嫌なことがありました。

聞いてください。



僕の帰り道には、けっこう悪質な水はねポイントがあるんですけど、そこでのお話です。


水はねポイントって言ってもピンとこない人が多いですよね。


水溜りに車が突っ込んで、横を歩いてる人にバシャーのあれです。あれを言ってます。



もう察する人は察したでしょう。


そう、水をはねられたんです。



あれは、普通に雨が降っている夜の帰り道のことでした。(今日)


歩き慣れた道をスタコラと歩く僕。


そして例の水はねポイントに差し掛かりました。


ちょうど良く水溜りもできていて、絶好の水はね日和です。


この水はねポイントなんですが、その長さや道幅、水溜りの大きさも本当に意地悪く計算し尽くされた設計になっていて、一度技が発動したら回避するのはほとんど不可能なんです。


波紋カッター並みの切れ味で歩行者を襲います。


ですが歩く場所によっては多少ダメージを減らせたり、進入するタイミングによっては喰らわない可能性を上げることもできます。


そういった心得はあったのですが、今日は疲れからか不覚をとってしまいました。



次々に横を走る車や深い水溜りが見え、水はねの環境が充分に整えられているのを感じた僕は、少し警戒しながら進みます。


すると、僕の視界に一つのライトが入りこみます。



そう、自転車が前からやってきたのです。


あろうことか、車道側ではなく歩道の端側を走っていました。



やられた……



気づいた時にはもう遅い。

そう、水はねのダメージを減らせるラインを塞がれてしまったのです。


少し焦りを感じる僕。


水はねポイントを抜けるまで、まだ距離があります。


自転車をやり過ごしてすぐに端に寄ろうと、歩みを早めました。


しかしここで違和感を覚えました。


頑張って早歩きをしているのに、一向に自転車とすれ違わない…?!



確実に前にいるはずの自転車。


スピードの出るはずの自転車。


なのになぜか思ったより距離が縮まってくれません。



そして、ここであろうことかスピードののった車がやって来たのです。


一気に全身が恐怖に支配されました。


おいおい、早く自転車通り過ぎてくれっっ!



しかし、まだ遠い自転車。


迫る車。



そこでハッと察したのです。


ハメられた………ッ!!


自転車と車はグルだったんだ…。


そう気付きました。


まるでホルホースとJガイルのように、狡猾に僕を殺しに来たのだと。



そして、ついに運命の瞬間は訪れてしまいました。



「パパウパウパウ」


車から発せられる波紋カッター。



「おぅっっ!?」


つい反射的に奇声を発し、バレエダンサーのように飛び跳ねる僕。


そんな飛び跳ねでは悪魔の水はねを避けられるはずもなく、僕の足はびしょ濡れに。



そして、颯爽と走り去る車。


何事もなかったかのようにようやく横を通り過ぎるJガイルおばちゃん。


事が終わってしまった後では、もう何も出来ません。



やり場のない憤りと言いようのない虚しさを感じながら、ただただしょんぼりするしかありませんでした。



水はねをした人は全く気づきもしないでしょう。


そしてされた人は悲しくなるでしょう。


まるで水はねはこの世界を端的に表しているようです。



幸いにも今までされたことはありませんが、カツアゲされたらきっとこんな気持ちなんだろうと思ったりしながら帰りました。


おわり。




最後にちょっと訂正します。


心のモヤモヤを向ける先もなく、ちょっと悪意がこもってしまいましたが、おそらく車と自転車はグルではなかった気がします。


車と自転車ごめんなさい。