みなさんこんばんわ。
★の小説に関して連絡いたします。
いまちょうど中間地点まできている★の小説ですがそういえばタイトルをあげていませんでした。
「御簾の向う」
という小説名です。
すみません、今まで更新に気を取られてそちらをあげていませんでした。
今後とも宜しくお願いいたします。
読んでいただきありがとうございました。
みなさんこんばんわ。
★の小説に関して連絡いたします。
いまちょうど中間地点まできている★の小説ですがそういえばタイトルをあげていませんでした。
「御簾の向う」
という小説名です。
すみません、今まで更新に気を取られてそちらをあげていませんでした。
今後とも宜しくお願いいたします。
読んでいただきありがとうございました。
二階ではどんなクリスマスが始まったのだろう。
「ね、さっきから何しているの。」
「ん、これからの天気を調べている。」
「どうして。」
隆は窓の方に歩いて行くと、おっ、と声を上げた。
「さすが天気予報だ、来てみろよ、雪が降っている。」
こういうところは本当に子供だと思う、しかしそういう所が好きだったりもする。
「ねえ、沙紀ちゃんたちを連れて外を少し歩かない。」
雪合戦がしたいのではない、二人で過ごすクリスマスは今年で四度目になるがホワイトクリスマスは初めてだ、そんな初めてを二人で過ごすのは勿体ない気がしたのだ。
「いいけど、あいつらの邪魔にはならないか。」
「平気よ、きっと喜ぶわ。」
もしかしたら私はいい意味で悪い小姑になるかも知れないとふと、思った。
「菜穂、ちょっと待って。」
四年間変わらない、隆のプレゼントを渡す前の台詞が聞こえる。
「これ、約束していたもの。」
まさか覚えていてくれたの、隆はポケットから小さなキューブを取り出し私に渡した。
「卒業したらお前留学するって昔言っていたから、まだまだ安物だけど何処にいてもちゃんと菜穂だけの事を想っているっていう証。」
中にはピンクの宝石がリボン状に付いた約束の指輪がひっそりと一つ入っていた。
二年前、私が何の気なしに言った一言だった。
それから卒業後の進路はぼかし続けていた、留学の事だって一度口に出したきりだ。
…今は一緒にいるから解らないけれど、卒業して離れたらきっとすぐにお互いのこと忘れちゃうと思うの、だから離れていても一緒にいるって想えるようにお揃いの指輪を買おうよ。
あの時隆は、笑ってその時になったらとだけ言っていた。
はぐらかされたようで、馬鹿にされたようで、悲しかったのを覚えている。
毎年の誕生日、クリスマス、記念日、ペアリングでなくてもいつか貰えると思っていたがずっと指輪が話題に上る事はなかった、だから諦めかけていた。
それが今、目の前にある。
指輪よりなにより隆の気持ちが嬉しかった。
浮気されたときは、ただ辛かった。
疑っている真似をしていたのだっていつか本当に隆がいなくなってしまうのが怖かったからだ。
「ありがとう、あは、本当にありがとう。」
涙が止まらなかった、隆はいつものように頭を優しく叩いてくれる。
「馬鹿だな、泣かなくてもいいだろ。」
この言葉に何度救われてきたのか解らない、心から涙が溢れてくる。
「もう絶対に貰えないって想っていたから、嬉しくて。」
隆の顔が目の前にある。
「行くなって、言いたくなるだろ、それに離れていてもこれがあれば大丈夫。」
これ見て、そう言うと隆は自分の左手の薬指を広げた。
そこには私の指輪と同じ形の青い宝石が散りばめられた指輪が嵌っていた。
「さっき携帯いじりながら付けたから曲がっているけど、これリボンの形だし買う時恥ずかしかったよ、女性用だからサイズも特注。」
天気なんて調べてなかったのだ、隆は。
このキザな男はどこまで私を泣かせれば気が済むのか。
階段の軋む音がする。
「おっ、お前ら丁度いい、雪合戦しに行くぞ。」
「それ言おうと思って降りて来たのですよ。」
「なら話が早い、それに亮平くんは今日泊まっていくだろ。」
えっ、という風に固まるが心配は無用だ。
