(名前のない主人公たち①)学徒動員兵 <12> | シャアに恋して ~デスラー総統のロマン航路~

諸君、ご壮健かな。



「母さん!」

そう叫んで、機動戦士ガンダムの世界で散っていった学徒動員兵


彼のことを思い浮かべて、書き始めたこの物語。

戦争の悲惨さ・残酷さを伝えるために、書き続けた方がいい気がしている。


(前回までの話:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11


それでは、続きを書きたい。



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学生は、出撃した。


辺境にある出身の植民地コロニーから徴用された学生たち。

輸送艦から蹴りだされるように排出される機体の中で。


最前線にいる自分たちの境遇に恐怖した。



目の前には、白い悪魔をほうふつされる、連邦の最新鋭の人型の機体が無数。

それを援護するように、球体に巨大なバズーカを設置した機体が後ろに控える。


対して学生たちは。


緑色の死神が2体。

その周りに、ドラム缶に余った武器を設置した粗末な機体が散らばる。



学生はつぶやいた。


「勝てるわけない・・・。」



そんな絶望的なつぶやきの語尾に、爆発音が重なる。

耳をつぶすほどの爆音の中では、昨日まで隣で味のない宇宙食をもそもそ食べていたあいつが。


身を裂かれ、宇宙空間に消えた。

その生きた証は、もうない。


消滅。



学生の中で、何かがはじけた。


「ちくしょおおおお!」


声にならない叫びを上げると、緑の死神を駆り。


連邦の丸い機体をたたきつぶし。

灼熱の斧で切り裂いていく。



一匹。

二匹。

三匹。



学生は、いつか数えていた。


そう。

虫の単位「匹」で。