CP、傾向ごちゃ混ぜ。



不快な思いをしたら読むのを即効止めることをお勧めします。



■短編小説

☆目次☆
No.1 とある織姫ちゃんの災難
     CP:エル×王 傾向:ギャグ
     七夕の夜の出来事

No.2 熱帯夜の過ごし方
     CP:エル×王 傾向:ギャグ
     暑い夜は離れて寝よう

No.3 猫型戦隊 ドラドラ7
     CP:無し 傾向:ギャグ
     世界の平和を守る、正義のヒーロー

No.4 赤を青く染める
     CP:エル×王前提えもん×王 傾向:無理矢理
     罪は罰で償えばいい


■キリ番小説
※旧HPで行っていたキリ番リクエスト小説

☆目次☆
700HIT 自分とその他とその例外
(自爆)   CP:なし 傾向:王ドラ独白
       変わったのは何か



■拍手小説
※旧HPのweb拍手お礼小説
第1弾 拝啓 愛しい人
      CP:エル×王 傾向:ギャグ
      手紙でも素直じゃない王ドラ









ドラズ受け別RANK
**ドラズ溺愛RANK**
★擬人化ドラランク★
◆擬人化ランキング◆


どもども、腐女子・・・いや、貴腐人へと進化もしくは退化したグレープフルーツ三世略してグレです。
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ごゆっくり御堪能くださいませ♪



改訂日:2011.04.24
ひとり、一人、独り。

ひとりになっちゃいました。



さよなら、こいずみくん
~ばいばい、いつきくんⅠ~




小学校の卒業式が終わり、過去五年間の中で一番長い春休みが明けたと思うと、ダブダブの学生服を身に纏い、公立の中学校へ入学した。
入学式の日はドキドキしたが、一週間経つと落ち着きを取り戻した。
よく考えると数週間一緒に卒業した学友がほぼそのままなのだ。
そりゃあ、三割は隣の公立中学校に行き、その代わり隣の小学校だった人間が新しく仲間入りしているし、私立に行った奴もいれば、転入して来た奴もいるが、大して変わらない。
それに、仲の良い友達はそのままなのだから寂しいという感情もない。
なんてちょっとクールに考えている。
今の俺はこの思考がカッコイイなんて思っていたが、これがあと数年経つと黒歴史、中二病と称されるものだということに気付くのだが、それは見逃して欲しい。


初の定期テスト、つまり中間テストという試練がようやく終わった日の放課後、帰宅部の俺は担掃除区域の清掃を適当に済ませると、下校の準備を始めた。
というか、一日に五教科全てのテストを実施するというのはどうかと思う。
ゆとり教育世代だと言うのに、テスト期間は全くゆとりじゃない。
なんて不満を心の中で思っていると、教室の外から聞き慣れた声が飛んで来た。
「キョンくん」
「あー、一樹か。どうした?」
ぴょこんという擬音が似合う体勢で俺のクラスを覗いてる。
女子顔負けの可愛い顔に、確実に背の順で並ぶと先頭になる低い身長、声変わり前のアルトボイス、生まれつき色素の薄い髪の毛に、スポーツマンと思えないくらいの白い肌。
神は不公平な世の中を創ったようだ。
「今日、一緒に帰ろうよ」
「お前、部活あるだろ」
新人戦だったか練習試合だったかで野球部は暇じゃないって聞いたぞ。
「今日は夜練だから、帰宅してから部活なんだ」
「そうか。んじゃ校門で待ってるから、さっさと来いよ」
「うんっ」
パタパタと一樹は自分のクラスへ戻っていった。
「なあ、キョン。帰りゲーセン寄って行こうぜ!」
後ろからクラスメイトの数人が声を掛けて来た。
今日はよく誘われる日だな。
ていうか、俺は中学生になってもそのあだ名で呼ばれるのか?
多感な時期にその名で呼ばれるのは、辛いぜ。
まさか高校生になっても、なんてことはないよな?
・・・ないよな?
「悪い、今日は」
「古泉くんと帰るんだよね?」
俺の言葉を奪ったのは佐々木だった。
ショートカットの似合う女子で、席替えで隣なったこともあり、よく喋るようになった友達の一人である。
ちなみに佐々木は隣の小学校だったから俺にとって中学生で初めて出来た女友達と言える。
「古泉って、ああ二組の古泉か」
「あ、一樹も一緒で良いなら行くけど」
いや、今日は夜練があるから無理か?
「野球部は今日、夜練だろ?さっき野球部の奴誘ったらダメだったし」
「そうか。だったらまた別の日に誘ってくれ」
俺はそう言って真新しい鞄を持って教室を出た。
その後を佐々木が付いて来ていた。
「古泉くんとは校門で待ち合わせだっけ。そこまで一緒に行かないかい?」
行くのは良いが、五分も掛からない校門まで一緒に行く意味はあるのか?
「何を言っているんだい。時間は一分一秒でも無駄じゃないんだよ。僕と君が校門まで語り合う時間も、ね」
哲学か何かか、このボクッ娘め。
佐々木とテストの答え合わせ的なことを喋りながらゆっくり歩いて校門に行くと、一樹の姿はまだ無かった。
ゆっくり来たからもしかして一樹の方が待っているかと思っていたけど、まだ来てないようだ。
「古泉くんはまだ来てないみたいだね」
「すぐ来るさ」
「そう、だね。それじゃあまた明日」
「おう」
佐々木は手を振り帰路についた。
一瞬、佐々木が不自然に言葉を切った気がしたが、気のせいだろうか。
「遅い・・・」
佐々木と別れてから十分は経った。
もしや、先に帰ったとか?
いやいや、一樹に限ってそれは無い。
何しろ小学四年生の時、一緒にラジオ体操に行こうと約束し、俺が寝坊した上にサボった日、六時間以上待ち合わせ場所で待っていたのだ。
しかも大雨の日に。
そんな奴がさっさと帰るなんてしないだろ。
「ごめん、遅くなっちゃった」
待ち人来る。
一樹が息を荒上げながら俺に声を掛けた。
「遅かったな」
「う、うん。急にクラスの用事をせ、先生から頼まれちゃって。ごめんね」
少し落ち着け。
喋るのは息を整えてからにしろ。
「別に俺は大丈夫だけど、さ。あんまり遅いと夜練、大変なんじゃないかって思っただけだ」
「大丈夫だよ。よし、帰ろう!」
俺の鞄を引っ張って歩き出した。
なんで今日はそんなにテンション高いんだ、お前は。
「だって、中学になったらクラス離れちゃったし、キョンくん部活してないから僕が部活休みの日じゃないと一緒に帰れないし・・・せっかくお家が隣なのに」
あー、そうなのだ。
俺と一樹は小学校入学から六年間同じクラスで、家がお隣さんなワケで。
つまり可愛く言うと幼なじみ。
格好をつけて言うと腐れ縁。
これが可愛い女子とだと羨ましがられるのに、男だと全く羨ましがられないし、正直、悲しい。
これじゃあステキな夢すら見られないじゃないか!
「ひどいなぁ」
心にも無い事を言うな。
「本当に残念だと思ってるのに」
「別に一緒に帰れなくても問題無いだろ。クラスが違っても同じ学校だし、家が隣だからいつでも遊べるし」
「時間は無限じゃないんだよ。一分一秒でも大切なんだから。僕とキョンくんが一緒に家まで帰る時間も大切なのに」
似たような台詞をついさっき聞いたぞ。
流行ってるのか?
「あ、そうだ!僕、次の練習試合でレギュラーになったんだ」
「お、すごいじゃん。ポジションはどこだ?」
「セカンド!そんで、打順が七番!」
おー・・・微妙だな、おい。
ウチの中学が強豪校だったら練習試合とはいえレギュラーに選ばれただけでもすごいのだろうけれど、残念ながら弱小とまではいかないが新人戦二回戦で敗退する程度のチームで七番セカンドは微妙だ。
微妙過ぎるぞ、一樹!
「先生に、守備は上手いけど打撃が可哀想って言われちゃった」
「・・・それには激しく同意する」
何度か一緒に野球をしたが、一樹のバッティングはフォームが安定してないのか、なよなよっとした状態でバットを振るのだ。
アレで野球部か?と疑問に思った覚えがある。
あのフォームしか出来ないのならば仕方ないが、時々正しい姿勢で長蛇を打つのだから不思議だ。
いつもあれで打てば四番を任せられるのに。
「僕には違いが分からないよ」
自覚が無いから手に負えない。
「で、試合はいつだ?」
「ん?」
「多分暇だから、妹連れて応援しに行ってやるよ」
「本当!?」
一樹は目をキラキラさせて顔を近づけて来た。
顔が近いぞ!
「これは全力で勝たないとダメですね!」
「だから、いつなんだよ!」
「えっと、六月三十日!あ、もしその日応援に来られなかったら七月七日にも試合があるから!」
「分かったから、前向いて歩けって!」
「妹ちゃんもちゃんと連れて来てね」
ご所望なら家族全員で行ってやるよ。
あ・・・。
「なあ、一樹」
「何?」
「最近、その、どうだ?・・・おじさんとおばさんは」
「・・・うん、いつも通りだよ」
さっきまで俺を満面の笑みで見てたくせに、おじさんとおばさんの事を話題にした途端、背を向けた。
おじさんとおばさん、つまり一樹の父親と母親に該当するのだが、ちょっと複雑な関係にある。
きっと大人ならこんな風に柔らかく表現するのだろうが、残念ながら俺は中学生のガキだから遠回しな言い方はしない。
父親は一樹が小学校入学共に家の隣に引っ越して来た時から一樹に対して家庭内暴力、つまりDVをしていた。
母親は一樹に一週間食事を与えなかったり、ずっと同じ服を洗濯もせず着させていたり、一ヶ月間家を留守にしたりと、育児放棄っていうのか、あれ。
アイツらを父親、母親なんていう言葉で表すなんて反吐が出るね。
一樹が常に怪我をしていたから、俺の親も相談所とかに相談してたし、寒空の下、外にパジャマ姿で投げ出されていた一樹を保護していた。
三年生になってからは殆ど家で寝泊まりもしていた。
俺も、俺の親もこのままウチで暮らした方が良いと一樹に何度も言ったが、一樹は拒否し、中学に入ると俺の家で寝泊まりをしなくなった。
「大丈夫だよ。今は殴られる事も少なくなったし」
「でも、殴られてるんだろ?」
少なくなったと言っても、それはゼロじゃない。
「それはね、僕が・・・そう、僕が悪いからだよ。キョンくんも悪い事したら怒られるでしょ?それと一緒だよ。ただ、あの人はちょっと人より厳しくて、なんていうか、体育会系だからね。口より手が出ちゃうんだよ」
昔から一樹はアイツらを弁護する。
どうして一緒に住めるのか。
どうして庇うのか。
俺にはさっぱり理解出来ない。
酷い事されても一緒に暮らしたり両親と思う事なんて普通出来ないだろ。
まあ、一樹にも変化があって俺はホッとした。
前までの一樹だと、どんな仕打ちであってもアイツらをお父さん、お母さんと呼んでいたが、中学に入ってからは『あの人』で通している。
それが良い事なのかどうかは分からないけど、一樹がお父さん、お母さんと呼ぶ度にアイツらを親だと思わないといけなかったから俺としては喜ばしいことだ。
「そんなことよりね、キョンくんのお母さんにさ、お願いしてほしいんだけど」
「なんだ?」
「あのさ、試合がお昼からなんだ。だからね、試合の日にお弁当を作って欲しいなあって」
「弁当?」
「うん。前に運動会の時、キョンくんの家族とお弁当一緒に食べたでしょ?すごく美味しかったから、作って欲しくて。キョンくんと妹ちゃんの分のお弁当を作るついでに僕のお弁当も作ってくれたら嬉しいかなって思ったんだけど。あ、試合はお昼でも朝は早いから、お弁当といっても簡単なもので良いんだけどね!うん、おにぎりとかサンドウィッチとか一つあれば良いんだよ!あとはパンを買えば足りるしさ!あ、おばさん気使っちゃうよね•••やっぱり大丈夫!変なこと言ってごめんね!あはは、初めて試合に出れるから調子乗っちゃった。僕って馬鹿だなぁ。試合もただの練習試合だし、キョンくんも無理して来なくても良いからね。ホント僕はダメだな」
ホントダメだよ、お前は。
勝手に自己完結してんなよ
俺は何にも言っていない。
「だって、迷惑でしょ」
「誰が迷惑だって言ったんだよ・・・ちゃんと頼んでやるよ。で、お前はおにぎりが良いのか?サンドウィッチが良いのか?」
俺の母親の事だ。
俺が一樹の応援に行くと言ったら頼まなくても一樹の弁当を作ってるだろうさ。
おまけに今回は一樹直々の願いだ。
喜んで豪華な弁当を作るだろうな。
母よ、俺のもちゃんと作ってくれよ。
「じゃあ、僕、おにぎりが良いな!中身は鮭とツナマヨだと僕はホームラン打つよ!それで唐揚げと、ミニトマトも入れて欲しい!」
「待て待て待て!覚えられん!メモしろ、メモ!」
「キョンくんが書いてよー」
「なんで俺が書くんだよ!?一樹の希望だろ、自分で書け!」
「だって、僕の字はちょっと読みにくいって言うじゃんー」
「ちょっとじゃないだろ、勝手に美化するな!お前の字は全く読めん!」
「キョンくんひどーい」
「ほら、もう家に着くだろ!さっさと書けよ!おかずは唐揚げとトマトだっけか?」
「違う!ミニトマト!あとは何が良いかな・・・あ、キョンくんのお弁当にはピーマンを入れてもらおう!」
「おまっ!俺の弁当は俺が決める!!」
雑な字が紙に書かれていく。
この象形文字を母親に見せても一樹の希望するお弁当は出来上がらないだろうな。
解読者、俺。
はぁ•••一樹、お前はまずバットを持つよりもペンを持って文字の練習をした方が将来の為になるんじゃないかと、俺は思うね。