「勿論寝室は俺とそこの泣き虫と一緒だ、如何わしいことはさせない。」
「ちょっと、お兄ちゃん。」
「そうと決まれば親御さんに連絡してこい。」
まったく、この男は。
私は涙を拭いて、三人のほうを向く。
すっかりプレゼントを渡しそびれてしまった。
「みんなちょっと待ってね、隆これ。」
「おっ、泣き虫からのプレゼントだ、やっぱりハンカチとティッシュかな。」
包みを開けた隆が一瞬固まったがすぐに笑顔になった。
「お兄ちゃん何貰ったの。」
沙紀ちゃんが覗きこむようにしてプレゼントを見ている。
「ん、秘密に決まっているだろ、な、菜穂。」
生まれて初めてのホワイトクリスマスは、まさに幸せのサンタクロースが訪れた日だと思った。
俺は自分のポケットの中に忍ばせてある小さなキューブを掌で転がした。
沙紀の部屋は今までの彼女の部屋とは違っていた。
シンプルではなく殺風景、モノクロというより物がない。
ベッドと机、それに本棚、壁には大きな空と海の絵が飾ってあるだけだ。
本棚の中は、参考書と辞書、それに小説が何編か入っていたが少女漫画のようなものは置いていなかった。
「ちょっと座っていて。」
そう言うと沙紀はパソコンをいじり始めた。
沙紀のお母さんの料理はどれも美味しかった、一階では今お兄さんと菜穂さんがプレゼント交換の最中だろう、気を利かせた沙紀が二階に上がる事を提案したのだ。
お父さんとお母さんは既に自室に戻っている、時計は二十一時を過ぎたくらいだ。
「あっ、返事が来ている。」
沙紀はそう言うとパソコンの画面を俺の方に向けた。
「この前話したでしょ、私がメッセージやり取りしている人。」
画面には三十行程の英語の文が表示されている。
「覚えているよ、すごく感性が綺麗な人だって。」
「そうなの、向こうでも今日はパーティを開いたみたい。」
沙紀はこの文が読めるのだろうか、英語が得意でない俺には宇宙語にしか見えない。
慣れた手つきでキーボードを叩きながら沙紀は話した。
「隠し事はしたくなかったから話したのよ。」
実は美穂ちゃんにも裏は取ってある、そして今日その彼をこうやって紹介してもらっている。
やきもちを妬いていないと言えば嘘になる、しかし沙紀はこう言ったのだ。
…自分勝手かもしれない、でも私はこの人とのメッセージのやり取りをやめる気はない、と。
そして、俺はそれに同意した。
浮気ではない、そう感じたからだ。
今も彼にメッセージを返している沙紀は純粋に彼の感性に共感しているように見える。
「亮平くん、ここを見て。」
言われるままに画面に顔を近付けると、そこには英文でこう書いてある。
…Ryohei is my boyfriend. He is so cool and gentle.
沙紀は笑って読める、と聞いてきた、これ位ならさすがに解る。
「俺の事紹介してくれているの。」
「そう、私の我が儘だから、これで信用してっていうのも 自分勝手だけど。」
沙紀は机の引き出しを開けると、紅いリボンの付いたプレゼントを取り出した。
「開けてみて。」
中には、香水の瓶とピアスが入っていた。
「男の人にこういうプレゼントするのが初めてだから解らなくて、美穂にも相談しちゃった。」
照れているのだろうか、沙紀は下を向いたままだ。
「ありがとう、大切にする。」
沙紀からプレゼントを貰えるとは思っていなかった、今日のパーティに、クリスマスを一緒に過ごせる事だけでも嬉しかったからだ。
「ちょっと待っていて。」
俺は鞄からこの日のために用意したプレゼントを探り出した。
喜んでくれるだろうか、いや喜んでほしい。
さっきお兄さんが俺に言った事を思い出す。
…今日のケーキ、亮平くんのためにあいつ三回もスポンジ焼き直していたよ。
俺と同じくらい好きになってもらうのはゆっくりでいい。
今は少しずつでも歩幅を合わせて行けたらそれで十分幸せだと思える。
翔たちは楽しいクリスマスを過ごしているのだろうか、このプレゼントを渡したら冷やかしの電話をしてみるのもいいかもしれない。
俺はお兄さんと被ってしまった小さなクリスマスプレゼントを沙紀の掌にそっとのせた。
