【バミューダの記憶】





「きっと、新バミューダトライアングルに違いない!」

オレはすぐにこんな風に考えてしまう。

マレーシア航空事件の事だ。

パラレルワールドへの入口が空のどこかにぽっかり開いていて、

そこにピンポイントで突っ込んだ。

彼らは少し異常を感じるが、そのまま目的地に到着する。

しかしそこは今の世界と同時並行に存在する「もう一つの世界」だった。

もしくはブラックホールのような入口に入り、今より20年後の空に

突然飛び出した。

オレはよく飛行機で海外は行く機会が多いので、自分の飛行機が

そんな世界に迷い込むことを想像したりする。



消えると言うと、記憶が全く消えて現れた事があった。

酒の失敗だ。

オレの数ある失敗の中では、それほどではないかもしれないが、

被った人は迷惑で、かけたオレもトホホだ。

ある日の事、夜通し飲んだオレは、朝方マンションに戻り、いつものように

玄関に鍵を差し込んだ。

しかし何度ガチャガチャやっても開かない。

「あれ!?」と考える間もないうちに、中でガチャっと鍵が開く音がしたと

思ったら、いきなりバ~ンとドアが開き、チェーン越しのわずかな隙間に、

見知らぬおばさんの顔が出たから、ぶったまげた。

そして間髪入れずに激しく恐ろしい叱責。

ヘアーカーラーをつけたすごい形相、それがなぜか般若のお面に見えた。

(記憶とは言え、ごめんなおばちゃん!)

ギョエっと恐れおののいたが、何が起きたのかすぐに理解した。

ここは8階、オレは9階。

すかさず謝り9階に上り自分のドアを開け、後はそのままバタンと寝た。

しかし起きたらこの記憶は全く消えていた。

いきなり現れたのはだいぶ経っての事だ。

何かのきっかけで、鮮明に登場した。

当然、アチャーと凄まじく恥ずかしかったが、後の祭りだ。

しかしその時、不思議な気もした。

こんなに鮮明な記憶が、影も形もなく姿を消すことがありうるのだと。

まさに脳のバミューダトライアングルに入り込んでいた記憶が

突然、姿を現したような感じだった。

まあ、それ以降は似たような記憶の失踪は頻発してるけどね。



マレーシア航空370便は本当にいったいどうしたのだろう。

こんな大ニュースで、こんな不思議な事件も珍しい。

オレの記憶のように、ひょんな所から現れてくれればいいと思うのだが。