【浅草寺の煙】



先日、アメリカの友人を浅草に連れて行った。

だいたい初めて来た外国人は浅草と原宿と相場が決まっている。

いつも他にどっか無いかなと思いつつも、結局そうなる。

でも連れてくれば、やはり相場通りでよかったと思う。

雷門をくぐり、仲見世通りの店で、まずは人混みをかき分け

人形焼きや濡れせんべいを買ってあげ、それを一緒に立ち食いしながら、

浮世絵の店に入り込んだりする。

刀や着物などに興味を持ちそうだが、ちょっと顔を向けるだけで

気もそぞろに歩いて行く。

オレも海外の観光地でお土産屋を歩く事があるが、

そこにあるお土産に興味を持てる物はほとんどない。

だから彼らもそうなのだと歩いて行くと、何か心当たりの物があったのか

セイジちょっと待ってと人混みを引き返したりする。

しばらく姿が見えなくなり、首をのばして角で待つと、全然あさっての方を

向きながら歩いてくるので、おうこっちこっちと手招きして誘導し、

やっとこさで仲見世を抜けると、目の前に浅草寺だ。




浅草寺の本堂の階段手前には煙がもうもうと立ち上がる

大きな香炉がある。

焚かれたお線香がたくさん突き刺さしてあり、

他の観光客がそこに頭を向けて煙をあびている。

その姿を見て、彼らは興味を持つらしくあれは何をしているんだと

自分に尋ねる。

自分はそこで待ってましたとばかりに、煙を手ですくうようにして、

あの煙を浴びると頭がよくなるんだと教えながら

「ほら、だからユーはいっぱい浴びなきゃだめだ」

と煙を頭にかけると、本人は思い当たる節があると見え、

ニヤッと笑う。

本堂でお参りをして、五重塔の横を通り、花屋敷の前で少し講釈をたれ

一通りグルッと回ると、

だいたい外国人が好きなお好み焼き屋に入る。

お好み焼きを作る係はオレだ。

当然うまいのを食べさせようと、ぐねぐねぐねぐねネタをかき回し、

そりゃあと鉄板にジュウっと流し焼くのだが、

先日、大失敗した。

食べ終わってアチャ~と頭を抱えた。

何か味が薄い、何でこんな味がイマイチなんだと思ったら案の定だった。

マヨネーズをかける事をすっかり忘れていた。

それを伝えると

「セイジは煙を浴びなかったからだ」

大笑いで仕返しされた。




浅草だけが、東京で唯一、大阪に対抗できる何かがあるように思う。

大阪はおもろい。

大阪がなかったら日本はかなりつまらない国になっていただろう。

大阪に行くだけで、テンションがググッと2,3段上がる。

だいぶ前、おばちゃんがおばちゃんをスーパーの買い物カートに載せて

裏道をワー言いながら目の前を通り過ぎた時にはぶっとんだ。

だが、似た感じが浅草にもある。

変な人がいる。

変な人がいるって書くのもおもしろいが、

他の町の変な人は、町から拒絶されている感があるが、

浅草は、大阪同様そういう人を許す雰囲気にあふれている。

花屋敷からの通りの両側には、テーブルを外に出した居酒屋が並び、

昼間から酔っ払いでにぎわっている。

その雰囲気も自分は大好きで、

いつか昼間から仲間とこの場所に来て、

飲んで笑って店をはしごしたいと思っている。

それが密かなる自分の夢なのだ。