何が良くて何が悪いのか・・・??
監督:西川美和
(2009年/日本/127分)
【ストーリー】
山間の小さな村のただ一人の医師、伊野が失踪した。村人たちに全幅の信頼を寄せられていた伊野だったが、彼の背景を知るものは誰一人としていなかった。やがて刑事が二人やってきて彼の身辺を洗い始める――。失踪の2か月前、東京の医大を出たばかりの研修医・相馬が村にやってくる。看護師の朱美と3人での診察の日々。そんなある日、一人暮らしの未亡人、かづ子が倒れたとの一報が入る……。
【かんそう】
前作の『ゆれる』が非常におもしろかったので今回もとても期待して観に行った。
『ゆれる』とは全く別物映画なので比べるとかそういうのはできないけれど、西川監督お得意の(?)人間の二面性・・多面性・・・奥深~いところにある人間の心理・・・というものはすごく細かく描かれていた。
何がどう・・・って説明なんてひとつもないのに人間の心理をうまく表現している。
役者の力量、西川さんの観察力、脚本・・・全てがうまく融合している。
うまいよね。
また、鶴瓶師匠を起用したところもナイス!
鶴瓶師匠・・昔、ドラマでヤクザの親玉っていう悪の役を演じてはったんやけど、それが、妙にマッチしてて、
鶴瓶師匠・・・こんな役やらせたら実はピカイチなんじゃ?!
と、思ったことがある。
今回もそういう影の部分を持った医者の役なのだが、村人たちから神より、仏よりも!と信頼を寄せられる伊野先生(つるべ)の過去や背景がどんどん明るくなっていくうちに・・・
自然と伊野先生の闇の部分も見えてくるのだ・・・
こっからがっつりネタバレです。
伊野先生が抱える大きな闇は「ウソ」
それも『無免許医師』という大きなウソ
無免許・・・というウソは罪だ。
あかんよな。っていうかあかん。
だが、この村で伊野がおこなっていたことは罪だろうか・・・
この村では、免許ありの形だけの医師よりも・・・
こんな伊野みたいな「人」の方が必要だったのではないだろうか・・・
そんな風にさえ思える。
毎晩医学書を読んで勉強している伊野の姿がけなげで痛々しい・・・
彼は彼なりにみんなの期待にこたえようとしていたのだ。
根っから悪い人じゃないんだよねぇ・・・。
だまそうと思ってだましに来たわけじゃないんだよねぇ・・・。
常に罪悪感・・・持ってるんだよねぇ・・・。
その伊野が持っていた「心」は伊野と研修医・相馬(瑛太)との本音でのぶつかり合い、製薬会社の営業マン(香川照之)が刑事と話をしているシーンでわかる。
でも・・・看護師(余貴美子)も・・・営業マン(香川)も・・・・本当はニセ医師って気づいてたんじゃないだろうか・・・。
営業マンは完全気づいてたのはあるシーンでわかる。
看護師もあのシーンで・・きっとわかってたんじゃないだろうか・・・というのがわかる。
しかし、看護師にしても、営業マンにしてもわざわざ、自分も含め、成り立っているものを壊す必要がない、そういう思いで何も言わなかったのではないだろうか・・・
そういう彼らの心理の揺れも伊野ほどではないが、ゆらゆら・・・っと見え隠れする・・・。
しかし、本音はわからない。
そして、鳥飼かづ子(八千草薫)が自分の病気を医者である娘に言わないでほしい・・・という願いから出た言葉
『先生・・・一緒に嘘ついてくださいよ・・・・』
この嘘を引き受けた伊野・・・
さぁ~!!この嘘・・・突き通せるか?!
相手は免許ありの医者でっせ?!
これが伊野のニセ医者としての大きな・・・そして最後のバクチとなるのだ。
いやぁ・・本当に見ごたえありましたわ。
笑いも十分ちりばめられていて、それは鶴瓶師匠だからこそあの笑い!という感じだったなぁ。
そして俳優陣にもハズレなし。
私、瑛太ってそんな好きな俳優でもないし、どちらかというと何で人気あるのかわっからんわぁ・・と思っていたのだけれど、今回の役は彼でアタリ。
前作のおだじょーとかは?って考えたところ、彼も結構カゲのあるミステリアスな感じなので、あの瑛太が演じた研修医みたいな世間知らず役はちょっと・・・おだじょーでは渋すぎだわ。
そう考えたらやっぽり瑛太かなー。
あと、八千草薫の上品で美しいこと。
たとえモンペ姿でも美しい。
品のある人って、何歳になっても美しいんだなぁ・・・って思ったよ。
だんなは鶴瓶さんファンなので誘ったらほいほいついてきたので一緒に観たのだが、
『何が本当で何が嘘かって一言では片付けられへんような映画やったな』
って言っていた。
そうだね。グレーな映画だったねー。
白黒はっきりわかっていたのは伊野が免許なしで、鳥飼かづ子さんがガンで・・・と書面ベースの事ばかりだったね。
うまくまとめられてない感想ですが、とにかく、私は観にいけてよかったなぁーと思えた映画ですわ。
人が少なくなるのを待ってよかったぁ・・・
為になったわぁ~、とか、刺激になったわぁ~とか・・・そんなような映画ではなかったけれど、なんだろうな・・・
いろんな「おもしろい!!」要素がたくさん入った映画だったな。
うりぼう5つ: