・・・っ・・・は・・・ぁ」
ガタガタと震えながら嘔吐を続ける古泉に対して何も出来ない自分が本当に小さく思えた。


その後、ハルヒが連れて来た保健医によって色々処置され、数分後到着した救急車に乗せられ病院へと運ばれて行った。
九組の担任教諭が付き添いとして救急車に乗り、俺達は保健医から古泉がどこの病院に運ばれたか聞き、SOS団全員で病院へと向かうこととなった。
古泉が運ばれた病院は以前俺が入院したことのある『機関』御用達の病院。
タクシーに乗り、病院に着く間重たい空気が流れている。
助手席に座った俺はバックミラーとサイドミラーで後部座席に座っている三人の様子を盗み見た。
ハルヒは腕を組み窓の外を睨みつけるように見つめ、朝比奈さんは目を真っ赤に腫らしながら俯いて、長門は無表情で前を向いていた。
俺はというと、窓に映った自分の顔が人に見せられないくらい情けない表情をしていて、他の団員に見えない助手席に座っていて良かったと少しほっとしていた。
病院までの数十分が異様に長いと感じながら俺は目を閉じた。



NexT...The Despair of Itsuki Koizumi 2nd









古泉愛してるぜ
×一樹Rank



初のキョン古MADを作成したにょ。

うーん、雑に編集したけど許してほしいにょ・・・。

今度はきちんと頑張ります!!






某ボーカロイドの曲です。

台詞部分は大分遊んでいます。

ちょっとはシリアス部分を入れてみた。

エンドレスエイト2のいっちゃんが帯につけるアレをリボンみたくするところをどうしても使いたかったのが本音っす。

めがっさ可愛いにょ!

この春も腐満載で逝きますにょ!!
終わらない夏が終わっても、

僕の中では

まだ、終われなかった。






エンドレスイトβ










何かおかしい。
そう気付き始めたのは、お盆を過ぎた夏の盛りの日のことだった。
そして、朝比奈みくるから電話を受け駅前に集合し、長門有希が八月十七日から三十一日を一万五千四百九十七回繰り返し、今回が一万五千四百九十八回目だと聞かされたのは何日前の事だったか・・・もう忘れてしまった。
僕は文芸部の部室でただ、時間の経過だけを見つめている。
つい数時間前までは彼の家にてSOS団総出で宿題を分担してやっていた。
分担と言っても、自分の課題を彼に写させるという作業の方が八割を占めていた気がする。
僕の字が汚いから書いてもらう事が出来ない、と理不尽な怒りをぶつけられた事も新しい記憶だ。
時計を見ると時刻は夜の十一時三十分をお知らせしている。
ここに来てもう三時間以上経っている。
「やっぱり、覚えていませんよね」
あの日彼が言った言葉も、今日が約束の日だという事も。
自分でも記憶があやふやなのだ。
ただ、身体の奥が熱い。
今の僕には無い思い出が断片的に甦る。
指を自分の唇を撫で、そのまま机に上半身を預けた。
カシャっと腕が何かに当たる。
そこには自分で持ってきた天体望遠鏡が入っている立方体の箱があった。
ボロボロの箱に入った古い天体望遠鏡。
あの場所から唯一持ち出した自分の物。
いつ使うのか分からなくて、でもあの時あの人が言ったから持ち出した物。
せっかく使うチャンスが来たのに。
箱から中身を取り出し、それを持って立ち上がる。
部室は電気を付けていない為、薄暗いが月と星の輝きで白い天体望遠鏡がよく映える。
「・・・・・・」
勢い良く振り上げた腕を更に勢い良く重力に則って下におろした。
ガシャンッと部室に響く音を立てて、持っていた天体望遠鏡が落ちた。
辛うじて原型を保っている部分に足を乗せ、体重を掛けるとその部分は粉々とまではいかないが、それでも壊れていく。
何も考えず、何も感じず、天体望遠鏡だったものを見つめた。
一万五千回以上の僕はこの日に同じ事をしたのだろうか?
しばらく考えて、僕はとある人物に電話をしてみた。
出ないなら出ないでもいい。
ただここに居る事が死ぬほど、辛い。
スリーコールで相手は電話に出た。
まるで、僕が電話を掛けてくる事を知っていたかのように。
「もしもし、長門さん、今少し大丈夫でしょうか?」
「・・・大丈夫」
「少々お尋ねしたい事があるのですが、この夏休みの中で天体観測をしたのは何回ありますか?」
「天体観測はプール同様過去一万五千四百九十八回必ず行っている。その内、涼宮ハルヒが八月十七日に提案したシークエンスは八千五百二十七回、突発的に提案したシークエンスが四千六百五十二回、あなたが提案したシークエンスが2二千三百十八回、そして彼が提案したシークエンスが一回」
突然の質問でも戸惑う事無く長門有希は坦々と答える。
なんというか、言い慣れた感じがする。
「彼が提案したシークエンスは一回目に該当する八月二十一日」
彼女が質問以上に答えてくれるのは珍しい。
「僕はあなたに何回同じ質問をしていますか?」
僕は情けないほど声が震えている。
「一万五千四百九十八回」
その回数はつまり、僕が一人でここに居た回数でもある。
「長門さん」
おそらくこれも一万五千四百九十八回目となる質問をする。
今日が終わったら明日は来ますか、と。
「・・・来る」
簡潔な答え。
「そう、ですか」
長門有希が言うのならばおそらく明日は来るのだろう。
長かった夏休みが終わって、明日が来る。
それは喜ばしいことなのに、僕は全く嬉しくない。
「お時間を取らせてしまい、申し訳ございませんでした」
もう、長門有希に同じ電話をすることはない。
電話を切ろうとした時、ボソリと何かを言った気がした。
「長門さん?」
「・・・彼はあなたの未来を変える」
一瞬、なんの事を言っているのか分からなかった。
未来を、変える?
ああ、あのことか、と理解する。
まさかTFEI端末の長門有希からそんな言葉を頂けるとは思わなかった。
「ありがとうございます」
心から感謝の気持ちを長門有希に伝え、今度こそ電話を切った。
「未来を変える、ですか・・・」
未来は変わらない方が、良い。
流れに委せてあるべき未来に向かうだけなのだ。
あと十数分で明日が来る。
最後の夏休みが終わる。
部室をそのままにして僕は屋上に向かった。
屋上に近づくほど足取りが重くなる。
その場所に向かっても誰も居ないと分かっているから。
それだったらこのまま帰ってしまいたい。
結果なんて見たくない。
それでも僕の足は屋上に続く階段を上っていく。
屋上の扉のドアノブに手を掛け、このドアを開けるかどうか僕は再び悩んだ。
このまま開けなければここに彼は居るかもしれないし、居ないかもしれない。
シュレーディンガーの猫のように。
いや、シュレーディンガーの猫を例にしてしまうとダメなのだ。
あの実験は成功していない。
僕はドアを開け、屋上の中央に足を進めた。
そして、ぐるりと見渡し空を見上げた。
ああ、星がとても綺麗だ。