NexT...Bye bye, Itsuki 2nd









古泉愛してるぜ
×一樹Rank



■涼宮ハルヒシリーズBL長編小説
・キョン×古泉
・幼なじみ設定/シリアス


キョンと古泉が幼なじみ設定。

原作、アニメベース。

タイトルの割にシリアスです。


不快な思いをしたら読むのを即止めることをお勧めします。


☆目次☆

第一章 ばいばい、いつきくん
     Ⅱ Ⅲ

      中一の初夏、俺はあいつを見捨てた。
      中一の初夏、僕はひとりになった。

第二章 はじめまして、こいずみくん











古泉愛してるぜ
×一樹Rank



「なあ、何処に行くんだ?」
村田とヨザックが乗っている馬を先頭に有利はヴォルフラムと共について行くが、目的地を知らされていない。
「行けば分かるよ」
返ってきた言葉は素っ気ない。
「・・・おれ達だけで大丈夫なのか?」
お庭番のヨザックと一応婚約者で軍人であるヴォルフラムが同伴してるが、少ない気がする。
「だいじょーぶだいじょーぶ」
伝説の大賢者は問題無しと笑っていた。
「本当かよ・・・」
信用度はかなり低い。
「嘘ついてどうすんのさ。あ、ほらあそこが目的地」
村田が指した先に視線を移す。
「あそこって・・・・・・」
見る限り静かな森の中。
「あの日の夜、僕達が襲われた場所だよ」
そう言って村田は馬から降りて何かを探し始めた。
「何を探してるんですか、猊下?」
「うん、ちょっとね・・・」
ヨザックが話し掛けても生返事しか返ってこない。
仕方なく三人は近くの切り株に腰を掛ける。
改めて見ると、木という木に剣で傷つけられた跡が残っている。
(ここでおれがコンラッドを・・・・・・)
拒絶したと言うのだろうか?
自分がコンラートを拒絶するはずがない。
蔑むはずがない。
なのに、何故か言い切る事が出来ない。
「あーっもうっ!どーしたら良いんだよっ!!」
何も出来ない自分へのイライラだけが募っていく。
「何故、一人で悶えてるんだ?」
ヴォルフラムが不審者を見るような目で有利を視界にとらえていた。
「悶っ・・・!どこをどー見たら悶えているよーに見えるんだよっ!?」
森の中で一人悶えてたら不審者だ。
「まぁ、それは良いとして」
横から村田が割り込んでくる。
「良くないって!」
このまま不審者として扱われるのは、一生の恥。
「目的のモノも見つかったし、ウェラー卿の所へ行こうか」
・・・・・・・・・。
「村田、頼むから説明してくれよ・・・」
ヴォルフラムとヨザックも有利と同じ表情で村田を見つめた。
「あー、ごめんごめん」
あはは、と笑いながら村田は謝る。
「これ何か分かるかい?」
村田の右手に雑草。
「草、だろ」
至って普通の草。
特徴もなく、どこにでも生えている草。
「うん、正解」
「まさか、その草を探してたのか?」
ただの草むしりだったらグーで殴ってやる。
「渋谷ー、眼が怖いよ」
ただの草のはずないだろう、と村田は有利に言った。
「これは『夢幻草』」
「む、むげんそう?」
ただの雑草にしか見えない草は意外とカッコイイ名前だった。
「条件が揃わなかったらただの草なんだけどね」
「これが夢幻草ですかー」とヨザック。
「まだこの土地にも残っていたのだな」とヴォルフラム。
「え・・・有名な草なワケ?条件って何なんだ?ってゆーか、その夢幻草って何なんだよ!?」
「まーまー、慌てなーい慌てなーい」
村田は「おいしょっと」と言いながら有利の隣に座り込んだ。
「この夢幻草は魔力を吸い込んで、一定範囲内にいる人の闇を現実にするってゆー魔草なんだよ」
「なんだよ、それ」
いまいちピンとこない。
「渋谷の魔力を吸い込んだ夢幻草は、渋谷が恐れていること……例えばこのまま一生結婚出来ないんじゃないかとか強く思ってると、それを現実として起こしちゃうんだよねー」
「・・・・・・今、おれのこと馬鹿にしたろ?」
例え話としてソレを出す必要性は、ない。
「してないってー」
否定の仕方がちょっとイラつく。
しかし、いちいち気にしていたら前に進まない、と分かっている。
口で村田には勝てない。
「で、その夢幻草がどうかしたのかよ」
「あの夜、この夢幻草は渋谷の魔力を吸ったんだよ」
賊に襲われ、村田が怪我を負った瞬間、有利は魔力を開放した。
「そして魔王の魔力を吸った夢幻草は僕達に『闇』を見せたって感じかな」
「見せたって・・・」
コンラートが差し伸べた手を振り払い、拒絶した有利の姿。
「僕も初めて夢幻草の力を見たけど、本当に『闇』を現実にしちゃうみたいだね」
「でも何で・・・」
あんなものを見せたのだろうか。
「ウェラー卿は渋谷から拒絶されることを怖れ、渋谷はウェラー卿を失うのを怖れていたんじゃないのかな?」
コンラートを失いたくない。
確かにそれは間違いではない。
間違いではないが、それを『闇』と言うべきなのだろうか。
「失いたくないってゆーなら村田でも良いわけだろ?なんでコンラッドだったんだよっ!」
「僕に言われても困るんだけどね」
キミ達の問題だし、とそっけなく返されてしまった。
「分かっていることは、魔王である渋谷の魔力を吸った夢幻草は本来発揮するはずの力よりも強力だったって事だけだね」
「おれの魔力の所為で?」
「夢幻草は元々目くらまし程度の力しかない。そうでなければ危険な植物を放置するはずないだろう?」
ヴォルフラムは呆れながら答えた。
「そう言われればそうだけどさぁ」
「渋谷の、魔王の魔力が想像以上に高いって分かったかい?」
所構わず魔力を使うな、と遠まわしに忠告された。
「・・・・・・はい」
「まぁ、これはキッカケでしかないけどね」
村田は持っていた夢幻草をポイッと適当に投げ捨て手を軽く払った。
「お、おいっ!そんな雑に扱って良いのかよ!?」
「だから、夢幻草はそれほど危険な植物じゃないんだって」
今回は条件が良すぎただけ。
タイミングが悪かっただけ。
「たまたまこの夢幻草が関わっていただけなんだからぶっちゃけ、どーでも良いんだ」
問題は別にある。
村田はゆっくり眼鏡を指で押し上げた。
「渋谷、あの人格達はウェラー卿の裏の人格なんだよね」
いきなり何を言い出すのかと思い、有利は村田の顔を見る。
しかし有利がいる位置からは逆光でよく見えない。
「だから『ウェラー卿コンラート』とは性格も言動も、性別さえも違う。“獅子”や“女史”、あとは・・・・・・“小人”や“少年”もウェラー卿の代わりに『感情』を受け持った存在ってことになる」
コンラートが心の奥底に押し込めたものが一つの人格として生まれた。
「何が言いたいんだよ?」
「じゃあさぁ、“代役”は何の代わりだろうね」
自分を責め続けた“獅子”
存在を否定された“女史”
言葉を押し込めた“少年”
全てに怯えていた“小人”
「何年も周りを騙してウェラー卿コンラートとして生きてきた“代役”は一体どんな人格か分かるかい?」
「どんなって、グウェンとかギュンターが分からないくらいコンラッドと似て・・・・・・」
「渋谷、言っただろう?ウェラー卿の中の人格は全て『感情』が元になってるんだって」
「感情・・・」
「“代役”は『ウェラー卿コンラート』のなんの感情を受け持っていたのかな?」
「・・・それは・・・・・・」
一体なんの感情なのだろう。
「さてと、そろそろウェラー卿の所に行くとしようか」
村田は立ち上がり、懐から鉄の塊を取り出した。
「何それ?」
よく見ようと顔を近付けると鉄の塊にはアニシナ印が付いていた。
「『すぐにでもあなたの隣へ駆けつけます(おでかけサイズ)』略して『すとーかー』を借りてきたから簡単にウェラー卿の所へ行けるよ」
村田は鉄の塊を有利に渡し、更に怪しい機械をヴォルフラムに取り付けた。
「一体何を・・・・・・」
ヴォルフラムは言い終わらない内その場に倒れた。
顔色は青く、アニシナの実験台・・・もとい、グウェンダルとギュンターと同じ姿だった。
「ヴォルフ!?む、村田ぁ!何する気だよ!?」
「やっぱり彼一人の魔力じゃ渋谷だけしか行けないか・・・」
有利の言葉は村田には届かない。
「そーゆーことだからウェラー卿によろしく~」
「うぎゃーっ」
村田の最高の笑みを最後に目の前が真っ暗となる。
人生で、公衆トイレからのスターツアーズが一番怖くて気持ち悪い体験だったが、得体の知れない道具での移動も恐怖でいっぱいだ───と有利は薄れていく意識の中で思ったのだった。





─To Be ContinueD─




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―☆次男溺愛ranking★―
獅子受主張rank
マ王と水洗WC『ランキング』


