【北風シェイク】



通っていた湖南中の前には長い長い坂道があった。
それを自転車で毎日毎日上る。
夏は地面に汗をポタポタ落としながら上る。
雨の日は合羽からでるハンドル握る手の甲に雨を受けながら上る。
しかし、一番のくせものは、坂の上から吹き降りてくる北風ビューであった。
鼻を団子鼻に目をつりあげ、口を前方後円墳のように半開きにし、
ハンドルを右往左往させながら、ギコギコ上る。
上目向こうの坂の上からあたってくる北風ビューを、
さらさらの髪の毛と学ランでバタバタうけ、後ろに流す。
わずか一瞬後ろが見えると、自転車から降りて押す脱落者が

何人か見えたが、オレはひたすら漕いだ。



頂上まで上ると、ちょっと下り坂になる。

その向こうに広がる湖南中まで、ゆるやかにチャリを走らせ門をくぐる。

やったゼ、風に勝つ!

オレはアホなので、そういう事に昔からムキになってしまう。

オレは生まれてこのかた、上り坂で自転車から下りて、

押したことがないのだ。



でも、富士山に登った時、下山の途中、自転車を肩にのせて登ってくる

米軍の一団を見たときにはぶったまげた。

富士山の道は狭く渋滞なので、漕いでは上がれないが、

それ以上のすごさ。
登った時のきつさが、当然なまなましいから、信じられなかった。
あれは、相当すごかった。



北風ビュービューのこの季節、学ラン前のめりで、風に向かって

チャリを漕いでいた事をよく思い出す。

うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!

そうさ、人生は北風だ。

オレ達はいつも北風にむかって突き進んでいるのだ!

イエー北風シェイク!アホだゼ。