『今日の夜、学校に来られるか?いや、何があっても来い!』

いっそ、あの言葉が僕の妄想で、ただの夢であればどれほど良かったのだろう。
僕は何度夏休みを繰り返してもこの場所に来ましたよ。
あとは、あなたが来るだけです。
腕時計を見ると残り一分で日付が変わる。
僕は仰向けになって静かに目を閉じた。
「十、九、八、七、六、五、四、三、二、一・・・ゼロ」
目を開けると視界には見慣れた自室の天井ではなく、雲一つない夜空が映った。
明日が、来た。
しかし、待っていた人物はここには来なかった。
「あ、部室片付けないと」
明日が来たのならあの壊れた天体望遠鏡はあのまま壊れた状態で部室にあるはず。
面倒だなぁ。
少し、後悔した。
もう、あの日は無かった事になり、あの日彼から発せられた言葉に対して僕が答える機会は無くなった。


どれくらい時間が経ったのだろう。
とても長く感じているが、実際は数分かもしれない。

バンッ

左側から大きな音が聞こえた。
なんだろう、と思い顔を音のなった方に向けようとした瞬間。
「こ、いず・・・みっ!」
聞き慣れた声が僕の動きを止めた。
笑わないと。
何も感じてないように、笑わないと。
彼の姿を見ないように口端を持ち上げた。
今、視界に入れてしまうと、笑顔でいられない。
「古泉」
徐々に声が近づいてくる。
来ないで。
来ないで。
来ないで。
「今日は星が綺麗ですよ」
自分でも驚くほど僕の声に感情が無かった。
彼は何も言わない。
戸惑っているような、謝っているような、悲しんでいるような。
「その様子だと、覚えてないようですね」
「すまな、い」
僕が欲しかった言葉は返ってこない。
「でも、良いんです。それがあなたの答えであるように、これが僕の答えなのだと理解出来ましたから。大丈夫、僕は怒ってませんよ」
そう、僕が怒る理由は、ない。
あれは、僕の妄想で、夢で、存在しなかった約束。
それでも僕はここに居たかった、ということが僕の答えなのだ。
「古泉・・・!」
僕の左手にポツポツと生温い感触が伝わってきた。
「どうして泣いているんですか」
あなたが泣く理由なんてないのに。
「僕なら大丈夫ですから」
何が大丈夫なのか自分でも分からない。
むしろ大丈夫じゃないのかもしれない。
それでも、大丈夫。
大丈夫だから。
「それよりも、星を見ませんか?とても綺麗ですよ」
星に向かって手を伸ばした。
届きそうで、届かない距離。
「あの日、天体観測を皆さんでした時に、あなたは僕に教えてくれたんです」
今、こんなことを言ってもきっと彼は理解出来ないと分かっている。
分かっていても、知ってほしかった。
そうじゃないと、僕は・・・。
「『あれがデネブ、アルタイル、ベガ』」
あの日、彼が教えてくれた夏の大三角形。
「『俺は一度しか言わないからな』」
あの日、彼がぶっきらぼうに発した言葉。
「『答えは夏休み最後の夜に聞かしてくれ』」
あの日、彼が僕と交わした約束。
「こい・・・」
何回も、何百回も、何千回も、何万回も同じ日を繰り返しても、たった一度しか言わなかった。
「あなたは本当に一度しか言わないんですね。有言実行もあまり良いものではないようです」
僕はゆっくりと身体を起こした。
「僕の答えは今日・・・いえ、もう昨日ですね。あなたに伝えました」
「答え・・・」
「もう、今日は八月ではありません。だから僕はあなたが何を言ったのかも、僕が何を答えたのかも、教えません」
これはあなたへの罰。
約束を忘れて、約束を破ったあなたへの罰。
それでも・・・。
「あなたが思い出さなくても僕の答えはこの先、ずっと変わりません」
変わらない、変わるはずがないじゃないですか。
僕は立ち上がって彼の横を通り過ぎた。
「古泉っ!」
「もし、いつか思い出したら同じ台詞を言って下さいね」
そうしたら僕も同じ台詞をあなたに伝えます。
少しだけ空を見上げ、屋上の扉に向かって僕は歩き出す。
風が、生温い。
あと数歩で校舎内に入れるというところで身体が動かなくなった。
彼の重さが僕の身体に伝わる。
「古泉、古泉、古泉、古泉、古泉っ!」
「・・・離して下さい」
ようやく僕が彼に抱きしめられているのだと理解した。
「僕は部室に行って片付けなくては行けませんので、あなたは先に帰っていて下さい」
一刻も早く彼から離れたかった。
そうしないと、僕は・・・。
「俺も手伝う」
「いえ、大丈夫です」
身体が震える。
彼にも伝わってしまったかもしれない。
「僕一人で出来ますから」
「でも・・・」
一人で大丈夫。
一人で、大丈夫。
違う、一人じゃないと。
「僕一人じゃないと、泣けないですから」
「・・・・・・っ」
「だから、一人にさせて下さい」
お願いします。
笑顔のままだと辛いんですよ。
辛くて、辛くて、辛くて。
だから、一人にさせて下さい。
彼の重さが無くなる。
「また放課後、部室でお会いしましょう」
放課後までには僕はいつも通りの僕になれるから。
彼と一度も俺と目を合わす事無く、彼の名前を呼ぶ事無く、僕は階段を下りていく。
僕は、最低だ。



部室に入っても僕はすぐに散らばった残骸を片付けることせず、そのままその場に座り込んでしまった。
「・・・っ・・・・・・」
頼んでもいないのに次から次へと涙があふれてくる。
「なんでなんでなんでなんで」
なんで、あなたは忘れてしまったんですか?
僕は約束を守りました。
あなたが、天体望遠鏡を大切にしろと言ったから、僕はあれを捨てなかった。
あなたが、天体観測に誘ったから、僕は空を見た。
あなたと約束したから僕は待っていた。
涙でぼやけている目で窓の外を見る。
あんなに綺麗な夜空だったのに、今の僕には何も見えない。
織姫様、大切な人が年に一度しか会えない日に会いに来なかった時、僕はどうすればいいんですか?
泣きながら怒りをぶつけたら、楽になれますか?
土下座をさせてそれでも許さないと言ったら、気は晴れますか?
彼の目の前で泣く事も無く、
怒りをぶつける事も無く、
謝らせる機会を作らせず、
それでも許すと言って、
笑った僕は、

残酷ですか?

