【ホット、ホット、ホット!ハンブルグ】


瓶ビールを一気に飲み干すと、

オレはそいつを、横の壁に思いっきり叩きつけた。

ガッシャ~ン

キャーーーーーー

悲鳴走って空気ビリビリ、

左ほほに飛び散るガラスを受け、間髪入れずに叫ぶ。

「ミサイルミーーーーーーーーーーーーーー」

ビリーが叫ぶ「1,2,3,4!」

爆音天井!長方形のせますぎるクラブがいきなり発狂した。


1997年、ギターウルフは初めてヨーロッパにやってきた。

その記念すべき最初の地は、ドイツのハンブルグという町だった。

繁華街の裏通りの狭いクラブがライブ会場で、

そこに客がギュウギュウ詰まった。

ステージは2畳ぐらい、いやもっと狭かったか。

そこにドラムと2台のアンプとオレ達で、立つのがやっとだ。

あの夜、そのわずかな隙間でオレ達は燃えに燃えた。

ステージは狭い割りに高く、

足を踏み外すと、目の前の客の間に真っ逆さまに落っこちた。

何度も何度も落っこちた。

でも関係ねえと思った。

オレ達のロックを、ひたすら浴びせて浴びせて浴びせてやれ!

オレの体はこんなもんじゃ壊れない。                          
燃えるこころがオレ達を支配する! 


欲望渦巻くドイツハンブルグ。

この町を訪れた者ならわかるだろうが、ハンブルグの町はエロい。

到着した頃から、アメリカ人のマネージャー、スティーヴが興奮していた。

「オウ、イエ~イ」人差し指と中指に親指をはさんだこぶしを

オレ達の顔の前に突きだして、意味ありげに眉毛を動かす。

ホテルについてさっそく、目抜き通りのエロショップをみんなでひやかした。

昼間はまだ閑散としていて、スティーブの動かした眉毛の意味は、

イマイチオレ達に伝わってなかった。

だが、あの意味は「これか!」と思ったのが夜だ。

この町は日が落ちだした頃から、徐々にエロい臭いがブハッとふくらみだす。

気がつくと、目抜き通りから上っていく坂にはコールガールの行列ができていた。

その行列の坂道を、スティーブについて上がって行くと、

女人立入り禁止の看板が立つ木の格子の入口に行き着いた。

そこが、かの有名な飾り窓だった。

これが圧巻!

入り口から中に入ると、ショーケースのお店が並ぶ小さな町があった。

その中にずらり、下着姿の女の人達が椅子に座って並んでいる。

きれいにライトアップされたお姉ちゃん達を見て、思わず「ゴクっ」つばを飲む。

江戸時代の吉原とはこんなだったのか!?

しかも今の時代の文明国にあるなんて。

後で知るが、こういう場所はドイツ以外にもある。

でも、最初に見たときの衝撃はただ事じゃなかった。


エロい場所には独特のパワーがある。

それがそのままハンブルグという町のパワーになっている。

無名時代のビートルズも、この町で発射しまくった。

さすが、あるロック科学者がはじき出した世界5大パワーのひとつエロパワー。

そのむき出しの夜を見るのは嫌いじゃない。

いや、嫌いどころじゃない、好きだ。

このエロパワー、かなり大事だ。

人間の根幹はエロにある。

体のコアからググッとつきあげて、

男も女も熱く熱く、エロヴォルテージを高めるのだ! 


あの狭い狭いクラブで燃えた夜以来、ハンブルグはオレ達にとって少し特別だ。

この町はエロも熱いが、ロックも熱い。

そして今夜また、オレ達はハンブルグの地に勃つ。

エロもロックもごちゃ混ぜにして、狼の雄たけびにしびれさせてあげよう。

フフ、君たちは今夜、何度も激しく、雄たけびをあげる事になるだろう。

欲望渦巻くドイツハンブルグ。

その夜空に今夜、ギターウルフのロックが渦巻く!