Billie Holiday – Strange Fruit | 群青

Billie Holiday – Strange Fruit

Billie Holiday『Strange Fruit』、奇妙な果実・・・です。

1939年に録音されたビリー・ホリディの歌です。

 

 

奴隷たる黒人。
米国だけでなく、スペイン支配下の中南米においても、人身売買によってアフリカから黒人を奴隷としていたことは今日ではよく知られています。
アメリカの内戦として伝えられている南北戦争の途上、1,862年にリンカーン大統領は奴隷解放宣言。
しかし、これによる黒人奴隷制度が廃止されても、それで黒人差別が無くなった訳ではありません。その後も、米国・南部を中心とした黒人へのリンチ・暴行は当時のアメリカ人にとってはほとんど常識。
ビリーホリディ「奇妙な果実」は、そのことを、底が見えない悲しみの深さで歌ったものだと思います。
直ぐにお分かりになると思いますが、「奇妙な果実」は、リンチにより虐殺され、木に吊り下げられた黒人の死体。




当時、米国の新聞に掲載された写真だそうです

 

作詞作曲は、ニューヨーク市ブロンクス地区のユダヤ人教師エイベル・ミーアポール。上の写真を新聞で見てこの曲を作ったとのこと。
※作詞作曲は、ルイス・アレンさんだという説明もありましたがエイベル・ミーアポールのペンネームのようです。

1930年です。
そして、クラブの専属シンガーだったビリー・ホリディがお店で歌ったそうです。当時は黒人虐殺は米国社会の日常茶飯事。これ告発する曲を歌うことは、相当に危険なことだったそうです。ビリーホリディのお父さんが黒人であるが故に、肺炎を患っても病院に入れて貰えず死んでしまったことがこの歌を歌わせたのだろうと思います。
ビリー・ホリディは、1915年生まれ米国メリーランド州生まれのジャズ歌手。1957年に亡くなっています。

 

1917年・ビリーホリディ

 


その後も米国では、1950年代、キング牧師等の公民権運動に及ぶ活動が長く続けられ、同時に潜在的な差別・偏見は、今日に至っています。

 

 

 

 

 

Strange Fruit 歌詞  出典はこちらです

Southern trees bear strange fruit,
Blood on the leaves and blood at the root,
Black bodies swinging in the southern breeze,
Strange fruit hanging from the poplar trees.

Pastoral scene of the gallant south,
The bulging eyes and the twisted mouth,
Scent of magnolias, sweet and fresh,
Then the sudden smell of burning flesh.

Here is fruit for the crows to pluck,
For the rain to gather, for the wind to suck,
For the sun to rot, for the trees to drop,
Here is a strange and bitter crop.

 

奇妙な果実(Strange Fruit:訳詞)

南部の木は、奇妙な実を付ける
葉は血を流れ、根には血が滴る
黒い体は南部の風に揺れる
奇妙な果実がポプラの木々に垂れている

勇敢な南部(the gallant south)ののどかな風景、
膨らんだ眼と歪んだ口、
マグノリア(モクレン)の香りは甘くて新鮮
すると、突然に肉の焼ける臭い

カラスに啄ばまれる果実がここにある
雨に曝され、風に煽られ
日差しに腐り、木々に落ちる
奇妙で惨めな作物がここにある。

 

 

 

お聴きになれば直ぐに分かります。
自分は、反差別の「怒り」の歌とは感じません。

「奇妙な果実」の模様を淡々と歌う、底知れぬ悲しみを感じます。聴く人々の胸に留まりつづけ、人種差別・殺害への敬虔な人間の良心を形作っていったのだろうと思います。

 

 

 

 

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