僕は思い出すまで待つと伝えて、彼を縛り付けた。
縛り付けたのに、これ以上僕に近づくなと警告した。
そして僕もこの矛盾に囚われている。


僕は、止まらない涙が乾くまで窓の外を見続けた。


夏がもう、終わる。










古泉愛してるぜ
×一樹Rank



終わらない夏が終わっても、

アイツの中では

まだ、終わってなかった。






ンドレスエイトα









何かおかしい。
そう気付き始めたのは、お盆を過ぎた夏の盛りの日のことだった。
そして、朝比奈さんから電話を受け駅前に集合し、長門が八月十七日から三十一日を一万五千四百九十七回繰り返し、今回が一万五千四百九十八回目だと聞かされたのは何日前の事だったか・・・もう忘れちまった。
「なんとか終わったな」
つい数時間前まで騒がしかった自分の部屋は、BGM代わりと言わんばかりに外から虫の声が耳障りなほどに響いている。
昨日までは何一つ手を付けていなかった夏休みの宿題はSOS団団員のおかげでなんとか全て終わった。
これで宿題をやったが家に忘れました、なんて小学生のようなヘマをしないようにと鞄に全てぶち込み、目覚まし時計のアラームをセットする。
現在の時刻は二十一時、つまり夜の九時。
残り三時間で今日が終わり、明日が来る・・・もしくは二週間前に戻る。
どちらにせよ、今日は終わる。
もし、今日の自分の判断が正しければこの一万五千回以上の夏休みを終え、今年初めての九月一日を迎える事が出来るはず。
それなのに、何故だろう?
この違和感は・・・。
既視感とは何か違う、何か別の違和感。
何かを忘れている。
何か大切な事を、忘れている。
忘れてはいけない、何か。
それが何か分からない。
「あー、くそっ!」
声に出してこのモヤモヤ感を吹っ飛ばそうとしても、この感じは消えなかった。
このまま考えていてもしょうがない。
頭を切り替えてリビングで夏休み最後のグダグダを味わおうと、部屋を出る直前。
ピルルと携帯電話が鳴った。
ディスプレイを見ると珍しい人物の名前が表示された。
通話ボタンを押し「もしもし」と出る。
「・・・・・・」
返事が返ってこない。
相変わらずだな。
「長門?」
「・・・・・・」
電話の向こうで微かな音が聞こえた。
もしかしたらコクンと長門が頷いたのかもしれない。
だが、長門。
電話ではその姿が見えないんだ。
出来れば声を発してくれ。
「・・・あなたは古泉一樹に対して忘れている事がある」
「は?」
声が聞こえたと思ったら、意味の分からない事を言われた。
「何を忘れてるんだ?」
「それは分からない」
分からないって、それはまた長門らしくない答えだった。
「八月三十一日、私は毎回古泉一樹から一万五千四百九十六回同じ質問を受けている」
一万五千四百九十六回というと、つまりこの終わらない二週間が繰り返される度に古泉は長門に対して同じ事を聞いている、という事になる。
多少なりとも違う二週間を繰り返してきたというのに。
「長門、古泉はお前に何を聞いた?」
「今日が終わったら明日は来るのか、と」
それは、つまり今の俺たちにとってごく普通の質問だと思う。
いや、待てよ。
一万五千四百九十六回というと、一回目の三十一日はまだ繰り返す前だからおそらく二回目の三十一日から前回の三十一日まで必ず古泉はこの終わらない夏休みに気付いていた事になる。
しかし、長門の話では俺たちが異変に気付いていたのは最近になってからと言っていなかったか?
