少年
(1969年/日本/98分)
監督:大島渚
【ストーリー】
戦争で傷を負ったことを口実に定職につかない男と彼の先妻の息子(少年)。男の同棲相手と彼女との間に生まれた子(チビ)。家族の絆が希薄な一家は当たり屋で生計を立てている。一箇所で仕事を続けると足がつくという理由で、一家は次々と場所を変えて旅をする。少年は車の前に飛び出す恐怖と両親への抵抗から何度も逃げ出そうと試みるが、結局は逃げた後に味わう孤独に打ちのめされて家族の元に帰るしかなかった。そして、一家は反目しあいながら、とうとうその先には海しかない北海道の最北端まで辿り着くのだが…。(ウィキペディアより)
【かんそう】
『泥の河』を観た時のような感覚。
子供は親を選べない。
親の職業を選べない。
結局親にすがるしかない。
最初、この映画で母親が少年の事を「ぼうや」と呼んでいるのに「ん?」と違和感。
弟のことは「ちび」と呼ぶ。
少年は父親と先妻の間にできた子供で、弟は父と現妻との間にできた子供。
でも父も母も劇中一度も二人の名前を呼ぶことはなかった。
そこからもこの家族の関係がどこかうっすーいのがわかる。
母親と少年の間にはお互いどうしても縮められない距離があったのだが、あることをきっかけに二人の距離はぐっと縮まる。
この過程がすごくよかった。
なんか微笑ましかったわぁ。
多分少年の方は母を元々慕っていて仲良くしたいという気持ちはあったと思うんだけど、母親の方が継母ということにすごくこだわっていて距離を置いていたのではないかしらね。
それからこの二人は結託してちょいちょい父親に反抗したりするんですけどね。
この映画には敗戦→国の負の連鎖→家族の負の連鎖・・・につながって行っているように思える。
結局苦しみを味わうのは一番下の末端の世界で生きている庶民。
父親なんて自分が負傷したから仕事できない、という理由で嫁と子供に当たり屋をさせるとんでもない人であり、しかも自分たちのことがばれそうだから宿は別々に取ろう、という時も自分はええホテルに泊まって嫁と子供にはさっぶいさっぶい暖房もつかないような安い宿に泊まらせる。
こんな男どこがええねん
とも思うのだが、もうお互い依存しているので離れる事はできないんだろうね。
大人はどうでもええけど、学校にも行かせてもらえず、当たり屋させられている少年が不憫でしゃぁない。
もう、これもたどっていけば日本が戦争をして・・・というところまでさかのぼることもできるが、やはり父親がなぁ・・・と私は思うのだ。
なんか今の時代でもいそうやわ・・・こういう家族。
結局何も変わってないってことかな。
なぜか2時間サスペンスドラマ張りに日本海側を北上していく家族。
学校にも行かせてもらえず家族とだけしか接点がない少年だがいろんなことを経験して成長していく。
最後日本の最北端にだとりついたとき少年が
「日本がもっと広かったらいいのに」
とつぶやいたのも印象的・・・
もう逃げられないのを悟ったのか。
この北海道で少年の心を大きく動かす事件が起こる。
これによって少年はだいぶ当たり屋に対する気持ちが変わったのではないだろうか。
小さな弟と雪の中で二人で話す・・・と言っても少年が一方的に話すだけですがそのシーンからもそれは観て取れる。
最後警察につかまった時に
「おかあちゃんのことは好きや!!!」
て質問の答えになってない事を叫ぶ少年の姿を観て・・・うぅ・・・
んで、その前に警察が来た時父親もかばおうとする姿にも・・・うぅ・・・
そして何より少年の一筋の涙に私も涙でしたわ・・・・うぅ・・・
『戦場のメリークリスマス』『御法度』『愛のコリーダ』・・・と来て、この映画だったのですごくまっとうな映画ではございませんか!と思ってしまった。
昨年観た『絞死刑』もかなり大島監督の心と言いたい事が溢れる”ぐわぁぁぁぁああ!!”と圧倒される映画だったので。
今回結局4本しか観る事ができなかったけど、これが一番好きだったな。
次に大島渚監督特集あっても観たいかも。
くうこのおまけ
・高知の出身だからか「まっこと・・・」という言葉がよく出てくる。友人にも高知出身がいて「まっこと」てよう言うてたなーって思いだした。
うりぼう5つ:
ありがとうございました☆