【捨てるゼ!レヴォリューション】








どうも物持ちがいい。

と言うか、捨てられない。

テレビのNEWSでゴミ屋敷のおやじが同じ事を言っていた。

「どうも捨てられない」

これじゃあいかんとハッとさせられたが、それがなかなか難しい。

特に本を処分できない。

かつて自分の血肉を作ったマンガや単古本、雑誌は到底無理だ。

よく部屋を片付けると言って、昔のマンガが出てきたら

散らかった中に埋もれてマンガを読んでしまうあのタイプだ。

最近は忙しいので気をつけているが、油断するとマンガを手に取り

「いやいやちょっと待て」と「いやいや少しだけなら」の葛藤の中で

結局読む。






そんな自分が、持ち物の殆どを捨てた事がある。

それは今のバンドを組んだ直後だった。

全てを一新したかった。

自分に革命を起こしたかった。

それまでのダサイ自分を全て捨てるのだ。

そして全てかっこいい物でオレを囲む。

昔やっていたバンドの録音テープも殆ど捨てた。

今思えば、結構いい曲作っていたのにと残念だ。

家も変えた。

初めて風呂付きのアパートに引っ越した。

引っ越したはいいが、近くにお弁当屋さんがある事が許せなかった。

今日からテレビも見ない、フォークとナイフしか使わない。

今から考えれば突っ込みどころ満載の自分革命だが、

本人はいたって大まじめだ。

田舎から出てきて、パンクロックを知った。

ロックンロールを知りブルースを知る。

それにのめり込む事で、自分がやりたい事の見極めが、

はっきりついた瞬間だった。

あれはかっこいい、あれはかっこわるいと、勝手に思い込む。

それにしても何でもかんでも捨てなくても。

ちょっと尋常じゃなかったなと思えるのが、

中学高校の時の写真、そして卒業アルバムまで捨ててしまった事だ。

田舎に置いときゃよかったよ。

青春の狂気って奴は、思い込んだら全く後先見ない。

後年、中学の同窓会でその事を先生に言うと、

同じテーブルに座っていた学年一美人だったクラスメートに、

卒業アルバムのクラス写真の所をカラーコピーして、

オレに送るようにと指示をしてくれた。

その子には迷惑な話だったろうけど、しばらくして送ってきてくれた。

ありがとう!感謝してます。

結局、お弁当屋さんにもよく世話になった。

テレビも見るし、箸も使い放題だ。

そして物はそれからどんどん増えていき、引っ越すごとに

トラックが大きくなっていった。

そろそろ見切りを付けて片っ端から捨てていこうと思っているが、

果たしていかに。






冒頭でゴミ屋敷のおやじの話をしたが、

オレが物の殆どを捨てた頃、ある美大生の家にお邪魔した事がある。

彼の家もなかなか凄かった。

1Kの家は玄関から、雑誌や服などが左右に折り重なり、

歩ける部分だけ、わずかに下が見えるケモノ道の様になっていた。

一畳程のキッチンには、腰ほどの高さの冷蔵庫があり、

本や食器が積み上がっている角に、赤いプチトマトが一個だけ

ちょこんと載っていた。

部屋の襖を開けると友人が窓脇に座っていて、

「やあ」と答える彼の元に行くまで、再び本や衣類がよけられた

ケモノ道を進み、ようやく彼と談笑する。

「じゃあ、帰るわ」と帰るのだが、

帰る間際に、冷蔵庫の上のプチトマトに話題を転じると、

プチトマトじゃないという。

聞くと、それは何と!

ひからびすぎてプチトマトの大きさになったリンゴだった。

ヒエ~!