「あなた達三人が駅に集合しこの先どうするのか話し合ったのは8769回。ただ、古泉一樹は必ず8月31日、二十三時四十五分までにこの異常空間に気付き、八月三十一日、二十三時四十五分に同じ質問をしている」
「それは俺に関係あるのか?」
「・・・そう」
まぁ関係あるから長門はわざわざ俺に電話を掛けてきているのだろうが。
そうなると分からない。
思い当たる節がない。
「古泉はお前から俺に思い出せって言ってきたのか?」
「違う。彼は、明日が来るかどうかを聞いてきただけ」
「だったら、俺は関係なくないか?」
今の会話に俺の名前は出てきてない。
ますます分からなくなった。
「そもそも、この電話は毎回俺に掛けてくれたのか?」
「今回が初めて」
だろうな。
今は9時を過ぎたところだ。
古泉の電話は今の長門には掛かってきていないはず。
「なんで今回は俺に掛けたんだ?」
「明日が、来るから」
それは分かりやすい返答だった。
分かりやすい返答だが、答えはさっぱりポンである。
「もうひとつ彼は聞いていた。天体観測をしなかった日は何回あるのか、と」
「天体観測?」
ああ、長門の家でやったときのことか。
「天体観測はプール同様過去一万五千四百九十八回必ず行っている。その内、涼宮ハルヒが八月十七日に提案したシークエンスは八千五百二十七回、突発的に提案したシークエンスが四千六百五十二回、古泉一樹が提案したシークエンスが二千三百十八回、そしてあなたが提案したシークエンスが一回」
この俺が天体観測なるものを提案したというのか?
自分の言うのもあれだが、天体観測なんて一生口に出さない可能性が高い単語の一つだ。
「俺が言ったその一回っていうのはいつだ?」
「一回目に該当する八月二十一日の夕方、あなたが涼宮ハルヒに提案した」
一回目か・・・。
なんだって俺はそんな提案したんだろうか?
他の時は古泉も提案したんだよな?
いや、アイツは天体望遠鏡なんてスネ夫的アイテムを持っていたのだから提案してもおかしくはない。
「分かった、教えてくれてありがとな。後は自分で考えるさ」
これ以上、長門を付き合わせるのも気が引ける。
一万五千回以上夏休みを付き合わせてきたのだから今更と言えば今更かもしれないが。
「悪かったな」
「・・・・・・」
返事は返ってこない。
そのまま通話を切ろうとするとボソリと声が聞こえた。
「長門?」
「あなたが提案した時のみ、天体観測は学校で行われた」
それだけ言うとプツリと切れた。
学校か・・・。
まぁ、場所はどこでも良かったのかもしれない。
場所よりも、問題はこの違和感だ。
なあ古泉、俺は何を忘れているんだ?
お前は聞いてもいない事をベラベラと話すくせに、肝心なことは伏線を張って語らないっていうのが癖のようだ。
さてどうしたものか。
一番手っ取り早い方法は古泉に電話をして直接聞くことだが、果たしてそんなもので解決するのか?
まあいい、なんでも当たって砕けてみろってヤツだ。
カ行の最後の方を検索し、通話ボタンを押した。
数秒の沈黙の後、圏外か電源が入っていないとのガイダンスが流れてきた。
当たる前に砕けたようだ。
携帯電話をベッドに放り投げ、そのまま自分の身体もベッドに埋める。
「忘れてることか・・・」
キーワードはおそらく俺が唯一誘ったと思われる一番始めの八月二十一日になる。
時計をチラッとみると長い針は数字の五を指している。
まだ時間はある、と思いたい。
「だめだ」
何も思いつかない。
外から聴こえるBGMが煩い。
意識がこの湿度の高い空気に混ざっていく。