「それじゃあ、みんながこうやって揃った事と隆の指定校推薦奪取を祝って…乾杯。」
この人は…昼間から飲み始めているビールはもう二十缶は越えている。
「おめでとうございます、先輩。」
「ん、ありがとう、恐縮しないで好き勝手にしていいから、沙紀。」
ソファに座りっぱなしだった沙紀がこちらに顔だけを向ける。
「ほら、亮平くん独りだと気を使うだろ。」
そのときすでに千鳥足の父親が現れた。
「沙紀が面倒を掛けているみたいだね、でも今日はせっかくだ。」
そう言ってビールを手渡そうとしている。
「おい、一応よそ様の息子さんだから駄目だよ。」
そうか、と言ってビールのグラスを自分で呷った、まるでドラクエのモンスターだな。
父親の帰国祝いとクリスマス、そして俺の指定校の祝い、あともう一つと様々なお祝いが今日は一緒くたに祝われている。
「先輩、菜穂さんはいらっしゃらないのですか。」
気を使ってくれているのだろう、まったく沙紀は。
「そんな敬語を使わなくていいよ、堅苦しいしさ、菜穂はもうすぐ来ると思うよ。」
「菜穂さんからのプレゼントみたら亮平くん驚くと思うよ。」
湧いて出てきたように横から沙紀が話しに加わってきた。
「どうゆうこと。」
「それは、お楽しみだよ。」
同時に玄関のチャイムが鳴った。
「あら、菜穂ちゃんじゃない、ほら隆迎えに行ってきて。」
解っている事を言われると少し苛々するのは俺がまだ子供だからだろう。
玄関には白のポンチョと白の帽子を合わせた菜穂がいた。
どうした事か手には色とりどりの花で作られたブーケを持っている、まさか。
「メリークリスマス、招待してくれてありがとう。」
「いや、色々と重なってしまって悪かったな。」
いいのよ、逢えれば嬉しいのは一緒だから、そう言うと菜穂はブーツを脱いだ。
「その花束はもしかして…。」
「うん、隆のご両親の結婚記念日でしょ、今日。」
やっぱり、昨日電話で話した事をしっかり覚えている上に花束を持参とは嬉しいが侮れない。
「ありがとう、俺と沙紀からは事前に渡してあるから菜穂から渡して欲しい。」
リビングへのドアを開けると、既に父親はソファに倒れ込んでいる。
「ようこそ菜穂ちゃん、寒い中来てくれてありがとうね、あら綺麗な花束ね。」
「こちらこそ、お招きいただき有り難うございます、あの今日はお二人の結婚記念日だと聞いたので。」
母親は目を丸くしてソファでノックアウトされている父親を起こしに行った。
いや、正確にはボディプレスだ。
「ほら、ちょっと起きなさいよ。」
のっそりと起き上った父親は菜穂を見るなりそれまでの動きを疑うほどに機敏に抱き締めに走った、これがハグだというならセクハラは何処に行くのだ。
「これを私と妻にだって、いや本当に長生きはするものだな、菜穂ちゃんありがとう。」
「そうね、ありがとう、大切にするわ。」
父親も母親も突然のサプライズに本当に喜び驚いているようだ。
こうなると亮平くんが居づらいかとも思ったが、違うようだ。
「あの、これは僕と沙紀さんから。」
そう言って小さな包みを二人に渡している、なんだこの展開は。
「素敵な写真立てね、ありがとう、これこの前のデートの時に選んでくれたでしょう。」
亮平くんは、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしている、どうやら図星の様だ。
「あの日ね、沙紀が…。」
「ちょっと、お母さんそれは。」
菜穂のためにジュースと食べ物を選んでいると、今まで我関せずと決め込んでいるようだった沙紀が突如大声を上げた。
「どうしたの、菜穂ちゃん。」
「あの日帰ってくるなり顔を真っ赤にして赤裸々に…。」
沙紀の喚き声の矛先がこちらを向いた、そんな中で父親は再びソファでノックアウトだ。
話しを纏めたのは母親だった。
「でも亮平くんもわざわざありがとう、今日はもう気を使わないで楽しんで行ってね。」
事態を少し飲みこんだのだろう、沙紀に負けず劣らず顔を真っ赤にして頷いた亮平くんが何だか可愛かった。