青年は暗い廊下を壁づたいに歩き、周りに人影が無い事を確認し足を止める。
「・・・・・・っ!」
身体中に鋭い痛みが走り、その場に跪く。
脇腹の傷が特にひどく、歩くことすら苦痛に感じる。
更に両手足と首の枷が身体に負担をかけていた。
「くそっ!」
《身体を傷付けるな、とあれほど言っただろう》
青年・・・獅子の頭の中に代役の声が響く。
《今は大人しくして部屋に戻るんだ》
「黙れっ!」
冷静な口調で淡々と話す代役に腹が立つ。
「魔王と勝手に変な約束しやがって・・・・・・“コンラート”を裏切るつもりか!?」
コンラートを護る為の存在でありながら、コンラートを裏切ることは許されない。
《この俺が裏切るはずない》
「だったら・・・ッ」
《下手に動くと"コンラート"がまた覚醒する》
あの日の夜のように。
同じ悲劇は繰り返したくない。
《それに“コンラート”が無意識とは言え此処から離れることを拒否しているんだ、仕方ないだろう》
以前から度々自分達の考えとは違う力が働いていた。
それはこの身体の持ち主であるコンラートが短時間だけだが覚醒し、意志を持って行動しているからである。
そして、覚醒していない間でも想いが強ければ身体はコンラートの意志に従ってしまう。
「そうやって何十年も“コンラート”を自由にさせていたからこんなことになったんだ」
傷つくと知っていても、拒絶されると分かっていても、全てを受け入れてきた。
「“コンラート”の意志に反していようと、オレは“コンラート”を護る為なら」
誰だろうと、斬る。
《獅子、お前は一体何に怯えているんだ?》
「オレが、怯えているだと!?」
代役の意外な言葉に思わず声を荒らげた。
「何故オレが怯えなければ・・・」
《静かに・・・・・・あの角に誰か居る》
代役は獅子の質問に答える前に、注意を促す。
「なーにやってるんですか、たいちょー?」
聞き覚えのある声。
薄暗い中、橙色の髪が獅子の視界に映る。
「隊長より獅子って呼んだ方が良いっすかねー?」
「グリエ・ヨザックか」
「あら、覚えていただいてたのね?グリ江ちゃん感動したわ!」
身体をくねらせながらオネエ言葉。
ふざけているとしか言いようがない言動に獅子は思わず眉をひそめる。
「・・・・・・そこをどけ」
痛む身体を無理矢理動かし間合いをとると、剣をヨザックへ向けた。
ヨザックが居るということは、じきに人も集まることになる。
この身体では大人数相手に切り抜けられる自信は獅子には、ない。
「あらー、久しぶりに会ったんだからゆっくり会話を楽しんだって良いでしょうに」
はぁ、とヨザックは肩を落とし敵意丸出しの青年を見やる。
「あんたに会うのは二十年・・・いや、もっと前か・・・・・・」
アルノルドの戦地で一度だけこの“獅子”という人格と言葉を交わした。
「まさかこーんな所で再会するとは思わなかったけどねぇ」
「そこをどけ、と言っている」
無駄話をしている暇はない。
今はとにかくこの城から離れなければならないのだから。
「そんな身体で動き回ると辛いでしょ」
獅子が剣を構えているにも関わらず、ヨザックは剣を抜くどころか壁に寄りかかり腕組みをしている。
「大人しくしてもらえませんかねぇ」
青年の身体は動かして良い状態ではない。
しかし、ヨザックの言葉を受け入れるはずもなく、獅子は切りかかる。
「おっと・・・!」
剣はヨザックの前髪を軽く掠めたが、ギリギリでかわした。
「あらー、本気なのねー」
切りかかって来た瞬間の殺気は、本物だ。
荒い息を吐きながらも眼は完全にヨザックを捕らえている。
(手加減無しってヤツ?)
青年は有利達に対してどこか臆する部分があった。
コンラート自身が人格達を止めているのかもしれない、と大賢者様が言っていたが・・・。
ヨザックに向けられる視線には微塵も感じられない。
(グリ江ちゃん悲しいっ)
共に育ち、共に戦った仲だというのに。
「薄情だよなー、たいちょーは」
コンラートらしいといえばコンラートらしい。
不器用な所は今も昔も変わらない。
「・・・次は仕留める」
獅子は剣を握り直し、再びヨザックに襲いかかった。

ガインッ

ヨザックが素早く剣を構え、お互いの刃先がぶつかり合う。
「・・・・・・っ」
振動が獅子の傷に広がり、顔が歪んだ。
「失礼しますよー」
ヨザックの体重が剣を通して獅子へと伝わる。
そのまま獅子の身体は壁に押し付けられ、身動きが取れなくなった。
「あんた、何に怯えてる?」
ヨザックの言葉に獅子の眼は揺れる。
代役と同じ問い。
「何を恐れてるんだ?」
「おそ、れる・・・」
自分は何に怯えているのか。
自分は何を恐れているのか。
一体、何が怖いのか・・・。
「“コンラート”が」
うまく呼吸が出来ない。
身体が震える。
「“コンラート”が消えていく瞬間を、もう見たくない」
言葉にして初めて分かった。
何が怖いのか。
何を恐れているのか。
何に怯えているのか。
「またオレは“コンラート”を失うのか・・・?」
二十年前、コンラートを護れなかった。
今も、護れないかもしれない。
その恐怖だけが獅子にまとわりついている。
「オレはあんたに感謝してますよー」
ヨザックは獅子から身体を離す。
既に自力で立てない獅子はそのまま崩れていく。
「アルノルドの戦地で死ぬ気だったコンラートを助けてくれたでしょ」
ルッテンベルクの獅子と言われた男は、死を待っていた。
死を受け入れていた。
それが運命だ、と。
「あんたがコンラートと入れ代わったから死なずに済んだ」
「・・・・・・オレは、みんなを助けられなかった。“コンラート”が護りたかったものを、護れなかった」
コンラートを生かすことしか出来なかった。
あの時、助けられなかった命がコンラートに全てのし掛かると分かっていたのに。
「あんただけが背負うことないさ」
「・・・・・・・・・」
「もうオレ達は独りじゃない」
混血だからといって蔑まれることはない。
コンラートが命を懸けて護ったのだから。
「・・・そうか」
獅子は一言呟くと、静かに眼を閉じた。






「ユーリ!」
執務室からキョロキョロしながら出てくる有利にヴォルフラムは呆れながら声を掛けた。
「げっ・・・ヴォルフラム・・・・・・」
有利はヴォルフラムの姿を確認すると、目を泳がせる。
「グウェンの所に行ったんじゃなかったっけ?」
「お前が勝手な事をしないように見張っていろ、と兄上に言われたんだ」
「そ、そうだったんだぁ」
有利の行動は全てお見通し。
(おれってそんなに分かりやすい性格かな・・・)
ガクッと肩を落とし、うなだれる。
「僕が来たからには大人しく」
「大人しく出来る訳ないだろ!?」
「ユーリ」
「おれはまだちゃんと話してないのに、勝手に抜け出してさ・・・・・・黙って待ってたら今度こそコンラッドが戻って来なくなるだろ!?」
今、連れ戻さないと二度とコンラートには会えなくなる。
それだけは、嫌だ。
「だから頼むよ」
コンラートを探しにいかせてくれ。
「兄上に勝手な行動をさせるなと言われているんだ、許すわけないだろう」
キッパリと断り、有利の手首をギュッと掴む。
「ヴォルフっ!」
有利は自分の部屋に連れて行かれると思い抵抗するが、方向が違うことに気付く。
「あれ?」
「ヨザックがウェラー卿を発見したと報告があった」
しばらくしたら有利の耳にも入るだろう。
そうしたらこの魔王は我先に、と真っ先に青年のもとへ駆けつけるのは簡単に想像出来る。
「会いたいんだろ?」
「そりぁ、会いたいけど・・・良いのか?」
あれほど勝手に行動するな、と言っていたのに。
「一人で勝手に動くな、と言ったんだ」
二人で動く分には、構わない。
「ヴォルフ」
「お前はへなちょこだから、僕が見張っててやる」
(素直じゃない所はグウェンダルにそっくり)
密かに笑いながら有利はヴォルフラムの後に付いていった。





「グウェンダル!」
薄暗い通路の向こうで兵士に指示しているグウェンダルの姿が有利の眼に映った。
「・・・・・・何故お前が此処に居る?」
眉間にシワを寄せ、有利とヴォルフラムを見やり溜め息をつく。
「おれの事はどーでも良いから、コンラッドは!?」
有利はグウェンダルの眼力にビクビクしながらも、一番知りたい事を質問した。
「グリエが対峙したが捕まえられなかった」
「すいませんねぇ、へーか」
グウェンダルの後ろから、久しぶりに聞いた声が有利に投げかけられた。
「ヨザック!」
兵士達で隠れていたヨザックの下へ駆け寄ると、思わず目を逸らしたくなる程血で身体を染めていた。
「いやー、油断してました」
ヨザックは笑いながら答えたが、身体を壁に預け手当てを受ける姿はとても笑えない。
「心配しないで下さいよ。見た目より傷は浅いんで」
「そんな血だらけで言われても信じられないって!」
「本当に大丈夫ですよ。もう傷は塞がってますし」
右の二の腕を有利に見せ「ほらね」と笑顔で返す。
「・・・それは獅子がやったのか?」
ヨザックにここまでの傷を負わせるとしたら、あの凶暴な人格しかいない。
「違いますね」
有利の予想とは違う言葉が返ってきた。
「初めはその獅子という奴と一戦交えたんですが・・・・・・」
相手の身体に深い傷あったというハンデもあり、押さえ込むことが出来た。
しかし。
「大人しくなったと思ったら、グサグサッとやられちゃいました」
グリ江ちゃんビックリー、と相変わらずおどけている。
「どんなヤツだった!?」
おそらく人格が入れ替わったのだろう。
他の凶暴な人格と言えば、女史と呼ばれていた人格が真っ先に思い浮かんだ。
あとは一度だけ話した事のある、反抗期真っ最中の少年。
もしくは新しい人格かもしれない。
「あいつは自分の事、代役って言ってましたねぇ」
「代役!?」
コンラートであり、コンラートではない人格。
「なんで・・・・・・」
代役はあの人格の中で唯一有利の身体を心配し、ヨザックに剣を振るような凶暴な性格ではないと思っていた。
「あいつが一番容赦ないですよ、へーか」
昔も、今も。
ヨザックはそう言葉を繋いだ。
「ヨザックも・・・ヨザックもコンラッドが多重人格だって知ってたのか?」
「たいちょーとは腐れ縁ですからねぇ」
ルッテンベルク師団として共に戦う前からの仲。
そして一番コンラートの近くにいたのだから、気付いて当たり前なのかもしれない。
「どーして教えてくれなかったんだ!って顔してますよ」
「・・・どうして教えてくれなかったんだ」
有利なりに感情を抑えていたつもりだが、隠せなかった。
「たいちょーに・・・コンラートに言われたんですよ、黙っていてくれってね」

『疲れたら休むことにしたんだ』
『皆には何も言わないでくれ』
『俺一人で陛下の側で居られようになるまで・・・・・・』

「たいちょーってへーかと同じで頑固だから止めても聞かなくて」
全ては次期魔王の為に。
それだけを伝えてコンラートは、“コンラート”という人格はヨザックの前から消えた。
「こんなに長ーく休むとは思わなかったんですけどね」
「休む、か・・・」
あの男が言いそうな言葉だ、とグウェンダルは呟く。
「で、これからどーする?渋谷ー」
「む、村田っ!?」
いきなり現れた村田に思わず仰け反る。
心臓のドキドキが止まらない。
「どーせ渋谷のことだから、ウェラー卿を探しに行くんだろ?」
「当たり前じゃんか!」
このまま何も解決しないで終わらせたりはしない。
「だったら早速行こうか」
「行こうかって・・・村田、お前コンラッドが何処に居るか知ってんの!?」
「まーねー」
その前に、と村田は言葉を繋いだ。
「ちょこーっと調べたい事があるから寄り道するけどね」
「寄り道?」
一刻も早くコンラートの所へ行きたい。
「そんなの後で良いだろ」
「あの日の事、知りたいくないのか?」
あの日・・・。
有利と村田とコンラートが近くの街へ行った日。
三人が賊に襲われた日。
コンラートが、コンラートの中の人格達が全てを消し去ろうとした日。