俺が目を開けた時、無意識に時計を見た。
ぼんやりとして上手く焦点が合わない。
徐々にピントが合っていくと思わず起き上がった。
時刻は十一時十五分。
もちろん夜の、である。
昼寝並みに睡眠をしてしまった。
のび太君をもう馬鹿に出来ないな、こりゃ。
どうする、俺。
このまま諦めるか?
諦めていいのか?
そんな問答が頭の中で螺旋状に絡まっている中、俺の身体はというとこっそり家を出て自転車に跨がっていた。
ひたすらペダルを漕ぐが、あてがある訳ではない。
とりあえず自分が思い当たる場所を一つずつ行くしか無い。
自分の家から近い所からローラー作戦のように当たってみる。
駅前や喫茶店、商店街を通り一度でも遊んだ覚えのある所をとにかく行ってみた。
これで海や山なんてチャリで行けるような場所じゃなかったら俺は泣くね。
「はぁ・・・」
汗だくになりながら町内を一周してみたが、何か思い出すこともなく、時間は過ぎていった。
虫が群がっている自動販売機でドリンクを買い、喉を潤す。
時刻はまもなく十一時四十五分となる。
今まで通りだと古泉は長門に同じ質問をするのだろう。
ただ、今までと違うとしたら明日が来るということだ。
長門が言うのだからこの終わらない夏休みが終わるのだ。
そして朝になって久しぶりに学校へ向かって一皮むけたクラスメイトの顔を見て、休み明けで自習に近い授業を受ける事となる。

・・・なんだ?

