今朝は雨。
アスファルトは色を濃くして、いつもより暗い表情をしていました。
傘をさしてうつむきがちに歩いていると、かかとで弾いた泥水の粒が靴下にはね返り、小さなしみをつくりました。
冷たく淀んだしみはじわじわと繊維の隙間を縫って広がっていきます。わたしは何もせず、ただ、その浸透していくようすをぼうっと見ていました。
不思議。そのしみは、まるで何かのしるしのように、背筋をのばして佇んでいるのです。
しるし。
なぜだか、わたしには大事なことに思えてしかたがありませんでした。

… … … … … … … …

個性ということばは好きじゃない。
あなたとわたしははじめから違うもの。

違って当然なのに
あえて掬いあげなければならない「個性」とは
いったいなにを表しているのだろう。

同じ制服で 同じ髪型で
まわりとの境界線もあいまいだったあの頃は
わざと校則をやぶって自分という存在の意味を見出すことに必死だった。
まわりに溶け込まないことこそが、自分を保てる方程式なのだと疑わなかった。

けれど、髪につけた大きなリボンが、目立つピンク色のカーディガンが、わたしをわたしにしてくれたわけではなかった。

… … … … … … … …

大人になって
見えなくなるものがふえてきたように感じます。
それは決して消極的な意味じゃなくてね。
今まで、見え過ぎていたのだと思います。
そして
必要ないことに振り回されていたのだと。

靴下についたしみは
洗濯をしたらきっと落ちるでしょう。
でも
まっさらな状態には戻らない。

それでいいのです。
それが
いいのです。



亜美