有利がコンラートを拒絶した日。

「・・・・・・!やっぱりお前何か知ってッ」
有利は村田の両肩を強く掴み詰め寄った。
「それを調べに行くんだってば」
掴まれた肩の痛みに顔を歪めながら村田は言葉を返した。
「そろそろ終止符を打たないとね」




この狂劇に──。







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いつもよりも赤い夕日が血盟城を包んでいった。
血盟城の外から入る光は次第に弱まり、夜に近づいていく。
剣を自分の腹に刺した青年は意識を失い、グウェンダルによって治療室に運ばれていた。
「なんで・・・なんでコンラッドの身体を傷つけるんだよっ!」
有利は拳を壁に力の限り叩きつける。
「落ちつきなよ、渋谷」
「おかしいだろ?コンラッドを護るって言っておきながら、自分達でコンラッドを傷つけるなんてさぁっ!」
あの日もそうだった。
獅子と呼ばれる人格も自ら腕を斬りつけている。
「陛下、お静かに」
青年の治療をしていたギーゼラが部屋から出てきた。
「コンラッドの傷は!?」
「少し深く刺したようですが、命に別状ありません」
ギーゼラは血だらけのガーゼを抱えながら優しく笑う。
「ウェラー卿は起きてるかな?」
「ええ」
「じゃあ、おれ会ってくるっ」
そう言って有利は扉に手を掛ける。
「ちょっと、渋谷・・・」
「あ、他の皆には入って来ないよーに伝えといて」
「あのねぇ・・・・・・朝の事忘れた?」
青年が暴れた原因は少なからず有利にある。
凶暴な人格が出てきたら迷わず襲って来るだろう。
「おれに原因があるなら、やっぱりおれが直接会わないとっ」
ドアノブをギュッと握りしめ、部屋に入っていく。
パタンと大きめな音を立てながら扉を閉めたが、ベッドに横になっている青年はピクリとも動かない。
ゆっくり近付いていくと青年には首枷だけではなく、手足にも再び枷がかけられている事に気付いた。
本来、青年の治療は独房内で行う予定だったが、グウェンダルが説明もなく独房から別の部屋に移動させたいと言った為、この部屋で治療をした。
ただ、拘束無しでは危険な為枷を増やしたらしい。
「・・・・・・コンラッド」
この青年をコンラッドと認めたくなかったが、だからと言って別の呼び方が見つからなかった。
「・・・・・・」
青年はチラッと有利を見ると視線を天井に移す。
独房に居た時の人格とは違う雰囲気が出ている。
「さっきのオネーサンじゃ、ないよな」
「・・・・・・そう思うなら、そうじゃない?」
声質は少し幼く、トゲがある。
反抗期の少年と似ている。
「怪我、大丈夫か?」
とりあえず怪我の具合を聞くが、青年は「・・・・・・痛い」と無表情で答えるだけで、有利の方に顔を向けない。
その反応に少しイラつき「そーだよねー、お腹刺しちゃったからねー」と、ちょっとおちゃらけた感じで話してみるが、青年は無反応。
「なんで刺したんだよっ」
「・・・・・・」
「コンラッドを護るんじゃなかったのか?」
「・・・・・・」
「それともコンラッドの意志?」
「・・・・・・」
何を聞いても無反応。
会話が成り立たない。
この調子だと前に進まない。
どうしたものか、と考えていると青年が有利の方に顔を向けた。
「・・・・・・全ては"コンラート"の意志じゃない」
はっきりとそう言った。
「でもこうしないと“コンラート”が壊れるから•••また壊れてしまうから」
「その割には身体を大分傷つけてるじゃんっ」
「・・・・・・」
(そこはノーコメントなワケですか)
その後質問には一切答えず、数十分が過ぎた。
(おーてーあーげー)
やはり会話が成立しない。
ふざけても真面目でもこの青年はうんともすんとも言わなかった。
この反抗期の人格では埒があかない為、有利は村田を呼ぼうと椅子から立った瞬間「・・・・・・待って」と言う言葉が耳に入った。
青年に目を向けるが、有利と目を合わす事なく、天井を見つめている。
「代役が出たら“コンラート”はどうなる・・・・・・?」
(・・・・・・中に居るヒトと話してるのか?)
「だから待っ」
言葉が不自然に途切れた。
数秒ほど部屋全体が空白となる。
「・・・・・・おーい?」
ほんの数秒とはいえ、魂が抜けたような虚無が青年を覆ったので心配になった。


「すみません、陛下」


見慣れた笑顔を有利に向ける。
青年はゆっくり起き上がり「痛タタタ・・・・・・あの二人は容赦ないな」と呟いた。
「色々ご迷惑を掛けてしまって・・・・・・賊に襲われた時、お怪我はありませんでしたか?」
「え?ああ、おれは無傷。村田は腹筋とかしない限り傷は開かないし、すぐ治るってさ」
「それは良かった」
普通に質問されたので有利も普通に答えてしまった。
そうじゃない、と頭を振り「そんなことより・・・・・・えーと、コンラッド?」と聞いてみる。
今、目の前に居る青年の表情は、魔王に過保護で人当たりの良い性格の割になかなか捉えどころがない名付け親と同じだった。
「そう、ですね・・・陛下達にとって俺はコンラートです」
「なんだよそれ・・・・・・ったく心配させやがって」
呆れながら溜め息をつく。
ようやくコンラートに会えたと有利は胸を撫で下ろす。
「あんたが居ない間、すごい大変だったんだぞっ!」
「すみません」
笑みを絶やさずに謝る。
(・・・・・・あれ?)
有利の中に疑問が残った。
自分達にとってはこの青年がコンラートだ、と言うのはどういうことだろう?
「なぁ、あんたはコンラッドだろ?おれの名付け親で、似てない魔族三兄弟の次男坊で、ルッテンベルクの獅子って呼ばれててたウェラー卿コンラートだよな?」
「・・・・・・もし、俺が“コンラート”ではないと言ったらどうしますか」
「いや、あんたはコンラッドだっ」
間違うはずがない。
今までの人格はコンラートと全く別の性格であり、性別や年齢も違っていた。
しかし、この青年はあまりにもコンラートと似すぎている。
クリソツだ。
・・・・・・ウェラー卿コンラート、本人だ。
しかし、青年の瞳はそれを否定しているように見える。
「コン、ラッド?」
「俺は“コンラート”の代役なんです」
優しいこの声が、懐かしい。
「この身体の持ち主である“コンラート”は俺じゃありません」
「でもっ・・・」
「陛下が初めてウェラー卿コンラートという男と会った時には、既に俺が“コンラート”の代わりとなって表に出ていたんです」
だから、有利にとってコンラートはこの青年なのだ。
「じゃあ本当のコンラッドは?」
「何年も・・・いや、もう何十年も表に出ていません。“コンラート”の心は随分前に壊れてしまいましたから」
「コンラッドの心が、壊れた?」
「正確に言えば、壊れかけたんです。彼は希望を失い、意志を捨て、全てを諦めました。」
「なん」
なんで、と有利は聞こうしたが途中で口を噤む。
有利と出会う前、コンラートには辛い過去がある。
「俺達は“コンラート”を此処に留める為に、“コンラート”をこれ以上哀しませないように護ってきました」
幸せな未来を信じて。
いつか“コンラート”が笑って過ごせることを願って。
そして長い時間が過ぎ、“コンラート”は有利の魂を地球に運んだ時、ほんの少しだが生きる希望を持った。
「陛下と間接的にですが、一緒に過ごしていくうちに回復していったんです」
しかし、悲劇は起きた。
「たしか陛下は覚えていないんですよね?あの日のことを」
「・・・・・・おれ達は急いで城に戻ったんだよな」
そこまでは覚えている。
「そうです。そして城へ戻る途中、森の中で賊に襲われました。暗闇に紛れて四方から矢が飛び交い、森から出るのが難しかった」
「・・・・・・あ」
有利の頭の中に何かが過る。
賊に襲われて、誰かが怪我をしたはずだ。
「・・・・・・村田の脇腹に矢が刺さったんだ」
「陛下は魔力を使い、飛び交う矢と直接襲ってくる賊を吹き飛ばし道を作ってくれました。そしてあなたに言ったんです」
『先に血盟城へ向かって下さい』
『猊下は俺が連れて行きますので先に』
『無理に動かすと傷が開いて・・・・・・』
「陛下を促そうと手を差し伸べた時、陛下は」
「おれは、その手を・・・・・・払った」
「・・・・・・その手は代役の俺の手ではなく、“コンラート”自身の手だったんです」
あの時、ほとんど表に出てこなかったコンラートが自ら表に出て戦っていた。
しかし有利はコンラートの手を払い、罵倒した。

『おれに触るな!』

『あんたが居るのになんで村田がっ』

『村田はおれが連れて行く!』


『コンラッドなんか、もういらない』



「おれは」
最低最悪な言葉をコンラートに投げてしまった。
「俺達は後悔しています」
「こう、かい?」
「あの時あの瞬間、俺が表に出ていれば“コンラート”は傷つかなかった・・・・・・いや、誰でもよかったんだ。獅子でも女史でも少年でも、とにかく“コンラート”以外だったら・・・」
こんなことにはならなかったのに。
「俺は、俺だけは誰も信じてはいけなかった」
裏切られ、拒絶され、蔑まれる可能性があるというのに。
それなのに信じてしまった。
有利はコンラートを突き放さない、と。
「そして彼らは、特に獅子は“コンラート”の心を再び壊した陛下のことを許せず、全てを消し去ろうとしました」
剣を振り、辛い現実を排除しようとした。
「でもそれは、コンラッドの意志じゃないんだろ?」
別の人格が言っていた。
全てはコンラートの意志ではない、と。
「もし“コンラート”の意志だとしたら、俺達は躊躇いなく全て消し去ってますよ」
青年は血が出るほど拳を握る。
「“コンラート”が望んでないのは皆分かっています。ただ、このままだと“コンラート”は本当に壊れてしまう・・・だから俺達を此処から出して下さい。そして、二度とコンラートの前に現れないで下さい」
この言葉が有利の心臓を締め付ける。
「おれ・・・・・・ごめっ」
うまく言葉が発せられない。
何故あんな事を言ったのか。
何故拒絶してしまったのか。
何故その事を忘れてしまったのか。
「“コンラート”を陛下のお側にいさせたくありません」
青年の顔から笑顔が消えている。
「“コンラート”を陛下に触れさせたくありません」
「・・・・・・っ」
「俺達はあなたをもう、信じない」
コンラートの姿、コンラートの声、コンラートの瞳。
有利は青年に抱きつき何度もごめん、と謝り続けた。
「おれの所為でっ、コンラッドが・・・・・・あんた達が護ってきたコンラッドを、傷つけてっ」
有利の涙が青年の服に染み込んでいく。
その姿を見つめる青年は右腕を持ち上げ、そっと有利の頭に手を置いた。