今、何かに引っかかった。
どこかに違和感を感じた。
何だ?
何だった?
「そうだ・・・学校・・・・・・」
まだ行ってない場所。
そして長い夏休みで一度だけ行った場所。
俺は残っているドリンクを一気に飲み干し、ゴミ箱に投げ捨てる。
缶がゴミ箱に入ったか確認しないままペダルを踏みしめた。
ここから学校までおそらく十五分は掛かるだろう。
ちくちょう、なんだってこんな遠い場所で気付くんだ!
校門前の坂道を心臓が破裂するくらいのスピードで上り、校門前に止めた。
何が悲しくて登校時間の八時間も前に学校に来なくちゃならんだ。
これでココがハズレだったらもう、どうしようもないぞ。
校門を乗り越え真っ暗な学校へ入っていく。
幽霊なんて出るなよ?
今はそんなイベントに付き合っている暇はないんだ。
空気を読んでくれ。
下駄箱から自分の靴を取り出し急いで履き替える。
まずは一年の教室を見て、文芸部のある部室棟に行くか。
学校の時計を見ると十二時を回ったところだった。
十二時を回ってもここに俺が居るってことは、無事明日は来たようだ。
疲れた膝はガクガクと震えている。
これはもう、筋肉痛決定だ。
階段を段飛ばしで上り、各教室を見て回る。
特に何もない。
ついでに幽霊も居ない。
ようやく文芸部室に辿り着き、ドアを開ける。
そこにはバラバラになっている天体望遠鏡があった。
それはもう、無惨な状態で。
叩き落としたように。
怒りをぶつけたように。
古泉の心を表したかのように。
「・・・・・・っ!」
俺は屋上へ向かった。
すごく、すごく、すごく胸が痛んだ。
それなのにその理由が分からない。
なんだ、なんでだ?
涙が込み上げてくる。



バンっと勢いよく屋上の重い扉を開けると、そこには古泉が仰向けになって寝そべり、空を見ていた。
「こ、いず・・・みっ!」
上手く声が出なかった。
そして俺は、間に合わなかったのかと力を入れて握っていたドアノブから手を離した。
俺に気付いた古泉が、笑っていたから。
あまりにもいつも通りに笑っていたから。
いつも通り、誰でも包み込むような笑顔で。
いつも通り、誰にも踏み込ませないような笑顔で。
「古泉」
俺はゆっくりと古泉に近づいていく。
古泉は視線を俺に向ける事無く空を眺めている。
「今日は星が綺麗ですよ」
古泉の声が俺の全身に突き刺さる。
ああ、俺はコイツに拒絶されているのだ。
初めて会ったあの時のように、古泉の言葉が氷のナイフのように俺を刺していく。
「その様子だと、覚えてないようですね」
「すまな、い」
「でも、良いんです。それがあなたの答えであるように、これが僕の答えなのだと理解出来ましたから。大丈夫、僕は怒ってませんよ」
「古泉・・・!」
俺は古泉の隣で膝をついた。
雨が降ってきたのか地面にはポツポツと水の後が増えていく。
「どうして泣いているんですか」
困ったように古泉は笑っている。
知らねぇよ、俺だって。
泣きたいのはお前のはずなのに。
傷ついているのはお前のはずなのに。
「僕なら大丈夫ですから」
大丈夫ならこっち見ろよ。
笑っているなよ。
「それよりも、星を見ませんか?」
とても綺麗ですよ、と古泉は星に向かって手を伸ばした。
顔を上げると、そこには星が無数に広がっていた。
「あの日、天体観測を皆さんでした時に、あなたは僕に教えてくれたんです」
静かな声で古泉は言葉を繋ぐ。
まるで、喋っていないと何かが崩れるかのように。
「『あれがデネブ、アルタイル、ベガ』」
それは三年前、俺がハルヒから教わった星の名前だ。
「『俺は一度しか言わないからな』」
古泉は手を下ろした。
「『答えは夏休み最後の夜に聞かしてくれ』」
「こい・・・」
「あなたは本当に一度しか言わないんですね。有言実行もあまり良いものではないようです」
古泉はゆっくりと身体を起こす。
「僕の答えは今日・・・いえ、もう昨日ですね。あなたに伝えました」
「答え・・・」
「もう、今日は八月ではありません。だから僕はあなたが何を言ったのかも、僕が何を答えたのかも、教えません」
それでも、と言いながら立ち上がった。
「あなたが思い出さなくても僕の答えはこの先、ずっと変わりません」
「古泉っ!」
「もし、いつか思い出したら同じ台詞を言って下さいね」
少しだけ空を見上げたら、屋上の扉に向かって歩き出した。
生温い風が古泉の髪を揺らしている。
その後ろ姿が今にも消えそうで、俺は思わず駆け出して、古泉を後ろから抱きしめた。
「古泉、古泉、古泉、古泉、古泉っ!」
「・・・離して下さい」
未だに思い出せない、自分に腹が立つ。
コイツを悲しませた、自分に腹が立つ。
「僕は部室に行って片付けなくては行けませんので、あなたは先に帰っていて下さい」
あの、バラバラになった天体望遠鏡を片付けるのか?
「俺も手伝う」
「いえ、大丈夫です」
古泉の身体が腕の中で震えた。
「僕一人で出来ますから」
「でも・・・」

