ColoRs act.4
「エル、まさか俺達がドラズだってこと言ってねーだろうな?」
キッドは煙草を揉み消し、エルを睨んだ。
親友だろうと恋人だろうとドラズということバラしてはいけない。
「言ってねぇよ、そこまで馬鹿じゃねーっての。それに、一応言葉で縛っておいたし、勝手な行動はしないって」
本来ドラズとしてのエルの力は"怪力"だが、言葉で相手の行動を制限させる"言縛り"をかけることも出来る。
一般人や堕ち人にならエル程度の使い手でも"縛り" は有効のはず。
「そーゆー問題じゃねぇっ!」
キッドはバンッとデスクを蹴り上げた。
「堕ち人だろうがなんだろうが、俺らが任務以外でドラズに関わる訳にはいかねぇんだよ!!」
「キッド、落ち着いてっ」
暴れかねないキッドをドラリーニョが必死に押さえ込む。
「お前、どんな立場か忘れてんじゃねーのか!?」
その言葉にエルは「忘れてねぇよ」と静かに呟く。
ドラズだった者は平穏無事に表世界では生きていけない。
だからと言って一度ドラズを裏切った自分達が再びドラズに戻れる訳がない。
そんな中、自分達は警察官として、普通の人間として生活している。
凶悪なドラズの根絶、それが絶対条件。
「だったら今すぐそいつを追い出してこい」
たった一人の勝手な行動で仲間全員がとばっちりを受ける。
「ねぇキッド、エルの話も聞いてあげようよ。きっと理由が」
「理由なんてねぇよ・・・・・・ただあのガキがしばらく泊めてくれっつったから泊めてやるだけだ」
ただそれだけ。
「・・・・・・堕ち人は危険」
ドラニコフはエルを諫めるかのように短く言葉を発した。
「裏があるかもしれない」
堕ち人の殆どは名を縛った特殊能力者の所有物となる。
敵対している相手の動向を窺う為、堕ち人を利用する者も多い。
「ねー、二人共!一回その堕ち人に会ってみてからどうしようか決めない?」
追い出せ、と言うキッドとドラニコフをなだめながらドラリーニョが提案した。
「もしなにか企んでたらニコフが気付くし、僕達なら堕ち人の一人や二人簡単に捕まえられるでしょ?」
それぞれ過去に武勇伝を持っている。
堕ち人くらいなんとでもなる。
「・・・・・・おいニコフ、家に行くぞ」
キッドはドラニーニョから目を逸らし、深く帽子をかぶり直す。
「エルとリーニョは此処で待ってな」
「えーっ!僕も堕ち人に会いたいのにー」
「リーニョはエルがまたやっかいなモン拾ってこねぇように見張ってな」
「ずるーい!」
ドラニーニョは子供のように駄々をこねる。
「なんでそんなに会いたいんだよ」
「だってエルが堕ち人を助けたってことは、すっごく美人なはずでしょ?」
女たらしのエル。
その異名は伊達じゃない。
「僕も行きたーい、会いたーい、おしゃべりしたーい」
「遊びに行くワケじゃっ・・・・・・!」
「キッド、早く行こう」
ドラニコフはキッドを促し、部屋を出ていく。
「お前ら絶対何処にも行くなよっ」
留守番組に念を押してキッドも部屋を出た。
「どんだけ信用ねぇんだよ・・・・・・」
「エルは日頃の行いが悪いからねぇ」
「オレのどこが悪いんだよ」
仕事はきちんとやっている。
たまにサボることはあるが。
「毎日サボってばっかりだもん。サボってたから堕ち人を拾ったんでしょ?」
「・・・・・・・・・」
反論出来ない。
「ねー、その堕ち人って可愛い系?綺麗系?」
「あのなぁ・・・・・・堕ち人はセニョリータじゃなくてヤロー。性格の悪いガキだっつーの」
黙っていれば可愛いが、一度口を開くと氷の矢のごとく相手を突き刺す。
見た目と中身のギャップは激しい。
それを聞いたドラニーニョから一瞬笑顔が消えた。
「ロリコンは犯罪だよ?しかも少年って・・・・・・まぁエルがそーゆーの好きでも僕は縁を切ったりしないからね」
そう言いながらもエルを映す瞳は完全に引いている。
「ばっ・・・馬鹿かっ!?オレ様がそんな趣味に走るワケ・・・・・・ッ」
「あんまり近寄らないで」
あからさまにエルと距離をとり、身構える。
「だから違うっつーの!!!」
「はいはい、そーゆーことにしといてあげる」
ドラリーニョはそう言いながら、デスクの引き出しからたくさんの書類を取り出した。
「なんだそれ?」
「勤怠報告書、始末書、事前銃器貸出書、事後銃器貸出書、休暇及び有給休暇希望書、公共物破損報告書、一般破損報告書・・・・・・あとは」
一旦、息継ぎをして再び言葉を繋ごうと口を開くと「もういいって!」とエルは遮った。
「じゃあコレ今日中に書いて提出してね」
「マジで!?」
「うん、マジで」
明るく太陽のようなドラリーニョの笑顔。
(コイツの顔、殴りてぇ・・・・・・!)
「今日中に提出出来なかったら給料カットらしいよー」
エルは拳を握り締める代わりにペンを握りしめ、書類と向き合った。
王ドラは静寂の中ソファに深く座り、赤い髪の男、エルの顔を思い出した。
いかにも女性にモテる容姿で、しかも自覚している為、かなりナルシスト。
性格は単純で乗せやすい。
つまり、馬鹿。
ついでに怪力。
拳が飛んできた時、とっさに受け止めた手が今でも痺れが治らない。
(あれで警察だなんて・・・)
思わず笑ってしまう。
"ドラズ"という言葉が出てこなければニワトリ頭の男とは二度と関わらないようにしただろう。
(とりあえず部屋の掃除でもしてあげますか)
ゆっくりと立ち上がり一歩足を踏み出した瞬間、吐き気と目眩が王ドラを襲った。
「・・・・・・・・・!」
ガクッと膝が床につき、右手でなんとか身体を支えた。
(く、すり・・・・・・っ)
ポケットの中からケースを取り出し、錠剤を飲み込んだ。
「ぁ・・・ぐっ・・・・・・」
右の脇腹を押さえながらうずくまり、全身に突き刺さるような痛みにじっと耐える。
「・・・・・・は・・・ぁ」
どれだけの時間が経ったのか王ドラは分からなかった。
何度か咳をしながら近くに放置していたケースを手に取り、錠剤の数を確認する。
(この分だと足りませんね・・・・・・どこかで稼ぎますか・・・)
身体で稼ぎ、薬を買う。
それが当たり前。
当たり前だった。
『自分をもっと大切にしろ』
王ドラの脳裏にエルの言葉が響き渡る。
初めて言われた言葉。
一瞬、ほんの一瞬だけ赤髪の彼に自分の全てを委ねたいと思ってしまった。
(・・・・・・私は何を、考えているんでしょう)
疲れているのかもしれない。
ふらつきながら立ち上がり、カーテンの隙間から射す夕日に目を細める。
「私は何も望まない」
『幸せ』なんて言葉はこの世には存在しないのだから。
─To Be ContinueD─



ドラズ受け別RANK
**ドラズ溺愛RANK**
★擬人化ドラランク★
◆擬人化ランキング◆