「ユーリの所為ではありません」
心地よい声が耳に入る。
「俺が弱かったんです」

「・・・・・・っ」
有利は顔を上げ、青年を見ると一瞬だけ青年の表情が変わった。
「コン・・・ッ」
コンラッド、と言葉を発する前に青年はいつものコンラートと同じ表情になっていた。
「・・・また繰り返すだけだ」
青年は眉を顰め呟いた。
「此処に居てはいけない」
青年は魔力で拘束され、腹に深い傷を負った身体でベッドから出ようと有利を押しのける。
「待てよっ・・・さっきの、さっきの奴がコンラッドなんだろ!?だったらおれ、謝ら」
「今のあなたを“コンラート”に会わせるわけにはいけません」
拒絶した者を近付かせない。
「あなただけではない。グウェンダルもヴォルフラムもギュンターも・・・“コンラート”を見捨てた全ての者は俺達の敵です」
排除しないのはコンラートがそれを望まず、その意志が強すぎるから出来ないだけあり、本当はいつでも剣を抜ける。
「だから、どうか俺達を・・・“コンラート”を解放して下さい」
コンラートに生きる希望を与えるまで。
コンラートが生きる意志を持てるまで。
「・・・・・・嫌だ」
有利は身体を震わせ、喉の奥から無理矢理声を出す。
「おれはコンラッドと離れたくない」
己の所為でこうなった事は分かっている。
原因は全て自分だということは分かっている。
しかし・・・・・・。
「ちゃんと謝ってないのに、コンラッドとまだ話してないのにさっ、二度と会わないなんて約束出来るはずないじゃん!」
「陛下」
「おれがっ、おれ達がコンラッドを傷つけたなら、おれ達が謝らないとっ」
「あなた達に“コンラート”は」
「自分勝手だと思う。自己チューもいいトコロだよな・・・でもおれはコンラッドと・・・・・・コンラッドだけじゃなくて、他の"みんな"と話して、謝って、想いを伝えたい」
自分にはコンラートが必要だと。
側に居て欲しい、と。
護って欲しい、と。
涙を流し、嗚咽を堪えながら有利は青年の眼を見る。
決して逸らさないように。
そして青年はゆっくりと口を開く。
「・・・・・・俺達は“コンラート”の裏の感情なんです」
例えば、独房で怯えながら大賢者と対話した人格は、幼い時のコンラートが必死に耐えていた裏の感情。
例えば、質問しても殆ど答えなかった反抗期な人格は、少年時代のコンラートが必死に抑えていた裏の感情。
「俺達が生まれた理由は必ずあります。そして目的が果たせれば俺達は消えます」
"小人"と呼ばれていた人格は大賢者に頭を撫でてもらった瞬間、消えた。
甘えたい時期に甘えられず、何をしても褒められなかったコンラートが望んだ事を村田は"小人"にした。
目的は果たされた。
「陛下は、陛下達は“コンラート”と向き合う事はできますか?」
不幸と言うには重すぎるくらいのものを背負ってきたコンラートと向き合うことは出来るのか。
「全ての感情を受け止めることは出来ますか?」
数十年間、何もかも溜めてきた感情を全てコンラートのものとして受け止めることが出来るのか。
「“コンラート”に手を差しのべることが出来ますか?」
壊れた、壊した、壊された心の奥にいるコンラートに温かい手を差しのべることが出来るのか。

「・・・・・・出来る」








「──ってな感じでコンラッドの代役って奴が話してたんだけどさぁ」
グウェンダルの執務室にて、昨夜青年と話した事を伝える。
「僕達は今までウェラー卿の代役を“コンラート”だと思ってたワケね」
村田は手の込んだことを、と呟き溜め息をつく。
主人格ではない者同士が入れ代わるなら、今回のように各人格が主張しない限り気付くことは難しい。
「結局、どうすればいいんだ?」
ヴォルフラムの問いに有利は少し考え「平和的な話し合いで•••」と曖昧な答えを出す。
「話し合いって言っても、ウェラー卿の中にいる人格は凶暴だからすんなり解決出来ないと思うけどねぇ」
「なんだよ村田、約束したんだからしばらく大人しくしてるって」
「それは代役ってゆー人格が言ったんだろ?他の人格がどうかは分からないじゃないか」
村田に指摘され言葉に詰まる。
「おそらく今まで代役が基本表に出ていたんだと思うけど、他の人格をコントロール出来ているようには見えないし、信用度は低いね」
「そうかもしんないけどっ」
「あと、素直に本物のウェラー卿を返してくれるかが問題だよね」
仮に向こうが「ボクは本物のコンラートです」と言ったとしても信じて良いか判断出来ない。
何しろ、実際にコンラートと入れ代わり、誰にも気付かれずに生活していたのだから。
地球から帰還した時には雰囲気が変わりにくくなったとギュンターが言っていたが、その頃からコンラートと入れ代わっていたのだろう。
二十年近く騙していたのだから主演男優賞モノだ。
さらに、その話が本当ならば有利と村田は本物のコンラートには会った事がない、ということになる。
「えーと、そこは臨機応変に対応していこうぜっ」
「この、へなちょこが」
後先を考えない有利に執務室にいる全員が溜め息をついた。







グウェンダルはゆっくりドアを開ける。
部屋の中に入るとベッドに横たわっている青年と目があった。
その目には見覚えがある。
"女史"と呼ばれる人格だ。
「近付いても大丈夫よ。この状態で動き回る趣味はないもの」
包帯だらけの身体。
枷で戒められている身体。
その姿が痛ましい。
「陛下から話を聞いたかしら?」
「・・・・・・ああ」
「なら話は早いわ」
青年は身体を起こす。
「単刀直入に言うけど、私が生まれたのはあなたが原因よ、フォンヴォルテール卿」
「・・・・・・」
すまない、と口を開きかけた時、青年は「謝るのはまだ早いわ」と言葉をかぶせた。
「あなたは“コンラート”の事を知らない・・・・・・知らな過ぎる」
そして、それを知ろうとしない。
知らないふりをする。
だから私はあなた達が嫌い、と冷たい言葉を投げつける。
「何故私が生まれたか分からないでしょ?」
「・・・・・・」
「何故私が生まれないといけなかったか分からないでしょ?」
「・・・・・・」
分からない。
百年も兄弟として過ごしてきたが、自分は何一つ弟の事を知らない。
「思い出しなさい、あなたの罪を」
「私の罪、だと?」
困惑するグウェンダルに青年は「そういえば私を此処に運んだのはあなたらしいわね」と、いきなり話を変えた。
「"コンラート"が折檻されていたと知って驚いた?」
「・・・・・・ああ」
本当に驚いた。
誰にも言わなかったコンラートと、全く気付かなかった自分に。
「“コンラート”は必死に隠していたわ、自分の立場を知っていたから」
「立場・・・」
たとえ魔王の息子だろうとも、人間の血が混ざっている下等な者。
決して対等ではなく、魔族と認められない。
弟が出来たということを聞き、同時に弟を蔑む言葉もグウェンダルの耳に入った。
そして、ようやく歩けるようになったばかりの幼いコンラートに浴びせられた言葉はどれも酷いものだった。
コンラートが成長すれば、周りの目は益々冷たくなっていく。
それでもコンラートは何も言わなかった。
それが当たり前だと言うように。
「立場を理解していたから“コンラート”は何も言わなかったわ」
それが例えどんなに耐えがたい仕打ちを受けたとしても。
「フォンヴォルテール卿、あなたが“コンラート”をベッドに運んだのは二回目ね」
青年はグウェンダルを何かに導きたいのか、ヒントを出すかのように話を変えていく。
「二回目?」
記憶を探る。
(あの時か・・・)
式典中に倒れたコンラートをグウェンダルが抱えて運んだのは、ヴォルフラムがコンラートの父親が人間だと知って間もない頃だった。
身体の不調を隠し続け、無理して、限界がきて、倒れた。
『大事な儀を中断させるとは・・・』
『下賤な血を引く者を参加させる事自体間違いだったのだ』
病人に対しても容赦ない雑言。
当時、周りの上級貴族達に嘗められないよう必死だったグウェンダルは、何も言えずただ噛み締めることしか出来なかった。
(・・・・・・そうか・・・)
グウェンダルは何故この"女史"と呼ばれる人格が生まれたのか分かった。
やっと分かった。
『せめて女だったら下級貴族にでも嫁がせる事が出来るというのに』
『子を孕まぬ混血か・・・』
『利用価値もない』
貴族達がベッドで寝ているコンラートに言い放った言葉。
そして貴族達は「そう思うだろうフォンヴォルテール卿?」とグウェンダルに同意を求めた。
グウェンダルは一言「はい」と同意した。
同意してしまった。
(コンラートは聞いていたのか・・・・・・)
あの貴族の言葉を。
そして、同意した兄の言葉を。
「ようやく思い出したようね」
グウェンダルの頭の中にコンラートの声にならない想いが響くように感じた。
せめて女だったら、こんなに辛い思いをしなくてもすんだのに。
子を生める身体だったら、もっと明るい未来があったのかもしれないのに。
利用価値があったら、兄に見捨てられることなく、弟に拒絶されなかったかもしれないのに。
「あなたに分かる?私を作り出した“コンラート”の気持ちが」
貴族の言葉に同意した兄に絶望しながら、せめて自分が女だったら•••と願ったコンラート。
何も知らず、
何も見ず、
知ろうとせず、
見ようとせず、
手を差しのべようとせず、
見捨ててしまった。
言わなければ、言ってあげなければいけなかった事があるにもかかわらず、言葉が出てこない。
「あなたが“コンラート”を弟と思うなら、これ以上“コンラート”に関わらないで」
青年はグウェンダルから視線を外した。
「あなた達がいなくなれば、あなた達の事を忘れれば“コンラート”は傷つかずにすむの」
(全てはコンラートを護る為、か・・・)
それがコンラートの為ならば、青年の言葉を受け入れよう。
「私を殺してコンラートの傷が癒えるのなら、私を殺せ」
腰に下げていた剣を青年に差し出した。
「コンラートを護れなかったのは・・・いや、護らなかったのは私の罪だ」
罪は償わなければいけない。
青年は剣を受け取り、ベッドから出る。
「殺してはいけないって代役に言われていたけど、あなたがそれを望むなら」
剣を持つ手に力を入れ、心臓を的に構えた。
「殺すわ」
青年の足が前に踏み込んだのを確認し、グウェンダルは静かに目を閉じた。
グウェンダルは背中に痛みを感じた。
おそらく青年が床に押し倒したからだろう。
しかし、予想していた痛みが無い。
目を開けると青年の顔が目の前にあった。
「・・・・・・何故、止めるのよ・・・」
青年は荒い息で身体を震わせながら呟く。
青年の声はグウェンダルではない、他の者に対して発してした。
「・・・・・・あなたが一番、許せないはずでしょう・・・」
剣はグウェンダルの身体から逸れて、床に突き刺さっていた。
「殺さ、ないのか?」
「殺したいわよ。殺したいに決まっているでしょう」
青年の声は微かに弱くなっている。
「あれだけの事をされて、何故・・・・・・」
青年は剣から手を離し、拳をつくるが、ぶつけられない怒りだけが交錯する。
「すまない」
そう言ってグウェンダルは青年を自分の方に引き寄せ、抱きしめた。
「・・・・・・っ」
突然抱き寄せられた青年は驚きの余り、抵抗することすら出来なかった。
「何年も何十年も辛い思いをさせてしまった」
「離しなさい」
グウェンダルの腕から逃れようと身を捩るが振り切ることが出来ない。
「私はコンラートを護ってやれなかった」
「・・・・・・離して」
「抱きしめてやることが出来なかった」
その言葉を聞いて青年は抵抗を止めた。
「“コンラート”は、あなたに認められたかった」
厳格で、しかし不器用な優しさを持つ兄に。
「“コンラート”は、あなたに見捨てられたくなかった」
だから全てを隠した。
「独りは、嫌だった」
苦しみと悲しみに耐えられないから。
「・・・・・・お前は私を兄と認めないと言ったな」
グウェンダルは優しい口調で言葉を繋ぐ。
「ならば兄と認められるまで生きていく」
「何を、言っているの?」
「この不甲斐ない私を、お前が認めるまで何年でも何十年でも待ち続ける」
コンラートがそうだったように。
コンラートの兄だと言えるまで百年近くかかった。
長い間待たせたのだから、残りの人生を全て掛けて待ち続けよう。
「しかし、それがコンラートの苦痛の元となるのなら、お前が私を殺せ」
コンラートではなく、他の人格ではない、目の前に居る"女史"に語り掛ける。
グウェンダルからは青年の顔は見えないが、服を通して瞳を濡らしているのはわかった。
「此処には“コンラート”を必要としている人はいる?」
「・・・・・・ああ」
「此処には“コンラート”を護ってくれる人はいる?」
「ああ」
青年はグウェンダルの服を握りしめ、恐る恐る声に出す。
「此処には“コンラート”の居場所はある?」
「当たり前だ」