「僕一人じゃないと、泣けないですから」

「・・・・・・っ」
「だから、一人にさせて下さい」
俺は古泉から身体を離す。
「また放課後、部室でお会いしましょう」
そう言って古泉は階段を下りていった。
一度も俺と目を合わす事無く。
一度も俺の名を呼ぶ事無く。
「畜生!」
俺は、最低だ。



結局、部室に寄らずに俺は学校を出た。
いや、寄れなかった。
寄れるはずないだろう。
今、アイツは何を思いながら泣いているんだ?
校門辺りで部室がある方を見たが、明かりは点いてない。
空を見上げると、無数の星が雲一つない空で輝いている。
彦星さんよ、年に一度しか会えない日に会いに行かなかった俺はどうすればいいんですかね?
織姫ちゃんは怒りそうだな。
泣きながら怒りをぶつけて、どんなに謝っても許してくれなさそうだ。
でも、アイツは怒らないんですよ。
ちゃんと謝れなかったのに許してくれて。
そして、俺が思い出すまで待つと言って、笑ってくれた。
俺は、どうすればいいですかね?
一番悲しんでるアイツが笑ってるんですよ。

俺は、止まらない涙が乾くまで自転車で走り続けた。


夏がもう、終わる。










古泉愛してるぜ
×一樹Rank



■涼宮ハルヒシリーズBL長編小説
・キョン×古泉/キョン×古泉前提オリジナル×鏡夜
・18禁/シリアス


原作、アニメを織り交ぜながら進行予定。

死にネタにならない努力はしています。

本編は『古泉一樹の○○』となります。
それ以外は本編に入れるのが面倒だった入れる事が出来なかった番外編です。
ただ、見ないと話が繋がらなくなります。
UPする時は、時系列バラバラですが、目次は時系列順に並べてあります。


不快な思いをしたら読むのを即効止めることをお勧めします。


☆目次☆

序章  君の知らない物語

番外編 エンドレスエイトα
      夏休み最終日、長門から一本の電話が掛かってきた。
      何か大切な事を思い出さないといけないのに、思い出せない。
      “最後”の八月三十一日 キョンside
      
      エンドレスエイトβ
      夏休み最終日、一人学校で待っていた。
      たった一度の約束を果たすため、ずっと待つ。
      “最後”の八月三十一日 古泉side

第一章 古泉一樹の絶望
     ※15禁   

      俺はお前のことを、何も知らない。
      だけど、お前を黙って見捨てることなんて出来る訳ない。
      手を伸ばした時にはもう遅かった。

第二章 古泉一樹の過去

第三章 古泉一樹の消失










古泉愛してるぜ
×一樹Rank



長編・シリーズ作品集



リンクの貼られてない作品は近日UP予定作品だにょ。


■桜蘭高校ホスト部作品一覧

長編『花束のロンド』※連載中
ジャンル:環×鏡夜/環×鏡夜前提オリジナル×鏡夜
傾向:18禁/シリアス/一部鬼畜
☆目次☆
第一話 雪と共に紫蘭をあなたへ・・・
第二話 トネリコを抱いて誓う
第三話 スノーフレークにさよならを


桜蘭高校ホスト部サーチ



環鏡破壊、禁止!
☆*桜蘭ホスト部*☆
*桜蘭高校ホスト部名簿*








■涼宮ハルヒシリーズ作品一覧

長編『古泉一樹の外伝』※連載中
ジャンル:キョン×古泉/キョン×古泉前提オリジナル×古泉
傾向:18禁/シリアス
☆目次☆
序章  君の知らない物語
番外編 エンドレスエイトα
    エンドレスエイトβ
第一章 古泉一樹の絶望
        
第二章 古泉一樹の過去
第三章 古泉一樹の消失


長編『さよなら、こいずみくん』※連載中
ジャンル:キョン×古泉
傾向:幼なじみ設定/シリアス
☆目次☆
第一章 ばいばい、いつきくん
     Ⅱ Ⅲ
第二章 はじめまして、こいずみくん


