【BLT→HLT】


アレサフランクリンが聞く。
「ご注文は?」
すると、黒服サングラスの白人2人が答える。
まずはのっぽ、「白パンのトーストをドライで」
そして低い方、「丸ごと4羽のフライドチキンとコーク」
「フン」なんだこいつら!
そんな顔で、アレサフランクリンはキッチンに引っ込んだ。
これは、オレの大好きな映画「ブルースブラザーズ」のワンシーンだ。
アメリカ人は食事の時、自分のオーダーにあれこれと注文をつける。
頼まれる方も慣れていて、ウエイトレスは客の注文を熱心に聞いてくれる。
これは、いろんな人間がいるアメリカのいい文化だと思う。


USツアーでの食事は大事だ。
身体のすみずみまで、エネルギーと栄養を行き渡らせる必要がある。
その為には、アメリカの食事を、毎回、毎回、最も食べやすくおいしく食べたい。
そう考えるうちに、オレは一つのメニューに行き着いた。
まあ、そんな大げさなもんじゃないけどさ。
日本ではごく普通かもしれない。
しかし、意外とアメリカのレストランのメニューにはこれがない。


「サンドウィッチBLTはありますか?」
テーブルに腰掛けたオレは、ウエイトレスに聞く。
ウエイトレスはだいたい、白人か黒人のおばちゃんだ。
「はいあるわよ、BLTね」
それに被さるようにオレが言う「そのBLTなんだけど」
ここでおばちゃんは、ペンを止めて、伝票越しにオレを見る。
そしてオレ「そのBをHに代えてもらえますか?」
ここで、一発でわかる人もいるが、ほとんどの人はわからない。
BLTとは、ベーコン、レタス、トマトを挟んだサンドウィッチだ。
BをHに代えてとは、ベーコンをハムに代えてくれということだ。
その事を説明して、もうひと注文。
「それに調理した卵も挟んでもらえますか。トーストはテキサストーストで!」
「OK!」とわかってくれたおばちゃんは、気前よく返事を返してくれる。
そして待つうちに、「はい、どうぞ」
おばちゃんは笑顔で、そのサンドウィッチを目の前に置いてくれる。
オレはアメリカのカリカリベーコンをサンドウィッチに挟んで食うのは、
あんまり好きじゃない。
酒のつまみならいいんだけどさ。
だからHLTプラスE。
これがなかなかうまいんだ。
そして注文をうるさがらずに、ちゃんと聞いてくれるアメリカのレストランにも
満足する。


この点、日本のファミレスは残念ながらちょっと違う。
もちろん優れているところだらけなんだけど、融通が利くということでは
イマイチかな?
いつだったか、日本のファミレスで飯でも食っていた時の事だった。

まだ飲み放題ドリンクバーはない。
むかいに外国人のおばちゃんが、ティーポットからカップに紅茶を注いで
飲んでいた。
そのティーポットのお湯が無くなったのだろう。
外国人のおばちゃんは、アルバイトのお姉ちゃんを呼んだ。
そしてティーポットにお湯を足してくれるように頼んだ。
しかしこれからが大変だった。
アルバイトのお姉ちゃんの頭の中では、お湯を足すことが、もう一杯注文する事と
同じだと思ったのかもしれない。
外国人のおばちゃんは一生懸命お願いするが、
お姉ちゃんはかたくなに拒否して、終いには、店長まで来ての大騒ぎだった。
ずいぶん昔の事で、その後どうなったか憶えていない。
でもアメリカではちょっと見ない光景だったかな。


ブルースブラザーズ二人の注文を受けたアレサフランクリンは、
キッチンに入っている自分の旦那に、奇妙な客が来たと告げる。
旦那が聞く「注文は?」
アレサフランクリンが二人の注文を言う。
それを聞いた旦那が叫ぶ!「ブルースブラザーズだ!」
そしてキッチンを飛び出した。
冒頭のブルースブラザーズの映画のシーンの続きだ。
オレがツアー初日にHLTを頼む時、このブルースブラザーズのシーンと重ねて、
よくみんなで笑う。
HLTを頼んで、おばちゃんがキッチンに消えたのを見計らってオレが一言。
「さて、誰か飛び出してくるかな?」
ウエイトレスに注文を聞いたキッチンの誰かが叫ぶのさ。
「何!HLTだって!セイジだ!」
そして誰かが飛び出して来る。


今のところは、まだ無さそうだ。
しかしいつしかアメリカに来た時に、メニューにHLTが載っている日を、
オレは、結構まじめに期待しているんだ。
その時は、是非、HLTの後に(SEIJISPECIAL)と付けてもらいたい。
いやいや待てよ、それはプラスEの時がいいかな。
う~ん、どうだろう。