【イナズマFLY!】



高校の帰り道、突然、豪雨にみまわれた事がある。

別に珍しい事ではないが、この時はちょっと良く憶えている。

チャリで高校の裏の坂を下りると田んぼが広がっている。

下りきった所に三叉路があり、まっすぐ行くと八重垣さんだが、

オレはそこを左に曲がる。

道は、左に用水路、右に田んぼで、車一台が通れるくらいだ。

そこを自転車でクネクネ行ってると、雨がポタポタ来た。

上を見ると重そうな雲が今にもはじけそうだ。

「急ごう」なんて思わなかったかな、どうせ「まだ大丈夫」と思っていたろう。

するといきなりザザーで、ピカッ!でドッカ~ン!だ。

ちょっとぶったまげた、当然ペダルをこぐスピードを速める。

ザーという音にうつむく目で見る田んぼは、一面、雨のマシンガン。

片側の用水路は、もうすでに濁流になり、ゴーっと音をたて

水があふれだす。

そして頭上から何度もバリバリドッカ~ン!

「うっぎゃあ!」と鼻にシワを寄せ、必死にこぐ、こぐ、こぐ。

気がつくと目の前にはもはや道はなく、茶色い泥水の池の様になっていた。

でも高校生はバカだから、

自分の勘を過信して、スピードを落とさず突っ切っていく。

その辺りで田んぼに落ちた。

前からか後ろからか来た車を避けようとしたような?

「ウワッ」と思ったがどうにもならない。

道横の1m位の斜面を斜めにすって、前のめりになりそうだったので、

自転車を蹴って、自分から田んぼに飛び込んだ。

バッシャ~ンの後、いきなり視界が変わっていた。

田んぼを次々と突く、雨の太いラインが真横にあり、

それがいちいち小さなしぶきをあげる。

田んぼの向こうの方は、遠く霞みがかかったようだ。

下から見上げるさっきまで走っていた道もなんだかぼやけている。

なんか、どうでもよくなった。

しばらくそのままでいた。

しばらくと言っても一分くらいだと思うが。

やがてズボズボっと立ち上がるとチャリは足元だった。

雨の中、起こし、そして道に投げ、田んぼから這い上がった。

全身泥だらけ、でもどうでもいい。

何か、笑うような、気持ちがいいような。

だが、二度と落ちるのはいやだから、少し慎重にペダルをこいだ。

そして後は雨にふてくされて、思いっきり浴びて帰った。

パンツびしょびしょ。

遠く近所のスーパーが見えたあたりで、雨は弱まり、

ぐっしょりした学ランが重く感じだした。



先日のゲリラ豪雨は結構すごかった。

そしたら、いつか書こうと思っていた田んぼに落ちた話しを思い出したよ。