都内のある大学の教室の中。ロシア文学を味わいつつ、周囲の現実への意識を変化させていく主人公。漠然たる人生、世界について思い悩みながら、一歩踏み出すことへの躊躇を感じ、意志の力の有無を考え、そうして一度しかない、やり直せない人生を後悔しないように歩んでいこうとする姿には不安定な力強さを感じる。

 ロシア文学が大きな要素である本作の中では、主人公の周囲の変化はわずかなものである。それも現実なのか夢の中なのかは分からない。しかし、主人公は間違いなく小さな一歩を大きく踏み出しているのだ。