【何、言葉がおかしい!?】


小学校3年生の時だった。

父の転勤で、長崎から大阪に引っ越した。

住所は大阪市北区天満。

淀川を挟んで割合近くに大阪城がそびえていた。

その淀川沿いに桜並木で有名な大阪造幣局がある。

その造幣局と背中合わせに小学校があり、そこに通うことになった。

滝川小学校といって、そこに一年間いた。

後から聞いた話だが、父親は大阪になじめなかったらしい。

しかし子供、つまりオレは、水を注いで混ざるようにすぐになじんだ。

ただ、言葉の違いを少しだけ感じていた記憶がある。

でも小3は、それが方言によるものだと気がついて無い。

同じ日本語で「なんか変だ、でも気のせいかな」くらいに思っていた。

だからすぐに、大阪の友達と同じ言葉をしゃべるようになった。

しかし、ある時思った。

長崎の言葉で“バッテン”とある。

オレは長崎の頃、この“バッテン”をよく使っていた。

気がつくと、しゃべるタイミングのどこに“バッテン”を入れればいいのか

すっかり、わからなくなっていた。

そんな頃だった、学校の授業で先生が、方言の事について話してくれたのは。

「地方によって独特の言葉、イントネーションがある、それを方言という」

そんな風な説明だったと思う。

すると突然、一番後ろに座っていた男の子がでっかい声で言い放つ。

「だから、阿武は最初、変な言葉を使っていたのか!」

なるほどという顔が、いっせいにオレを向いた。

「変な」というのは少し心外だったが、オレも一緒になるほど顔になった。

でも、ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれ!

オレはいつも、記憶のこの場面に突っ込みを入れる。

「長崎弁は確かにきついなまりがある、

しかし大阪弁にそれを言われるのはどうよ?」

何か納得の行かないおかしさがあり、この部分でいつも笑ってしまう。

そして大阪の友達の、自分達は普通で君は変というのに疑いのない

満足そうな顔を思い出して、またもうひとつ笑う。





方言はいい。

今、オレが時たまでる方言は、出雲弁だ。

でも、長崎弁にしろ、大阪弁にしろ、そして、出雲弁にしろ

テレビの影響で、方言のきつさが無くなって来ているのが、残念だゼ。

その地方地方で、その土地の言葉しか使わないニュース番組が

あってもいいといつも思う。

特に大阪のホテルでテレビをつけたりする時にはよく思う。

大阪のテレビで思い出した。

ギターウルフで大阪に行くようになり、ホテルでテレビをつけた時に

巨人戦がやっているのに、他のチャンネルで

阪神戦がやっていないのには、ものすごくびっくりした。

オレはそれまで、大阪のテレビは阪神戦だけを放送するものだと思っていた。

大阪はそれくらいエゴが強い方がおもしろい。

これも子供の頃に向けられた、みんなの満足そうな顔の影響が、

あるのかもしれない。