長編『Legend of the Galactic Heroes』※連載中
ジャンル:キョン×古泉/キョン×古泉前提古泉総受け
傾向:18禁/射手座の日設定/パラレル/シリアス
☆目次☆
第一話 daybreak










古泉愛してるぜ
×一樹Rank






■今日からマ王シリーズ作品一覧

長編『主題はマのつく狂想曲』※連載中
ジャンル:有利×コンラート
傾向:18禁/シリアス
☆目次☆
act.1
act.2
act.3
act.4
act.5




今日からマ王!ポータルサイト「まるマさーち」

―☆次男溺愛ranking★―
獅子受主張rank
マ王と水洗WC『ランキング』





■ドラえもんズ作品一覧

長編『僕らの』※連載中
ジャンル:エル×王
傾向:擬人化/パラレル
☆目次☆
──僕らの起承転結。
僕らの序章
僕らの起因
僕らの承認
僕らの転機
僕らの結実
僕らの余韻


長編『ColoRs』※連載中
ジャンル:エル×王/エル×王前提王総受け
傾向:18禁/シリアス/一部鬼畜/擬人化/パラレル
☆目次☆
act.1
act.2
act.3
act.4
act.5








ドラズ受け別RANK
**ドラズ溺愛RANK**
★擬人化ドラランク★
◆擬人化ランキング◆




どもども、腐女子・・・いや、貴腐人へと進化もしくは退化したグレープフルーツ三世略してグレですにょ。
このブログは腐90%とグレ10%で構成されているにょ。
駄文としか言えないものをつらつらと書いていますが、耐えかねた場合は即刻バックトゥーザフーチャーして下さいませにょ~。

↓只今取り扱いジャンル↓
桜蘭高校ホスト部(環×鏡夜前提鏡夜総受け)
・長編『花束のロンド』連載中

涼宮ハルヒシリーズ(キョン×古泉前提古泉総受け)
・長編『古泉一樹の外伝』連載中




ごゆっくり御堪能くださいませ♪
こんばんわだにょー。
二十歳を過ぎても尚腐ってる、グレだにょー。

今日はオタクの聖地、アキバへ行ってきましたにょ!
そしてまんだらけで同人誌を漁ってましたにょ!!(笑)


そして痛感したにょ・・・。
常々感じていたが、オイラのカプはマイナーだにょー!!!

例えばコンラートが受けとか・・・森川ボイスだからか?森川ボイスだから受け派が少ないのか!?
あと、乱太郎受けとか・・・いや、乱受けは多いけどなんかもう、1年は組自体がマイナーらしいにょ・・・。
上級生とか土井先生とか土井先生とか土井先生とか!!
は組だと、きりちゃんが・・・。
そこはもう、仕方ないけどなんで乱ちゃんそっちのけで金ちゃんとかしょうちゃんとかがメジャー類に食い込んでしまうかにょー・・・?




まあ、好きなキャラ=総受け方式のオイラだとメジャーとは言いにくいカプになるにょー。
それはもう、諦めたにょー



ただ、

ただ、まさかオイラがハマってる漫画自体がすでにマイナーだとは思わなかったにょー!!!



なんで鉄道擬人化のジャンルがあるのにミラクルトレインのジャンルがないんだー!!!
オイラの、オイラの十六夜を・・・十六夜を取り扱ってくれぇぇぇぇぇ!!!
創竜伝を取り扱ってくれぇぇぇぇぇぇぇ!!!
バカテスを、ドラえもんズを常備してくれぇぇぇぇぇ!!!

畜生、涙が止まんないぜ(フッ・・・



乙女ロードには劣るとはいえ、まさかの出来事で足の震えが止まんないにょー。。。



あと、グッズだが・・・。
アニメイトで銀魂を漁ってたにょー。
オイラの嫁、新八が、新八がないにょぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
まったく無いにょ・・・。
神楽&新八のグッズってあったけど、神楽9.9割の新八0.1割だったにょ。
後は1枚だけ下敷きが・・・。
下敷きはもう八戒で埋まってるにょー
エリザベスのグッズも栞しかなかったし・・・
目からアクア・ラグナが(ブワッ

今、真の王道で活動出来るのはワンピだけだにょー。
うん、オイラは生粋のサンジ受けにょー。
出来ればゾロサンにょー。
ネットしてて簡単にヒットするのはワンピだけだにょー。
はぁ・・・。





そんな腐ってる一日でした☆