魔王の隣。

どんな上級貴族だろうと、どんな強い魔力の持ち主だろうと、決して手に入れることが出来ない、絶対領域。
コンラートだけが許された、場所。
コンラートだからこそ許された、場所。
「コンラートはもう、独りではない」
「・・・・・・あ」
青年が口を開いた瞬間、グウェンダルを突き離し「避けて!」と叫んだ。
その声でグウェンダルは咄嗟に左に身体を反転させた。
「・・・・・・っ!」
態勢を立て直し、青年の方に視線を移す。
「オレに、触るな」
青年は剣を左手に持ち、狂気に満ちた目で睨んでいる。
「オレはもう騙されない」
言い聞かせるように何度も呟く。
「裏切られるだけだ•••誰も信用するな」
枷の所為で身体に相当な負荷がかかっているにも係わらず、剣を振り回し、近付くことが出来ない。
青年の動きは早くないものの、押さえ込めるほど鈍くはない。
「くっ・・・・・・!」
グウェンダルの右肩に剣が掠り、隙を作った瞬間、青年は部屋から抜け出してしまった。
舌打ちをしながら廊下に出るが、既に青年の姿は見えない。
一刻も早く青年を捕らえるよう兵士に指示をした。
「兄上っ」
後方からヴォルフラムの声が聞こえ、顔だけ振り向く。
「奴が逃げ出したというのは本当ですか!?」
末弟の問いに「ああ」とだけ答えた。
「お前は陛下の側に居ろ」
「しかし!」
「小僧の事だ、いつものように無茶をするだろう。あれを止めるはヴォルフラム、お前の役目だ」
諫め役だった魔王の護衛が、今はいない。
「・・・・・・分かりました」
ヴォルフラムは何か言いたげだったが、言葉にすることなく有利の下へ向かった。
(私は本当に至らぬ兄だ)
心配するな、と一言伝える事も出来ない。
後悔だけが残っていく。
「閣下、傷の手当てを」
ヴォルフラムが去った後、兵士数名とギュンターがグウェンダルのもとへ近付いてきた。
「掠っただけだ。大事ない」
右肩に痛みは感じない。
見た目より傷は浅いだろう。
「お前達は城の出入り口を固めろ」
それだけ言うと兵士は一礼し、その場を離れた。
「グウェンダル」
「・・・・・・このまま奴を此処に留める事が良策だと思うか?」
有利と村田はあの日何が起きた詳しく話さないが、もしあの青年が言っていたように拒絶されたのなら、此処に留めるのは残酷というものだ。
「このまま城から出してしまった方がコンラートの為になるのではないか?」
「それは違います」
ギュンターはグウェンダルを否定した。
「何が起きたのか分かりませんが、決して陛下がコンラートを拒絶するなんてことはありません」
予想ではなく、絶対。
「せめてコンラートに・・・いえ、あの人格達に、コンラートにとって陛下がどれほど大切か分かってもらえるまでは」
城から出してはいけない。
「・・・・・・そうか」
結局、自分は何もしてやれない。
それが罪の証。
護れなかった、
護らなかった、
罰なのかもしれない。
「私達はコンラートの全てを受け入れていかなければなりません」
グウェンダルの気持ちを感じとったのか、ギュンターは視線を窓の外に移しながら言葉を繋いだ。
「私達が出来る事は、それだけなのです」






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いつもよりも赤い夕日が血盟城を包んでいった。
爽やかな朝日が窓から差し込み、村田は微睡みから覚醒する。
「おはよう、渋谷・・・なんで泣きそうな顔してんのさ?」
「だって・・・」
鼻水と涙がボタボタ布団に流れ落ちる。
ギュンギュン状態の有利に村田は若干引く。
「一生起きないかもって・・・」
「オーバーだなぁ、渋谷は。寝不足くらいで死ぬはずないって」

・・・・・・。


寝不足?
「ほら、昨日って朝早く城を出ただろう?あの時僕、二時間くらいしか寝てなかったから眠くて眠くて」
アハハーと笑う村田に「おれの涙返せっ」と言い寄る。
ギーゼラが言うには、傷自体はそれほど深くなかったのだが、有利を引きずりながら走った為失血が多かったらしい。
「僕はヘーキだから」
「・・・うん」
村田の布団に顔を埋める有利の頭をポンポンと叩く。
「あぁ、そーいえばウェラー卿は?あの時賊から逃げるのに必死だったから余裕なかったんだけど」
その言葉に反応し、有利は村田の肩を揺さぶる。
「あの日何が起きたか知ってるか!?」
「知ってるも何も・・・」
一旦言葉を切る。
「もしかして、覚えてない?」
コクンと頷く有利を見つめ、目を細める。
「ウェラー卿は今何処に?」
その質問に対し、一瞬言葉が詰まる。
「今は地下の独房にいる」
その理由を分かる範囲で伝えると、村田は「なるほどね」と何故か納得していた。
「直接会ってみないと解らないけど、おそらくウェラー卿は多重人格ってやつだね」
しかもかなりの人格が入り交じっている、と言葉を繋げる。
「ここで考えても先に進まない」
傷が完全に癒えてない村田を慌てて有利は押さえる。
「まだ寝てろって」
「これはね、結構危険な状態なんだよ。急がないと取り返しのつかないことになる」
眼鏡を掛け、有利を押し退ける。
「なあ、おれが一体何したんだよ!」
何があったかこの眼鏡は教えてくれない。
そして何かを知っているグウェンダルやギュンターも口を噤んでいる。
「全てが渋谷の所為ってワケじゃないさ。ただ、タイミングが悪かったってだけ」
脇腹を押さえながら村田は立ち上がり、有利の肩に手を置く。
「いつか直面する問題だとは思ったけど、まさかこんなオオゴトになるとは•••僕もまだまだだねぇ」
そう言って部屋を出ていった。
「おい、村田っ」
有利の声は扉によって阻まれる。
「おれは」
どうすればいいのだろう・・・。







「やあ」
村田は至って普通の明るい挨拶を扉の向こうにいる青年にした。
「・・・あ・・・・・・」
か細い声をかろうじて出しているのを見ると、有利が説明していた昨日の人格ではないことが分かった。
よく見ると青年の首には首枷がはめられている。
(ここまでするとはね・・・)
本来強い魔力を抑制し、無効化する為の物だ。
魔力を持たない者にMAXの状態で使用すると負荷が相当かかる。
今の所、首枷から感じる魔力は微弱。
この人格が何もしなければ、少し動きにくい程度のものだろう。
青年は独房の隅で膝を抱え、包帯だらけの両手をぎゅっと握っていた。
包帯をしているにも拘わらず右手首だけは血が染み出している。
「その手、痛いでしょ」
青年は無言で頭を横に振る。
村田は頭を軽く掻きながら「中に入っても大丈夫かな?」と聞いてみた。
「・・・猊下、なら・・・・・・大丈夫・・・」
「それはよかった」
重々しい鍵と厚い扉を開け、ゆっくり部屋に入り、怖がらない距離を保ちながらドサッと座る。
おそらく、この人格はまだ幼い子供だろう。
(こんな状況じゃなかったら指差して笑ってるんだけどなぁ)
ルッテンベルクの獅子と言われた青年が部屋の隅で膝を抱えながらビクビクしてる姿はぶっちゃけ、見物だ。
「なーんて言ってる場合じゃないんだよね・・・・・・さてと、キミはいつからその中に居たんだい?」
「ボクが生まれたのはずっと前。でも表に出たのは初めて・・・」
「じゃあなんで今日は出てきたの?」
「みんなが『コンラート』を守ってるから」
青年は俯きながら言葉を発する。
「傷付いてる『コンラート』を守ってるから、みんな表に出ることが出来なくてボクが代わりに・・・」
涙目の青年を村田は優しく頭を撫でる。
「よく頑張ったね」
「・・・うん」
初めて青年はニコリと笑った。
これで警戒心も解け、変に怯えることはないはず。
質問を続けようと口を開きかけた瞬間。

「そこで何してる」

甲高い声が扉の向こうからもれてくる。
「げっ、ヴォルフラム!し、静かに!!」
慌てたような声はおそらく魔王・渋谷有利だろう。
有利が居ることは薄々感づいていた。
青年にはバレていなかったから放置してたが、これで完全にバレてしまった。
「ちょっと君達、静かにしてもらえる?怯えてるじゃないか」
せっかく打ち解けたのに振り出しに戻るはめになる。
しかし、金髪の彼はお構い無しに独房の扉を開け、入ってきた。
「怯える?コイツは兄上に剣を向けたんだぞ!」
八十歳過ぎの我が儘プーは相変わらずKYだった。
「こんな危険な奴、ウェラー卿な訳が無い!ぼくが成敗してやるっ」
「ちょっ、ヴォルフ落ち着けって!」
ヴォルフラムを有利が必死でなだめる。
「おれも認めたく無いけど・・・」
「だったら離せへなちょこ!」

「・・・・・・黙りなさい、フォンビーレフェルト卿」

先程までか細い声を発してした青年が、突然凛とした声に変わっていた。
どことなく艶やかな声質。
「あなたに“コンラート”の事を語ってほしくないわ」
「な、なんだとぉ!!」
「ヴォルフラム!」
「あ~はいはい、ここまで。君達ホント此処から出て行ってくれないかな?」
邪魔にしかならない。
色々質問して答えを導きたかったが、暴れてもらったら困る。
単刀直入に「キミ達の目的は?」と聞くことにした。
「私達は“コンラート”が“コンラート”である為に生まれてきたの。だから“コンラート”を傷つけた者を全て消すつもりだったけど・・・」
一旦言葉を切り、再び発する。
「この城から出してくれるだけで良いわ。そして今後“コンラート”に近付かないって約束して」
「・・・城から出てどうするつもりなんだよ」
有利らしくない、低いトーンで聞き返す。
「“コンラート”が傷つかない所で幸せに暮らすに決まってるじゃない・・・・・・。安心しなさい、“コンラート”に近付かなければ何もしないわ」
(近付かなければ、ねぇ・・・)
この人格は中々、手強い。
村田は眼鏡を押し上げる。
「残念だけど、それは出来ないね。なにしろ前科があるし」
「そう、だったら自力で出るしかないようね」
「貴様・・・っ!」
ヴォルフラムが腰の剣に手を掛けた瞬間、青年は村田の横を風のように通り過ぎ、後ろに居たヴォルフラムの首と剣の柄を掴み、押さえ込む。
「ぐっ・・・!」
「ヴォルフ!」
有利は咄嗟に手を差し伸べるが、虚しく空を掴む。
「それ以上近付かない方が良いわ」
ヴォルフラムから剣を奪い、首を掴んでいる手に力を込める。
「ぐっ・・・ぁ・・・」
グッと首に圧力がかかり、ヴォルフラムの意識が遠のきかけた時、
青年の手が急に離れた。
「げほっ・・・!」
ヴォルフラムは咳き込みながらその場に膝をつく。
「・・・あぁもう、彼らには手を出さない・・・・・・分かったから静かにして頂戴」
青年はそう呟き、村田と有利、そして騒ぎ駆けつけてきたグウェンダルとギュンターを見る。
奪った剣をヴォルフラムに向け「私達をこの城から出しなさい。そうしたら二度とあなた達に手は出さないし、此処へは戻らないと約束するわ」と言葉を投げた。
「・・・それはコンラートの意志なのか?」
グウェンダルが問うと「“コンラート”の意志なんてあなたには関係ないでしょ?」と冷たく返す。
「“コンラート”をあんな目に遭わせておきながら今になって心配するなんて・・・身勝手にも程があるわよ」
グウェンダルから目を離さず、ヴォルフラムの髪を掴む。
「一日だけ待つからそれまでに決めて。私達を解放するか、私達に殺されるか」
「分かった、分かったからヴォルフラムを」
「魔王陛下、こういう時は人質が居ないと交渉が成立しないの。まあ、人質はフォンビーレフォント卿じゃなくても良いけど」
残酷な笑顔。
コンラートとは明らかに違う笑顔。
「・・・・・・私が代わろう」
誰よりも先にグウェンダルが言葉を発した。
「兄弟愛ってやつかしら?美しいわね」
ヴォルフラムから手を離し、グウェンダルに剣を捨てこちらに来るよう指示をする。
「それでは陛下、ご返答をお待ちしております」
重厚なドアは静かに閉まった。







