諸君、ご壮観かな。
芥川龍之介の住んだ街を歩く。
しかし太宰治の住んだ三鷹と違い、痕跡は少ない。あちらは太宰と愛人がイチャイチャした飲み屋跡、イチャイチャした仕事場跡、イチャイチャして飛び込んだ玉川上水…。
いやあ、返す返す太宰治ってダメだな!
時代が前で、空襲で焼けたからか。芥川龍之介の通った蕎麦屋に行こうと思ったが、数年前に閉店したらしい。残念。
しかし太宰との違いはそれだけではない。
芥川龍之介は文豪たちの中心で人格者。いつも慕う文人たちに囲まれ、それが形のない不安となり死を選んでしまった。
この死をもって、田端文士村の面々の心が離れていたのだ。
空襲の避難はあくまでもきっかけ。
階段を上ってみる。
ここは芥川が臨んだ光景。
この先には。
彼の小説に出てくる庭の石が実在する公園がある。
子供の遊び場として踏み荒らされているが。
それは子供に愛されている証。
きっと芥川龍之介はこんなもんだろう、と微笑むのではなかろうか。
そしてここからほど近くに。
芥川龍之介旧居跡が。
残念、もうないのか。時間の流れを呪うのも束の間。
ここに芥川龍之介記念館ができる!?
時計の針を逆に回すようで、何だか心が踊る。
さて、田端駅に戻ると。
見覚えがあるような…。
情報端末をいじる。あ!
天気の子の舞台だ!
ここも。
やはり!
人生、小さな感動をありがたく受け取るといかに幸せなことか。
よし。
あの地に行くか!
(つづく)