沙紀も何だかんだ言って、家族が揃った上、みんなも来てくれた事が嬉しそうだ。
残るは、こっちのイベントか。
優しくて、気遣いが出来て、本当に私には勿体ない位の人だと思った。
横浜駅から桜木町へ続く道は、所々ライトアップされて翌日に迫った大イベントを大いに盛り上げているようだった。
色々な話しをした、実はブロッコリーが苦手な事、サッカーを幼稚園からずっと続けている事、部活には入っていないみたいだけど町のサッカーチームで小学生に教える先生役をやっていること、そして今までの恋の話し。
彼は包み隠さずに話してくれた。
二股をかけていたこと、それで恋人を傷つけたこと、本気で人を好きになって初めて自分がしてきた事がどんなに酷い事だったのか解ったという事。
「この歳だからさ、恋なんてみんな通過点くらいにしか考えていなかった、でもそれは間違いだった。」
亮平くんは大観覧車に並ぶ列のなかで話していた。
「昔の彼女に言われた事があって、本気で人を好きになった事がないあなたに軽々しく別れるなんて言われたくないって、その時は意味が解らなかったよ、俺だってその彼女のことを好きだと思っていたから。」
列はゆっくりと進んでいく。
大観覧車に設置された電子時計は私の誕生日の三十分手前を夜空に映していた。
「でも違った、彼女の言うとおりだったよ、本気で誰かを好きになって別れる事の辛さや大きさが身に染みて解るようになった。」
観覧車のなかは横浜の街並みを解説するアナウンスが流れている。
「このガイダンスさ、観光に来た人以外には煩いよね。」
亮平くんはそう言って寂しそうに笑った。
この人は私の事を本気で好きになったという、そしてそれは外見だけではないと彼は言った。
ずっと見て来た、と彼は言った、そして私の事をこれから知っていきたいとも話してくれた。
ゆっくりと回る大観覧車は着実に天辺に近づいていく。
「俺は美穂ちゃんや友達と比べてまだまだ沙紀の事を知らないと思う、でもこれだけは約束するよ、軽々しい気持ちで言っているのではない、これから知っていくどんな沙紀でも俺にとっては宝物だと思える、だから…。」
そう言って亮平くんは俯いてしまった。
例えばジョンだったらなんて言うのだろう、彼に対して恋心といった感情はないと今は想っている、だから亮平くんと付き合っているのだ、でも…。
私たちの乗った小さな空間には今どんな音楽が似合うのだろう。
亮平くんは変わらず次の言葉を呑みこんだままだ、私は彼を同じように愛せるのだろうか。
ついにこの小さい空間は地上から112,5メートルの頂上へ近づいた事をアナウンスが告げている。
「沙紀、俺さ。」
私は静かに立ち上がると、顔を上げた亮平くんの唇へと口づけをした。
キスではない、約束の口づけだ。
私たちがこれからどうなるのか解らない、でも今彼が話してくれた事は真実だと思ったからだ。
どのような道に行き着いても、今日彼が話してくれた言葉は信じていく、それを約束した。
唇を離すと亮平くんは何も言わずに私を抱き締めた、その力は思ったよりもずっと強くて息が止まりそうになってしまった。
私たちを乗せた小さな空間は今丁度、その全景を望める頂上に辿り着いたところだった。
終業式も終わり、来年までクラスメートとも殆ど逢うことはないだろう。
隣のクラスはまだ、帰りのホームルームの最中のようだ。
先生から渡された通知表は軒並み平凡だった、体育だけは唯一花丸といったところか。
「お待たせ、翔くんはいいの。」
「うん、美穂ちゃんから聞いていないかな。」
今日はこの後初めてのデートだ。
こんなにデート一つで緊張するなんて中学一年生以来かもしれない。
「今日さ、沙紀どこか行きたいところある。」
下駄箱で靴を脱ぎながら探りを入れてみる、正直なところ俺は彼女の事をまったく知らない。
空が好きらしいということも翔から聞いたのだ。
「私は特にないけど、あのさ。」
「ん、どうしたの。」
校門までの道は全学年共同だ、校舎が別れている分ここで先輩や後輩と逢う事もある。
