【アジアの仮面】




機内アナウンスが中国語から日本語に変わった。

「当機は一時間遅れて広州インターナショナル空港へ到着します。

ご理解の旨よろしくお願い.........」

並ぶシートから、首半分飛び出し「なぬー!?」っとオレ。

ちょっとやばい、メルボルン便の乗換えまで30分しかない。

飛行機が到着してみんなで乗り換え口に急いだが、

そこでの返事は無表情にNOだった。

赤い制服を着た中国人のお姉ちゃんに英語で言われる。

「メルボルン行きには乗れません、明日の朝9:00の便になります。」

わずかに「えっ?」と思ったが、すかさず聞き返す。

「今晩のホテルはそちらで用意してくれますよね」

「はい、そうです」

しめしめ、幸いにも明日は到着のみで、その後の予定はない。

ライブはあさってのタスマニアからだ。

という事は、どういうことだ!

生まれて初めての中国の夜を、楽しめるってことじゃないか。




ギターウルフツアーマグマ2013AU&NZ。

このツアーもいよいよ大詰めだ。

成田でメルボルン行きの中国南方航空に午後3時半に乗り、

飛行時間5時間で中国の広州に到着するはずだった。

広州での乗換え時間は1時間半なので、少し短いかなと思っていた。

やはりその通り、飛行機は一時間遅れ、結果は心配した通りになった。

でもノープロブレム、つかの間だが、空港以外の中国の地に立てる事に

少しワクワクした。

同様に乗れなかった連中が、自分達を含め10人くらい待合室に

待たされる。

やがて、赤い制服のスタッフの案内により、なんか変な団体が、

近代的な空港の中をゾロゾロとバス乗り場へむかった。




空港近くと思ったホテルは、バスで意外に走り、

荒い運転の窓から見た暗い空の上の方に 

○○○○○酒家という文字が光るでっかい建物が見えたと思ったら

そこだった。

酒家というのはホテルという意味もあるのかと思いながらバスを降り、

フロントに向かう。

ロビーにはサンタクロースのマネキンがぽつんと立っていた。

デコレーション不足なのか、中国の色なのか、そのサンタはまるで

孔子や孟子の世界で、手を振っているようだ。

「部屋は一人一人だが、それでもいいか?」

もちろんそれでいいよと部屋の鍵を受け取るが、まずはレストランが

閉まるからディナーだとみんなで行きビールを飲み、食事を頼む。

偶然できた不思議な時間と空間を少し楽しみ、明日は早いから

そろそろ部屋に行って寝るかと上の階にエレベーターであがり、

部屋のドアを開けると驚いた。

なんと部屋はスイートルーム、しかもそれが一人一部屋だゼ、ワオ!




目覚ましが鳴り、朝飯を食べ、6時発のバスに揺られて空港に向かった。

あわただしいが、ちょっぴりの幸福感を味わったせいか、

気分は晴れ晴れとしていた。

空港に到着し、ゲートに向かう。

ゲートに行く前に手荷物と身体検査を受け、パスポート審査を通る。

すると「おっとっと」中国もやっぱりそうか。

日本でいつも思っていたことをここでも思った。

朝っぱらから気分がよかったせいか、感じ方は少し強かったかもしれない。

日本とアジアはすごい、でも、和式トイレと人の表情は西欧に負けるなあ。

特に空港で目立つ。

空港スタッフが異常なくらい無表情だ、まるでマネキンじゃないか。

朝から殺伐としてやがる。

アメリカやヨーロッパだと、このあたりはちょっと違う。

結構通るのが楽しかったりする。

表情が豊かで、相手の目をキョロっと覗き込んで話しかけてくる事もある。

パスポート審査でも「Heyブルースリー、今日はロックの演奏か?」や

ドラムのリーゼントを見て「Are You エルビス?

なんてジョークも飛び出す。

しかし日本を含むアジアはそれが皆無だ、全く無機質。

サンキュー!シェイシェイ!カムサミダー!ありがとう!

と叫んでも全く返ってきやしねえ、どういうこっちゃ!

しまいにゃあ怒るでホンマ!

台湾に住むアメリカ人デイビットがかつてオレに言った事がある。

東京は面白いが、東京フェイスが気持ち悪い。

わかる気がする。

外人が、日本を映画で撮るときにいつも強調するのは、

日本人の無表情だ。

オレ達はアジア人、愛するアジアよ、もうちょい表情豊かに

相手を楽しませようゼ。

空港は国の入り口じゃないか。

まあでも、夕べのスイートルームはよかったよ。




今オレ達は、同じ経度にあるオセアニアのAU&NZに向かう

飛行機の中にいる。

もう、ロックでがんがん、飛ばしちゃうゾーー。

しぶきを飛ばして、相手の顔に思いっきり近づいてロックンロール!だ。

まかせい!