(名前のない主人公たち①)学徒動員兵 <3> | シャアに恋して ~デスラー総統のロマン航路~

諸君、ご壮健かな。



さて、学徒動員兵だが。

考えることがあって書いて、短編の予定だったのだが。

(参考:前回記事


意外と、続きを知りたい同志が多いようなので。

その後のストーリーを夢想して見た。



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学生は、校舎の壁に貼られた紙を見つめていた。


以前そこには、学生たちのサークル活動の勧誘や。

小さなコロニーながら、少ない働き場所のアルバイトの案内が貼ってあった。


しかし、そこには無機質な白いA4判の紙が一枚貼られていた。

内容を読むうちに、学生は息をのんだ。



布告


一、本大学の名前を改め、ジオン公国士官学校第五分校とする

一、ジオンへの参加を希望する教授については佐官とする

一、ジオンへの参加を希望する学生については、卒業後准尉とする

一、卒業年次を二年と改め、三年以上の年次の学生については順次卒業とする

一、本布告に賛同できないものは在籍を希望しないものとして、放校処分とする



学生は、その内容を呆然と見ていた。


「・・・てられるか」

隣で同級生がぽつりとつぶやいた。


学生は、ぎょっとして学生の方を見た。


「やってられるかよ!」

同級生は叫んだ。


「お、お前・・・相手は軍隊だぞ・・・」

「知るかよ!」

級友が制するのを無視して、同級生は叫んだ。


「あんな殺人鬼たちの仲間になるということだぞ!お前ら・・・」

そう言う学生の語尾に。


銃声が重なった。


同級生は、どさりと崩れ落ちる。

見る見る血だまりが広がり、生臭い臭いが辺りに充満した。


「な・・・。」

「不穏分子は処分する。」

学生が絶句するのを切り裂くように、その後ろで冷たい声がした。


学生が振り向くと、そこには緑色の軍服を着た一人の男が立っていた。

その顔には何もなかった。


そう。

何もない。


人に対する心など何もない。

「処刑」ですらなく「処分」。


そう。

自分たちは、人じゃない。


そう。

自分たちは、必須ではない。


この思考は、生きることが当たり前だった日常を一気に押し流した。



学生の足元では、肉の塊が音もなく置いてある。

そう。


「置いてある。」