【ランブル・イン・ブライトン】


オレはいつも自分の力を過信して生きている。
しかし、去年のイギリスブライトンはひどかった。
ちくしょう、オレのプライドがズタズタだ、にゃろめ!


2011年の7月9日ブライトン。
前日のロンドンでスーパーライブを見せつけて、意気揚々と乗り込んだ。
ストレイキャッツが歌う‘ランブル・イン・ブライトン’でこの町を知る。
この歌のせいか、ブライトンはケンカの町のイメージが強い。
人でにぎわう石畳の町の2階にクラブはあった。
天気はどうだったろう、曇っていてそんなに暑くなかったイメージがある。
しかしその夜、クラブ内は異常に暑くなる。
夜8時頃、ショウがスタートした。
サウンドチェックの時から、地元のサポートバンドはなかなか挑戦的だった。
「ふざけんな!」とオレには燃えるものがあった。
お前らどんなもんじゃと、ステージ袖から彼らのライブを見た。
確かになかなか気合の入ったパンクバンドだ。
しかしその頃からクラブ内の温度は上がり始め、そいつらはすでに
全員上半身裸だった。
「暑いか!確かに暑いが、これくらいの暑さ屁でもねえ、年季が違うわい!」
と息巻いて、ぶっ飛ばしたあげくのオレのあの様だった。
屁はオレだ、ちくしょう!


薄暗い照明の中、目前まで迫る客に対峙する。
しかし後半オレはふらふら。
仕舞いには、目の前の客の女の子が心配する始末だ。
それでもいつもならば、何とか力強さは残るが、全く力がナッシング。
そして遂に、挽回が効かないままショウを終えた。
楽屋でしばらくハアハアうっつぷし、そして椅子に座り苦虫をすりつぶした。
ちくしょう!
この感じ、何十年か前のスイス、ドイツで味わった。
しかし、あの時は直前の日本での放蕩ぶりがたたった結果だった。
今夜はどうしたことだ。
身体は絶好調だった。
確かに暑かったが、これくらいは何度も修羅場をくぐってきている。
空気がなかったのか?それはわからない。
わかっていることは自分が無様なライブをしたってことだ。


クリスティーンが楽屋に戻ってきた。
クリスティーンは、フランス人のおばちゃんだ。
この数日間、オレ達とまわっている対バンでキーボードを弾いている。
この夜、地元のバンドの後に演奏し、その後オレ達の物販を売ってくれた。
「メガネが曇って大変だったわ」
ふ~ん、あんた達よくやるわって顔でドライに笑った。
そしていきなり早口のフランス語で、他のメンバーとのおしゃべりに
突っ込んでいった。


今オレ達は、イギリスをツアーしている。
あの夜のブライトンの記憶が蘇る。
しかし、起死回生を狙うべきのブライトンは、残念ながら今回は入っていない。
でもそれはいい、次の機会にでもやることがあるだろう。
ツアーは何が起きるかわからない。
油断大敵だ。
状況を把握しながら、その状況を全部受けきる。
そしてそのままぶっとばす!
暑いからと行ってぶっ飛ばすスピードをゆるめちゃいけない。
怖がるな、大丈夫、大丈夫、自分の力をさらに、もっともっと過信しろ。
バカは死ななきゃなおらない。
お前はバカだ!
イエー、ランブル イン UK!