【激突!アルバカーキー】


アルバカーキーの夜、オレとスティーブはついに激突した。                                     
オレはスティーブをバーの外に呼び出した。                                             
そしてど頭にきた事をぶちまけた。
                                              
アメリカ人とはよく衝突する。                                               
他の国ではそんなことはないが、アメリカ人とは衝突が多い。                                          
やつらは感情の起伏が激しく、思ったことをすぐ口にだす。                                       
事ある毎にファック、ファックと口にだす。                                                    
最初は笑って付き合うが、あんまり度を越すと付き合う気もなくなり、無視をする。                            
するとどんどんエスカレートしていく。                                  
ついには険悪になり、そしてオレは呼び出した。 
                                                                                                                                        
1997年、クランプスツアー、アルバカーキーライブ。                                        
その日の深夜、ギターウルフとツアーマネージャーのスティーブ、

ローディのバックウイート5人でモーテル近くのバーに飲みに行った。                                                               
客は少なかった。                                  
ガラス張りから見える外は暗く、目の前の道路には

電線がゆるく張ってある木の電信柱が並んでいた。                                    
車はめったに通らない。                                
昔の西部の町のようだと思った。 
                                                                                                                                  
「おうスティーブ、話がある」                                   
席についてまもなく、オレはスティーブをバーの外に呼び出した。            
スティーブも何事か察知したのか、「オーライ」とすくっと立ち

オレの後をついて来た。           
激突なんて書いたが、まあ、ようは二人っきりで、話合いの場を設けたってことだ。            
「お前も何か言ってくれ」                                                      
一方的に話した後、オレはスティーブに、こうつっぱねた。                                                      
するとスティーブは一瞬何かを言おうとしたが、だまった。                                                 
そしてその後が、アメリカ人スティーブのかっこよさだった。                               
「OK,オレが悪かった」                                          
素晴らしくナイスな笑顔でニコッ、そして手を差しだし、オレに握手を求めた。                                       
それでチョンチョン、すべてが終了だ。                                           
その後のツアーもすべてがすべて、万事うまくいったわけではないが、          
まあまあ和気あいあいといったかな。


NY出身のスティーブだが、今はLAに住んでいる。                  
オレ達のツアーマネージャーをやめ、あの不良おやじも結婚して

子供3人の父親となっている。                                             
昨夜のLAのライブの時も、真っ先に駆けつけて来てくれた。                              
去年のLAのライブの時もそうだ。                                               
真夜中にLAに到着したにもかかわらず、モーテルに訪ねてくれた。                              
そして今日、ラスベガスに向かってLAを出発する時も、

やってきて見送ってくれた。 
                                                                                                                      
一緒にツアーをまわっていた時、スティーブは相当ダーティな英語を連発した。      
しかしその反面、ダーティな日本語もよく知りたがった。                   
オレ達も面白がって、調子になって教えた。                      
すると、スティーブはそれを完璧にマスターして、

その日本語を絶妙なタイミングで繰り出すようになった。                               
昨夜、ライブ前に楽屋でスティーブとビールを飲んでいると、再び、           
その絶妙なタイミングが炸裂して、思いっきり笑わせてもらったよ。


衝突は悪いことじゃない、ただし真正面からだ。                                  
さて、明日はラスベガス、そしてその次の日がアルバカーキーだ。                        
待ってろよアメリカ人!真正面から、オレ達のR&Rをぶつけてやろう!