「沙紀…おっ、君が亮平くんか、噂に違わずいい男だね、沙紀を宜しく。」
この人は、もしかして。
「お兄ちゃん、メールでも言ったけど。」
そうだ、三年生にお兄さんがいるって美穂ちゃんから聞いていたのを思い出した。
それにしてもカッコいい人だな、確か義理の兄妹だったような。
「解っているよ、たまたま見掛けたから声を掛けただけだ、あんまり遅くなるなよ。」
それじゃあ、といって歩き出したお兄さんの後ろ側には女性がいた。
あの人って、去年のミスコンで優勝した菜穂さんだよな…。
そんな俺の心情を察したように沙紀が口を開いた。
「亮平くんに言ってなかったかな、さっきの小煩い人がお兄ちゃんで横にいるのが彼女の菜穂さん。」
やっぱりそうか、クラスの女子が隆さんの事で騒いでいたのは知っていたけどまさか兄妹だったとは、しかも彼女は学校で一番人気の菜穂さんだ、ベストカップルとはあの二人の事を差すのかもしれない。
「ごめんね、話しの途中だったのに。」
「いいよ、それで何か言いかけていなかった。」
「うん、私たちお互いの事知らないと思うの、だから。」
だから、なんだ、まさか別れようとかじゃないよな…。
冷や汗が背中を伝うのを感じる、心臓が普段の三倍くらいの速度で脈打っている。
「お話しようよ、色々な事、私も亮平くんのこと知らないのに失礼なことばかり言っていた気がするの、だから良かったら…。」
そんな風に想っていてくれたのか。
何を言っても糠に釘、もしくは暖簾に腕押しといった気がしていたのは勘違いだったのか。
「沙紀はね、普通の女の子とは少し違うからね、優しくするだけじゃダメなの、なんていうのかな…。」
美穂ちゃんが言っていた事を思い出した。
源氏物語のような恋、それが沙紀の恋愛感だった。
だからと言ってそればかりに従う訳ではないが、つまりは、その古風な恋という事か。
「そうだね、じゃあ行こうか。」
俺は、今日の帰りにでも図書館に寄っていく事を誓いながら今日をどう楽しくするか、そればかりを考えていた。
最近不安定な天気が続いて今すが、私はみてみたいものがあります。
雨と晴れの境目。
馬の尻尾でしたか、違いますかね。
有る一戦を境にして、どしゃぶりのあめとからからお天気らしいです。
見た、という方のお話がネット上で見られますがどういったかんかくなんでしょうかね。
雨も雨雲や気流、気圧の関係で水分が空中で凝固されなかったものですから雲の切れ間、からなら見れるのか。
もし見たという方がいたら教えて頂きたいです、
読んでいただきありがとうございます。
また、よろしくお願いします。
花束の物語を贈ろうと思ったのだ。
空がこんなにも青く透き通って見えるこの原っぱに咲く蒲公英。
僕と君はこの場所を訪れるたびに笑い合い、助け合い、時には喧嘩もしたね。
君は感じていたかな、この原っぱにかけられた秘密の魔法を。
柔らかい風に誘われ唄う蒲公英には、僕と君が紡いできた幾千という恋の物語が描かれているのだ。
いつか、この場所一面が僕と君の物語で紡がれた蒲公英で優しく包まれた時、僕は君にこの花束の物語を贈るつもりだったのだ。
この場所に咲く蒲公英、その一輪一輪に描かれた優しさや温もり、強さが織りなす色とりどりの僕と君の恋が綴られた物語を語り明かす、そんなこれからの日々を僕は思い描いていたのだ。
だけれど、ここ数年は違ったみたいだ。
秘密の魔法がかけられたこの場所で僕は君を想い、涙を流すだけになってしまった。
しかし、感じたのだ。
この原っぱに咲く蒲公英が雨に打たれながらも、静かに空を見上げ続けている姿を見たときに。
ありきたりの表現かもしれないが君が怒っている、と。
僕は忘れていた。
この場所で風とともに艶やかに唄う蒲公英には、描かれていたのだ。
僕と君が描き続けてきた物語が消えることなく、その一輪一輪に文字のない本となって。
だから、僕はこれからも描き続けるよ。
いつか君に贈る花束の物語を、悲しい物語にはしたくないから。
この場所に寝転んで見渡せば君が笑っている、ほら、君が唄っている。
