職場の近く……と言っても、徒歩で15分くらいかかる程度には離れていますが、
図書館が、コロナの影響で休館になっていたのが、ちょっと前から開館となったので、昼休みにはそこに出向き、ほんの20分程度だけだけれど、読書。
再開1冊目に選んだのは、折原一さんの本。
再開一発目から、あまり冒険はしたくないので、好きな作家さんで、尚且つ未読のものに手を出してみることとしました。
今回選んだのは、これ
↓遭難者
数回にわたり通って読んで、本日、読了。
先日も書きましたが、なんとも、奇怪な本でした。
以下、ネタバレありの感想。
箱入りで、2冊に分かれており、1冊目が、
遭難事故で無くなった、ある青年の追悼本 という体裁。
いやこれが、恐ろしくリアリティのある、凝った作りで、
まず見た目が、いかにも自費出版で、山岳会のメンバーが仲間の死を悼んで作った本、という感じ。
で、活字ではなく、手書き文字による、遭難した青年が生前母へ送ったハガキが載っていたり、
山岳会メンバーの集合写真(イラストではなく、本当に写真が載っている)
母の手記やら、山岳会の会長の報告やら、
マジで完全に1冊目は「追悼本」そのものといった作り。
しばらく読んで、もしかして、マジの追悼本を誤って手に取ってしまったかな? と疑うレベルの凝りよう。
でも、ちゃんとカバーに小さく「書き下ろし本格ミステリー」と書いてあったので、どうやら、間違いではなく、こういう本らしい、と。
まぁ、試みは面白かったです。
ただ、全体的には……どうなんでしょうね(笑)?
折原一と言えば、叙述トリックの名手、なわけですが、今回、メイントリックには、そういった要素は無し。
細かい部分ではそれに類するテクニックは多数使われていたのでしょうが。
従来のファンの意表を突こうとしているのか、
・メイントリックに叙述トリックが使われていない
・いかにも伏線っぽく出てきたある死体が、事件の大筋とは実は関係ないというミスリード
・事件の核心に関係あるであろうと思われた謎の人物「N」と「S」(方位磁石かよ(笑))の正体が、割と事件の核心とは離れた、何と言うか 「どうでもいいことだった」、というミスリード
・折原一と言えば、主人公やヒロインまでもが皆「腹に一物 背に荷物」という胡散臭い登場人物であることが多いのに、活動的で行動力のあるヒロイン(主人公)、誠実で推理力があり登山家でもある相手役、という爽やか主人公カップル
という、らしくなさが全開。
まぁ、割とこの作者の作品を読んでいる者としては、意表はつかれました。
が、ミスリードの部分に関しては、いちいち細かいことを「これ、伏線かな?」と疑ってかかる読者相手でないと機能しない要素のような気もするし、
主人公の爽やかカップル振りは、本当に残念。
絶対、裏のあるキャラに違いないと期待して(笑)読んでいたのに、最後まで爽やかカップルであった。
ただまぁ、作りが凝っている妙な本ぶりが楽しめたし、クライマックスシーンにいたるテンポの良さはさすがで、それなりに楽しめました。