【コカコーラ・ヴォルテージ】


幕末のアメリカ人が驚いた。
「日本人は白い紙の家に住み、黒い紙を食べる」
はて!?何のこっちゃ?と思うと、黒い紙とは海苔の事だった。
何かの本で読んだ。
そう言えば黒い紙に見えないこともない。


こんな話をしたのは、今回のEUツアーだった。
どこの国の楽屋だったろう。
確か、サウンドチェック前後に飲んだ冷蔵庫のコーラがうまかった。
クロアチアだったかな。
EUのコーラはなぜか不思議とうまい。
話の始まりは、ドラムの倉ちゃんが話し出した海外の巻き寿司の話だった。
西洋の巻き寿司は、海苔が外に巻かれずに中に巻かれているのが多い。
西洋人は黒い食べ物を不気味に感じるから、海苔を外に巻くのは
抵抗があるようだ。
そんなアメリカ人が、それをバリバリ食べている日本人を見た時、
さぞ不気味に感じたろうなんて思いながら、上の話を付け足した。
すると倉ちゃんが、いきなり思いついたように言った。
「でも、コーラなんて真っ黒じゃないですか!」
そりゃそうだ、石油みたいだ。
「コーラどころじゃない、真っ黒の毒みたいなお菓子だってありますよ!」
そこでみんなで一発笑うと、突然オレに幼い頃の記憶が甦った。
初めてコーラを飲んだ幼稚園の時だ。
そこには黒い液体を不気味に見ている幼いオレがいた。
そうそう思い出した、オレは最初、コーラを不気味に感じたよ。
結局、その不気味な液体を作ったアメリカ人が、海苔を不気味に感じるのも、
何か変で、あいつ等やっぱり身勝手だなあというところでみんなで笑い、
その話は終わった。


プシュっでゴクゴク、そしてシュシュワ~、コーラはうまい。
夏の暑い昼間、毎日毎日毎日、ものすごく飲みたかった記憶がある。
中学校の時、オレのクラスは3階の端っこにあった。
ベランダを出れば、横は非常階段になっていて、夏はよくそこでたむろった。
白シャツの胸がはだけた4,5人の学生ズボンが、だらしなく足を階段に放り出し、
うだうだしながら、入道雲が浮かぶ青い夏の空を見上げていた。
「ちくしょう!コーラ飲みてえ」


ぬるい水道水はもうごめんだ。
中学の夏の非常階段で、ヒリヒリしながら何度も思った。


高校の時には自販機があり、コーラは自由に買えた。
中学の様な思いをした記憶はない。
逆に、高一の夏、オレは一日の水分を極力控えてみようと思った時があった。
なぜならオレは相当の汗っかきで、特に夏は汗がすごかった。
朝昼晩の三食とも、熱いお茶一杯のみにしてみた。
結構がんばったかな。
だが、秋になり9月の学園祭で、二年生がやっていた喫茶店に入り、
綺麗な上級生が運んできてくれたジュースをがぶ飲みしたら、
一発でゲリになった。
それっきり、やめた。
だが、そのがんばっていた間でも、剣道の部活の後のコーラだけは
やめなかった。
「これだけは勘弁してくれ!」
自販機前で、瓶をゴクゴクしながら、頭をキーンとさせた。


時折、激しくコーラを飲みたくなる時がある。
麻薬が入っていると言う噂がさかんに流れた時もあったけ。
コーラの歴史は100年以上、そしてその味は未だにトップシークレットだという。
この微妙なうまさを、あんな昔に作り上げた製造者の事を思うと、
「う~ん、すごいなあ」とオレはいつも畏敬の念をいだくんだ。
発明品の中でもトップクラスだろう。
今年の夏も、まだまだコーラをよく飲みそうだ。


ところで、高校の学食でカレーを食べる時、オレは必ずコーラを飲んでいた。
そのせいか今でも、カレーを食べる時には、オレはだいたいコーラを飲む。
でも科学的にも、味的にも、メチャクチャ相性がいい気がするんだ。
そう思っているのはオレだけか!?