「君達のおかげで事態はどんどん深刻化してるよ」
執務室に移動して村田は開口一番に有利とヴォルフラムを責めた。
「ごめん・・・」
「まぁ、仕方ないけどね。一番凶暴な彼が出てこなかっただけマシだし」
ふう、と息を吐き「フォンクライスト卿」と村田はギュンターを呼んだ。
「いつから気付いていた?」
「・・・初めておかしいと気付いたのは士官学校で剣術を指導している時です。その後、度々雰囲気が変わることがありましたが、コンラートが地球から帰ってきた頃には以前ほど目立つことはなく・・・」
ギュンターはあぁ・・・、と声を漏らす。
「まさかこんな事になるなんて・・・」
村田とギュンターだけで話が進んでおり、ヴォルフラムは「何の話をしているんだ」と会話に入り込む。
「ウェラー卿の中に別の人格がいくつも存在しているんだよ。主人格である“コンラート”が自ら出てこないのか、抑え込まれているのか分からないけど、今は“コンラート”の代わりの人格が身体を支配している。渋谷がキレると上様になるのと似てる状態かなあ」
「なぁ村田、どうすれば良いんだ!?」
有利は村田に詰め寄る。
「方法は二つ。一つは要求通り彼を解放する。あの人格は嘘をつかないと思うから、僕達がウェラー卿に干渉しなければ何もしてこないさ」
一番手っ取り早い方法だが、何一つ解決はしない。
「もう一つは人格の統合、つまりウェラー卿の中にいる人格と話し合いをして、人格を一つにまとめちゃう」
「出来るのか?そんなこと・・・」
「ん~、無理だね」
はっきりと言い切った村田にユーリは思わずスッ転ぶ。
「多重人格って難しいんだよ。僕の記憶の中に精神科医がいたから知識はちょっとあるけど」
「知識があるなら何とか出来るだろっ?」
「知識だけでなんとかなるような問題じゃないんだって。なんていうか・・・サッカーのルールは知ってても上手く出来るかっていうのは別の話でしょ?」
あくまで知識があるだけ。
しかも、村田本人が得た知識ではなく、記憶の中の知識なのだから正直な話、お手上げだった。
「あ、おれがキレた時と同じなら、しばらくして勝手に戻ったりしない?」
「渋谷の場合は多重人格ってゆーより、眞王の魂が少ーし混ざっている感じだからまた別モノ。多重人格はもっとやっかいなんだよね」
「じゃあ、なんでほっといたんだよ!」
有利の目の前にいる大賢者はコンラートが多重人格だということを以前から知っている風だった。
ならばもっと早く治療なりしておけば事態はここまで悪化しなかったかもしれない。
「だから、下手に手を出して良い問題じゃないんだってば。それに、ウェラー卿も上手く隠しててさー、もしかしてってゆー程度の認識しかなかったし」
渋谷も気づかなかっただろ?と言われてしまえば返す言葉がない。
「なんにしても、フォンヴォルテール卿が人質となっている以上、余計な手出しは出来ないのが辛いトコロかな」





「何もしないとは言ったけど、少しでも私に近付いたら命はないものと思いなさい」
青年は独房の隅に座り、グウェンダルを剣の先がギリギリ届く所に座らせる。
首枷が気になるのか頻りに首筋を触っている。
先程の一件で枷から発せられる力を強くした為、相当な負荷が青年にかかっているはずだ。
「・・・・・・大丈夫か?」
青年の額にはうっすら汗が滲み出している
「あなたに心配なんてされたくないわ」
返ってきたのは無機質な声と冷たい瞳。
弟の体を使い、自分達に剣を向け、好き勝手に暴れている青年を見ていると怒りが募る。
「・・・私が心配しているのは貴様ではない。コンラートとコンラートの身体は大丈夫なのかと聞いている」
「あら、あなたの口からそんな言葉を聞けるなんて・・・・・・もしかして“コンラート”のこと本気で心配してるの?」
「当たり前だ」
弟なのだから、と言った瞬間、首枷で身体に負担がかかり思うように動かすことが出来ないはずの青年が、剣をグウェンダルの頬を掠らせ壁に突き刺した。
余りの早さにグウェンダルは避ける事も出来なかった。
青年は胸ぐらを掴み顔を寄せる。
「兄弟面しないで」
青年は静かに怒りをぶつける。
「もしあなたが“コンラート”の兄だと言うのなら・・・・・・何故私達を此処に閉じ込めたのかしら?」
「何故、だと・・・?」
血盟城に攻め込み、魔王を襲おうとしたのだから牢に入れるのは当たり前だ。
しかも、ウェラー卿コンラートを罪人として扱わないようにと牢ではなく独房に入れた。
それ以上の理由は、ない。
眉間にシワを寄せ、返答しないグウェンダルに青年は本当に驚いたのか、目を少し大きくした。
「あなた、何も知らないの?」
胸ぐらを掴んでいた左手を離し、壁に突き刺した剣を抜く。
「・・・・・・駄目よ、あなたが出たらこの男を殺してしまうでしょ?」
そう呟くと、青年は自分の右脇腹を剣で刺した。
「・・・・・・っ」
ズルッと剣を抜いて投げ捨てると、グウェンダルの方に倒れ込む。
「おいっ!?」
ボタボタと大量の血が床に流れ出ていく。
「知らないなら教えてあげるわ、フォンヴォルテール卿」
青年は腹の傷を押さえることなく、血だらけの右手をグウェンダルの頬に持っていく。
そして全ての感情を押し殺した声で口を開いた。

「“コンラート”はね、此処で上級貴族達に折檻されてたの」

「な、に・・・・・・?」
「彼らが言うには"教育"だったらしいけど。上王陛下とあなたが居ない時“コンラート”は此処に閉じ込められて、殴られて、蹴られて、蔑まされて」
青年の右手はグウェンダルの輪郭を滑らせ、血を残していく。
「“コンラート”はあなたにずっと助けを求めてた・・・・・・兄であるあなたに!」
ドンッと胸を叩きつけ顔を埋める。
「それなのに、あなたは護ってくれなかった。壊れかけた“コンラート”を見捨ててしまった」
だから代わりに新たな『人格』で己を護った。
独りでも生きていけるように。
独りにならないように。
「だから勘違いしないで・・・・・・あなたが、あなた達が今まで兄弟で居られたのは“コンラート”が兄弟であることをやめなかったから。“コンラート”があなた達の言葉を、どんな言葉でも全て受け止めたからなのよ」
グウェンダルは何も言えず、自分の胸に顔を埋めてる青年を見てるしか出来ない。
「でも私達は絶対にあなたを兄だとは認めない。フォンビーレフェルト卿を弟だとは思わない」

別にいいわよね?

あなた達が長い間してきた事と同じなのだから。





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「ユゥゥリィィィ!!」
血盟城全体に甲高いボーイソプラノの声が響き渡っていた。
「何事だ?こんな朝早くから大きな声を出して」
はた迷惑な、と呟きながらグウェンダルは騒音の元凶に行き着いた。
「ぼくが起きた時、ユーリが居なかったんですっ!」
ついでに大賢者・村田健と魔王側近・ウェラー卿コンラートの姿も見えない。
「婚約者のぼくを差し置いて、またどっかに行ったに違いありませんっ!!兄上、何か知りませんか!?」
「・・・知らん」
知るはずが、ない。
知っていたら行かせるはずがない。
ただでもグウェンダル自身が処理しなければならない政務があるというのに、余計な仕事まで回ってきてしまうのだから。
「許さない許さない許さない許さない、今日こそは絶ッ対許さないぞっ!」
ドタドタと足を鳴らしながらグウェンダルの視界から消えていく。
はぁ、と深い溜め息をつき自室に戻ろうと歩き出した時「陛下ぁぁぁぁ!」と叫ぶ声が自分に向かってきた。
「グウェンダルっ!!陛下は、陛下は何処に行ったのでしょうっ!?」
「引っ付くなっギュンター!」
ギュンターの流した汁という汁がグウェンダルの衣服に染み付いていく。
「・・・・・・」
眉間にシワを寄せ、肩を落とす。
五分だけで良いからこのはた迷惑コンビを消して欲しいと心から願った。
(一体何処へ行ったのだ)
全ての原因を作った主と従者は・・・。




「「「ハックシュ」」」
三人はほぼ同時にくしゃみをした。
「風邪かなぁ」
ズズッと鼻をすすり両腕をさする。
「渋谷が風邪なんて、ないない」
「・・・健康男児って意味で受け取っておくよ」
「少し肌寒くなってきましたからね。もし寒かったら言って下さい」
双黒を隠し、お忍びで城下町に向かっている眞魔王と大賢者にコンラートは柔らかく声を掛ける。
「コンラッドもちゃんと言えよ?」
この従者は自分の事になると何も語らないから釘を刺しとく。
「はいはい」
いつものように笑顔で応える。
「嘘くさっ」
「そんな事より、街が見えてきましたよ」
はぐらかされた感満載だった有利だが、街に着いたという事の方が心を占めた為「おぉ!」と目を輝かせ見事はぐらかされた。
これだから原宿は不利なんだよなぁ、と村田は溜め息をつく。
「やっと着いたーっ」
何度か来た事がある小さな街。
ただし今回は初めて自分の足、つまり徒歩でこの街へ来た。
「やっぱ自分の国は自分の足で踏みしめないとっ!」
ヒャホーと言いながら街まで走って行く。
「いつまでたっても子供だなぁ、渋谷は」
永遠の少年、という言葉がよく似合う。
「猊下はついていかないのですか?」
「僕が?」
それなりに成長し、大人と子供の境目で迷っている微妙なお年頃なのに?
「俺から見ればヴォルフラム以下はみんな子供です」
プー以下・・・。
「なかなか言うねぇ、ウェラー卿」
参りました、と両手を軽く挙げ有利の後を追う。
「渋谷ー、待てってばー」
その姿をクスッと笑いながらコンラートはゆっくり歩いて行く。