青く透き通る空を見上げれば、君がいる場所にまで届きそうな冠毛たちが風と共に舞い踊っている。
いつか君に、もう一度会いにいくよ。
僕と君の秘密の魔法がかけられた、両手では抱えきれない程の花束の物語を持って。
≪変動≫
雨が降ったなら、君と空に掛る虹を見上げよう。
雲が空を覆うなら、君と雲間から覗く夕日を見にいこう。
雪が積もるなら、君と美しい結晶を見つけよう。
涙が流れるなら、君の頬に一輪の花を咲かせよう。
悲しむ事の出来る毎日は、素晴らしい始まりを見つけるための第一歩。
どんな場面も笑顔に出来るそんな毎日を描いてみれば君はもう、笑顔の天使だ。
≪蓮華≫
毎日泥まみれになって。
足掻いて、打ちのめされて。
最後に笑ったのはいつだっけ。
息をすることも苦しくなって、夢の中でさえも「時間」に追われている。
田圃に咲いている蓮の花も、僕らと同じ「時間」を過ごしている。
泥の中で芽生えて、泥の中で散っていく。
誰に褒められる訳でもない。
それでも、白梅色の綺麗な花をこの世に咲かす。
ここに座って少し休もうよ。
それにみんなも見たいって言っているよ。
だって君が笑えば、ほら大きな向日葵が咲くのだから。
≪家族≫
土曜日の夕方、午前中には家に帰ってきていた。
夏は冷麦、冬はうどん。
定番になった昼ご飯を食べ終われば、そこからは僕らの時間。
夏は汗を拭って山野を駆け回り、冬は寒さを堪えて半そで半ズボン。
そう言えば、ポケットに手を入れて歩くと母さんに叱られたなぁ。
そんな事を思い出す土曜日の午後。
空調の効いた部屋でパソコンと睨めっこをしている。
笑わない相手とのゲームは楽しくない。
でも、がんばろう。
そうとも、家に帰ればあの時の面影を連れた僕がいる。
今日の昼ご飯は冷麦だったのかな、真っ黒に日焼けした元気な顔を思い浮かべる。
廻っていく時間を感じる、いつかあの子が大きくなったら言ってやろう。
「子供は可愛いものだ、そのためだったらがんばれる。それが家族の父親だ。」
どこからか懐かしい風鈴の音が聞こえた気がした。
≪星≫
ベッドに寝転び星を見上げる。
久しぶりに見上げた星が僕に小さくウィンクした。
僕が手を上げて応えると、一筋の流れ星となって夜空に光の線を描いた。
心のもやもやが吸い込まれていく。
ありがとう、小さなお星さま。
いつか君の隣で輝けるなら、今度は僕が君にウィンクをする。
だから夜空を見ていてほしい。
君の願いを叶えるために夜空をそっと駆けるから。
≪ホトトギス≫
ホトトギスが鳴く。
最初はあんなに下手な鳴き声だったのに、今じゃこの街に春の訪れを告げている。
よし、僕だって。
失敗したっていいじゃないか、大きな声ではじめてみよう。
まずは左手を振り上げて、右足を上げるところから。
≪母≫
僕が帰ってくるまで起きていてくれる。
僕が起きればおはようと言ってくれる。
なのに、僕よりも長生きだけはしてくれない。
親孝行が出来なくなって、本当の優しさを知りました。
あなたが教えてくれていたその優しさを、大切に伝えていきます。
≪母≫
心が疲れたら、少しだけ目を瞑ろう。
いそがしいと心が無くなってしまうからゆっくりと目を瞑ろう。
そこには大きな海が見えるでしょ。
波音しか聞こえないその場所なら心が安心できる。
だから一息ついていこう。
大きく深呼吸して目を開けば、無くしていた気持ちが見つかるから。
ほら、ここにあなたの優しさが一つ見つかったよ。
ケリーは雨が降っているから外出はあとで一緒に行こうと言っていたが、雨音一つしない。
試しに玄関のドアから手を外に出してみたがやはり雨は降っていないようだ。
ドアを閉め、大通りに向かう。
画材がもう無くなっているのだ、新しいものを購入しなければ絵を書き足せない。
専門教育で受けている機械工学はもう殆ど理解できた。
もうケリーに迷惑をかけなくても、メッセージの入力からシステムの起動、殆ど全てのことが出来るようになった。
