諸君、ご壮健かな。
人が集まると仁義なき戦いが起きる。その中の一つが、毎日揺られる哀愁の鉄塊。
トレイン。
↑過去の仁義なき戦い
全てのことに終わりはある。トレインですらその宿命は免れないのだ。
「次は終点ー、〇〇ー」
そう、ここは旅の終着点。ここで終える者がいれば、はたまた違う路線にトランジットして遠くへと向かう者もいる。
行き着く先は、荒野(戦場)かもしれない。そのトラップに幸あれ、だ。
プシュー。
扉が開いた。満員で身動き取れなかった哀戦士たちが、降りようとした時。
「降りまーす」
アムロ降りまーす、てか。バカを言ってはいけない。ここは終着駅、降りない奴などいるわけもないだろう。順番を待て、何故なら。
貴様は扉から一番遠い椅子に座っていただろう。
その堺雅人の目を邪悪にし、存在感をなくして若くしたような男。立ち並ぶ歴戦の勇者たちをかき分け、出口へ急ぎ向かうが叶わない。
なぜならみんなギュウギュウで避けられないのだから。
分厚き肉の塊に押し返されるも、青年は何度もトライし押す。いや押すのは力士の基本だが、貴様の身体はマッチ棒…。
「いい加減、通せよ!」
青年は叫んだ。誰もがいい加減諦めろよ、と思った微妙な団結した空気感。それを破ったのが…。
「ちょっと待って」
その主は小さな女の子。可哀想に青年の足元あたりにいたらしい。私も気が付かなかった。オロッとしたお母さんには気が付かない少女。
「俺はここで降りるんだよ」
「みんなそうだよ」
「ちっ」
ちって言った?こんな一桁くらいの少女に。絶望的になったその時。
「ちっ」
誰かが発した!青年は苛立ったような其方を見る。しかし誰かわからない。
そんなことをしていたら、どんどん人は降りてすいてきた。その流れで青年も出ていく。
その背中は明らかに苛立ち、のっしのっしと歩いていく。
こうして消化不良の戦いは終わったのだ。