「なんか前よりも活気があるってゆーか、騒がしくない?」
前回来た時はもう少し落ち着いた街だった気がする。
「あれ、渋谷知ってて来たんじゃないの?」
「ほへ?」
なんにも知りませんが。
「僕達の国で例えると、今日はこの街の独立記念日って感じかな」
魔族と人間の混血が集まって生活する小さな街が平和なった記念日。
人間に虐げられ、魔族に見捨てられた混血が普通に暮らせるようになった大事な日。
「そんな大袈裟なものではありませんよ。祭りみたいなものですから」
「あ、ホントだ。出店とかあるじゃん」
昼前だからか殆ど閉まっているが、ポツポツと店が並んでいる。
「コンラッドは毎年参加してたり?」
「いえ、ここ数年は来ていませんでした」
色々ありましたから、とやんわり否定する。
「そうだった・・・」
数ヶ月前までシマロンやらなんやらでそれどころではなかった。
「まぁ、やっと眞魔国に平和が戻ったことだし、羽を伸ばしちゃていいんじゃない?」
「村田、お前良いコト言った!」
村田の両肩を強めに数回叩き、コンラートに視線を移す。
「そーゆーコトだから楽しもうぜっ」
しかもラッキーな事に今日は我が儘プーも暑苦しいギュンギュンも居ない。
「そう、ですね」
頷くと有利は村田とコンラートの手を引きながら街へ入っていった。



「グレタも連れて来てあげれば良かったなぁ」
辺りは薄暗くなり始め、夕方というよりは夜に近い時刻になっていた。
「お土産買ったんだし、いいんでない?」
どこで買ったのか、村田の頭にはなんとも言い難いお面。
きっちり満喫している。
「陛下、猊下」
二人は振り向くとコンラートが「そろそろ宿を手配してきますね」と伝えた。
「あ、泊まるの?」
「今日は馬が無いですから。歩いて帰るとなると時間がかかります」
「あ~またヴォルフとギュンターに付きまとわれるぅぅぅ」
想像しただけでウルサイ。
有利は頭を抱えしゃがみ込む。
「追い討ちかけるようで申し訳ないけど、フォンヴォルテール卿の事忘れてるよ」
全ての政務と面倒なコンビを押し付けてきたのだ。
眉間のシワは果たしてどうなっているのか、想像したくない。
「コンラッド!今日中になんとか帰れない!?」
「・・・少し早く歩けますか?」
必死の形相で迫られ、コンラートは危険だから駄目だとは言えなかった。
本来なら馬を用意したかったが、買ったばかりの馬を双黒の少年達が乗りこなすのは無理である。
小さな街では馬車がない。
ただ、完全に夜を迎える前に森を抜ければ危険度は低くなる。
「荷物は俺が持ちます。急いで帰りましょう」





魔王・渋谷有利はベッドの上に居た。
見慣れた天井、いい加減慣れたフカフカの布団。
(あれ?)
何故寝ているのだろう。
「あれ?」
今度は声に出してみた。
それでも思い出せない。
とりあえずベッドから出ると、いつもの学ランではなことに気付いた。
いつものパジャマだった。
「うん、ココに戻って来る予定だったけどさー」
血盟城に帰る為、街を出たのは覚えている。
そして気付けばパジャマを着て寝ていた。
間がすっぽり抜けている。
「若年性アルツハイマー?」
泣く子も黙る魔王様がまさかのアルツハイマー・・・。
悲しすぎるっ。
「村田かコンラッドに聞いてみるか」
パジャマのまま部屋を出ると、いつもなら廊下を右往左往している兵士や世話係の気配すらない。
「おーい誰か居ないかーい」
ただでも広い城が余計広く感じる。
「みんなでかくれんぼでもしてんのか?」
トボトボ歩いていると、やけに明るい光が何度も窓から差し込む事に違和感を感じ、外を眺めてみた。
「花火?」
よく耳を澄ませてみれば歓声らしき音も聴こえる。
「・・・違う?」
光は空ではなく地上から発せられ、歓声のような音は段々近付いてくる。
「・・・・・・!」

戦だ。

数年前まで何度も耳にした音。
廊下を走り、城の外に出ようとすると「ユーリ!」と聞き慣れた声が耳に入る。
「ヴォルフ、何があったんだよ!?」
剣を構え、いつになく真剣なヴォルフラム。
有利の額に嫌な汗が流れる。
「今は説明している暇はない。お前は城の中に居ろ!」
「賊か?もしかして人間が襲ってきたのか!?」
和解したはずなのに。
沢山の犠牲を払って和解したはずなのに。
「・・・違う」
ヴォルフラムの声が震えている。
「敵は・・・」
てきは。


「ウェラー卿コンラートだ」


聞き間違いだ。
「何言ってんだよヴォルフラム」
そんなはず、ない。
そんなはず、あるわけない。
「伝達ミスだ・・・伝言ゲームみたいにどっかで変な風に伝わったんだっ!おれが確かめてくる!」
「待てユーリ!」
有利はヴォルフラムを振り切って戦いの中心に向かって行った。





「此処は私が食い止める!他の者は城の前を固めろ!!」
グウェンダルの指示に兵士達は従い、一斉に引いていく。
ここで時間を稼がなければあの男は城に乗り込んできてしまう。
(どこで何が狂った?)
始めは賊が敵だったはず。
大賢者が気を失った魔王を引きずりながら賊が攻めてきたと城に駆け込んできた。
大賢者は全身血まみれでその場に倒れ、魔王は傷こそ無かったものの目覚める気配はない。
何が起こったのかは分からないが偵察に行かせた兵士達によると、コンラートによって賊は殆ど息絶えていたらしい。
本来ならこの時点で全て終わっているはずだったが、大量の返り血を浴びたコンラートは、血盟城を目指して攻めてきた。
「コンラート」
グウェンダルは今、目の前にいる弟の名を呼ぶ。
「こんばんは」
コンラートの声。
コンラートの姿。
この青年が偽者であってほしい。
「そして、さよなら」
スッと姿勢を低くし走り込んでくる青年にグウェンダルは剣を構え衝撃に備える。

ガキンッ

コンラートの持つ剣は血のりがこびり付いて既に使い物にならない状態だったが、それでもここまで攻めてきた。
力で押し返し、間合いを取る。
(何故だ・・・?)
何故、弟は左手で剣を持っている?
過去に一度も左で構えた事はない。
「貴様、誰だ?」
「誰だ、か・・・」
持っていた剣を右手首に当て、ザシュッと滑らせる。
「・・・・・・!?」
ボタボタと大量の血がコンラートの手首から流れ出る。
「オレは“コンラート”を護る獅子」
コンラートの声。
コンラートの姿。
ただ一つ違うのは、今自分に向けている殺意に満ちた笑顔だけ。
「捕らえねぇのか?その為に此処にいるんだろう?」
その言葉に剣を握る手に力が入る。
「はぁっ!」
グウェンダルは血まみれで笑うコンラートに走り込み、剣を交えた瞬間足を払い、相手の体勢を崩すとそのまま覆い被さるように倒し、馬乗りになり自由を奪う。
「流石はフォンヴォルテール卿、参った参った・・・でも早く止血してくれねーと、死ぬぜ?この身体」
右手首からは絶えず血が流れている。
「貴様何が目的だ!?」
「オレの、オレ達の目的は始めから、あの日から、あの時から“コンラート”を護ることさフォンヴォルテール卿、そして魔王陛下」
グウェンダルが振り向くと寝間着姿の有利が目を見開いて立っていた。
「なんで・・・なんでこんなことしてるんだよっ!」
「なんで?・・・お前が、お前が、魔王のお前が拒絶したからっ!お前が“コンラート”を・・・・・・お前も“コンラート”を拒絶したからだァァァ!!」
突然暴れ出したコンラートをグウェンダルはグッと押さえつける。
「お前もだフォンヴォルテール卿!お前が“コンラート”を護らないから、壊れたんだっ!全部、全て、何もかも壊したお前を、お前達を消してやるっ!!!」
ハハハハハッと乾いた笑い声がグウェンダルと有利の耳に響き、夜空に消えていく。







「陛下、少しお休みになった方が・・・」
「ごめんギュンター、もうちょっと居たいんだ」
ベッドに横たわる親友。
一度目覚めたらしいが、それからずっと寝たままだった。
「さっさと起きろよ」
普段は心配かけるな、と言うくせに。
「猊下は命に関わるような怪我をしていません。ここはギーゼラに任せて、さぁ行きましょう」
ギュンターは支えるように有利を立たせ、部屋を出ていく。
「・・・アイツに会ってくる」
「駄目です!今はきちんと休んで下さい!!」
「嫌だっ」
「陛下っ!」
有利の行く手を阻むギュンターに涙をこらえながら訴える。
「あの時何があったのか聞かないとっ!なんで村田があんな怪我したのかおれ分かんないし!アイツが知ってるはずなんだっ」
あの青年をコンラートと認めたくないが、何が起きたのか知りたい。
「・・・分かりました。ただし、少しだけです」
「うん」
意を決してあの青年が居る場所へ向かう。



「魔王陛下と・・・あぁ教官殿、相変わらずで何より」
青年が囚われている独房には、厚いドアに重い鍵を掛けられていた。
独房の奥に壁にもたれかかり、ギュンターの姿を確認すると懐かしそうな声色で話し掛ける。
「教官殿に会うのは何十年振りだろう・・・士官学校の時代だから随分昔に」
「私が教えたのはコンラートです。あなたではありません!」
ギュンターは相手が言い終わらないうちに言葉を発した。
それを聞いて青年はククッと笑いながら扉の前までやってくる。
「なんだ、教官殿も気付いてたんだ?」
手首と足首には痛々しい痕が残っていた。
元々手足には枷を付けていたが、自分自身の身体が傷付こうがお構いなしに暴れていた為、仕方なく外したらしい。
「気付いてたのに教官殿は"コンラート"にあんな思いをさせたのか?」
眼が笑っていない。
「結局あいつ等と同じだな」
ギュンターは何も答えず、青年から視線を外した。
「で、何の用?陛下が来るって事は何かオレに用があるんだろ?」
有利はギュンターを独房を離れさせようとしたが、青年から言葉を投げ掛けられ静かに質問をした。
「・・・村田が、村田が大怪我してたんだ。あれは賊がやったのか?それとも」
お前がやったのか、と言う前に青年はガシャンと扉を拳で叩きつける。
「覚えて・・・・・・覚えていないのか!?」
殺意の眼で有利を睨み付ける。
「"コンラート"を拒絶して否定して蔑んで突き放したくせに!」
拳から血が出ようとも打ち付けるの止めない姿にギュンターは有利を独房から遠ざけた。
「お前を許さない!お前を許さない!」
「誰か!彼を!!」
狂った青年を止める為、ギュンターは兵士を呼ぶ。
「殺してやる!"コンラート"を追い詰めた奴はオレが全員殺してやる!!」
何人もの兵士に押さえられる青年を有利はただ見つめるだけしか出来なかった。
「陛下、戻りましょう」
「・・・おれがコンラッドをあんな風にしたのか?」
悲しみと憎しみと絶望の眼が有利の脳裏に焼き付いて離れない。
「今はお休み下さい」
ギュンターは有利の背中を押しながら部屋へ連れて行く。
「おれ、明日もアイツに会ってみる」
あの時何が起きて、自分は何をしたのか。
聞かなければ。





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■今日からマ王シリーズBL長編小説
・有利×コンラート
・18禁/シリアス



突如血盟城に攻めいる一人の青年。

その青年は、コンラート•••。

コンラート多重人格ストーリー。



不快な思いをしたら読むのを即効止めることをお勧めします。



☆目次☆


act.1
『ウェラー卿コンラートだ』

act.2
『知らないなら教えてあげるわ、フォンヴォルテール卿』

act.3
『“コンラート”の心は随分前に壊れてしまいましたから』

act.4
『あら、覚えていただいてたのね?グリ江ちゃん感動したわ!』

act.5
『俺があなたのコンラートになります。だから“コンラート”は俺にください』


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