あとは選択科目の美術だ、教授には目が見えないのにどうしてと言われたが、見えなくても描く事は出来る。
模写は出来なくても想像は出来る、何か出来る事があるなら諦める必要はない。
壁伝いに歩く大通りはどちらかというと小道のような感覚だった。
それに僕が持つ白い杖を見れば、大体のひとが道を「空けて」くれている。
「おい、ジョン何処に行くのだ。」
この声は、パン屋のジェフさんだ。
「ちょっと買い出しに。」
肩に手を置かれる感触がある、小麦粉の匂いが鼻を刺激する。
「そうか、それなら俺もベーキングパウダーがきれそうな所だ、一緒に行こう。」
「一緒に買ってきますよ、キロ三袋でいいですか。」
「そうじゃない…ジョン、この先の道で工事をしているから道が入り組んでいるのだ。」
そういうことか、ジェフさんやケリーの優しさに触れながらこれでは学校を卒業しても、迷惑を誰かにかけてしまうと感じた。
無事に買い物も終わり、ジェフさんにお礼を言って別れた。
途中の道は大掛かりな地盤沈下が起きたようで、巨大なクレーンの操作音が響いていた。
ニュースでそんなことが流れていた事を思い出したがこんなに近くだったとは。
杖を玄関脇に置き、部屋に戻る。
ケリーはもう帰宅しているようで、例の足音を響かせながらこちらにきた。
「まったく、あとで行こうって言ったのに。」
「ありがとう、ケリー、大丈夫だったよ。」
ジェフさんにお世話になった事を告げると、そう言えばと言ってケリーは話し始める。
「昔、あなたがジェフさんへ贈った絵があったでしょ。」
「ああ、あったね。」
もう何年前になるだろう、母さんが事故で死んで僕と弟を引き取ってくれたケリーの家に来てからだからもう八年前になるかもしれない。
越してきてすぐに近所の溝に嵌った僕を助けてくれたのがジェフさんとその夫人だ。
そのお礼、と言って子供心から絵を描いたのだ。
人より少しだけ秀でていることと言えば当時の僕にあったのは絵を描く事だったからだ。
「それ、この前のバザーでどうしても欲しいって言う人がいて譲ってしまったのだって。」
「そっか、別にいいよ、昔の事だし贈ったものだからね。」
ケリーは冷蔵庫を開けたようで、冷気がこちらにも流れてくる。
「奥さんも気にいっていたみたいで、商品じゃなくて飾りものとして店頭に置いておいたらしいのだけど。」
「大丈夫だよ、さっきジェフさんからも謝られてしまったし。」
冷気が止み、コップに何かを注ぐ音が聞こえる。
僕の手にコップが当った、弾けるような音が聞こえる、これはコーラかスプライトだろう。
「そうだったの、それで奥さんがもう一度書いてくれないかって言っていたのだけど。」
「解った、実はさっき奥さんからも同じ話しを聞いていてね、お礼にってパンを頂いたばかりだよ。」
これね、美味しそうなパンね、そう言ってケリーは袋を戸棚に仕舞ったようだ。
「お金を頂くようなものではないって言ったら、変わりにくれたんだ、素敵なものを先に頂いてしまったからプレッシャーだよ。」
僕は指先でパソコンの前にある椅子を探して座った。
「あら、新しいメッセージが来ていたわよ。」
ゆっくりとキーボードに手を合わせ、読み上げシステムをONにする。
…あなたの言っていた音を感じました、色を音に変えるあなたの感性にただただ感動しました。
ありがとうございます、あと父親からそちらの方で地盤沈下が起きたという話しを聞きましたがお代わりないでしょうか、日本では地震や地盤沈下はよくありますが…。
確かにこちらでは地震は珍しい自然現象の一つだ。
日本は地震列島なんて言われているが、大きくない地震でもこちらの国では大騒ぎになることもある。
しかし、どうして地盤沈下のことを知っているのだ。
ケネディ州だって随分広い、地震のことがニュースになったとしてもそんな細かい事まで知る事が出来るのだろうか。
…ご連絡をお待ちしています、それでは、よい一週間を。
言い表せない感覚が体中を駆け巡ったが、答には行き着けそうにない。
僕は買ってきた画材を広げると、画板に描きたいイメージを脳内で想像し始めた。