芥川賞作家石原慎太郎による小説『天才』は表紙からも分かるが田中角栄の一代記である。尖閣諸島死守を叫んだ石原と日中国交正常化へ邁進した田中。政治姿勢は全く異なる。下手な物書きであったならば角栄批判に終始するようなことになりかねないが、石原はそれほど愚ではない。安心してほしい。読めば誰であれ、作品の中へ吸い込まれて今太閤に接近することになるだろう。

 以前、戦後の総理大臣で最も人気があるのが田中角栄だと報じられていた。苦労の末に総理の椅子に辿り着いた角栄は立身出世の象徴の如く扱われる。就任時は一大旋風を起こし、最近も巷では角栄ブームと叫ばれていた。

 だが、ロッキード等金権政治の象徴でもあり、今に至るまで「政治とカネ」は世を騒がせている。評価の難しい政治家なのである。

 先月、旧目白御殿が燃えてしまったが、貴重な資料、物品の焼失などはなかったのだろうか。心配でならない。