【クリスマス高校生】





その日は吹雪いていた。

しかし帰らねば!

校舎裏のチャリンコ置き場に来ると、屋根の下手前まで雪がこんもり積もっている。

まあ何とかなるだろう。

後輪に盛り上がる雪をフワっと押してサクっとバックさせ、

吹雪の荒野に飛び出した。

おりゃあ!と勢いよく漕いだが、とてもとても。

20cm位に積もった雪は、ギュッギュッ右に左に滑って漕げやしない。

しゃあねえ、押すか。

裏門を出て、同じくチャリンコに踏まれた雪にすぐ積もった

白いパウダーのような雪の上を、押して押して鼻にしわを作った。



今日はクリスマスイブだ。

オレは17才、田舎の男に彼女なんていやしない。

欲しい気もするが、いたらいたで面倒臭い気もする。

何話していいかわからんし。

小学生の頃まで、クリスマスは結構楽しかった。

紙の靴には入ったお菓子が好きだった。

目が覚めた時のプレゼントも嬉しかった。

だんだん大きくなって遅く寝るようになると、

オレ達はまだ起きてるのに、父親がさっさとプレゼントを置いて、

自分の寝床に向かう背中を憶えている。

思えば、あれがプレゼントの最後だった。

その後、小6の時オレがサンタをやっている。

丁度遊びに来ていた山口のおばあちゃんにお金を借りた。

その金でオレは、父母妹弟の全部のプレゼントを揃えた。

あの夜はなかなかドキドキしたゼ。

オッと別にいい事をしようと思ったわけじゃない。

初めての体験にスリリングとサプライズを楽しみたかっただけさ。

ちゃっかり弟のプレゼントは、自分も遊びたかったおもちゃにした。



ハンドルを押し吹雪をびゅんびゅん顔に当てながらズボズボ歩く。

手は冷たいのに身体は熱いゼ、吐く息が真っ白だ。

遠く茶臼山の上空は、真っ白に渦を巻いているようだ。

サンタはあの乱気流に乗りながらやってくるのだろうか?

上空をソリで飛ぶサンタを、白い吹雪の向こうに一瞬だけイメージした。

やれやれ後もうちょいだ。

田んぼ道の遠くに家近くのスーパーが見えだした。



クリスマスの時間は嫌いじゃない。

高校生のあの頃は特に何にも無かった。

だから別にどうでもっと思っていても、やはり何か、クリスマスは、

気がつかないうちに心に不思議なベールをかけていた気がする。

周りの空気が普段より少しキラキラしている。

でも高校生にはな、そんな事どうでもいいか。

後で気がつくんだよな。

さて、クリスマスも終わったゼ。

やはり一年早い、もうすぐ正月に突入だ、なんてこった。