【ハヤブサの炎】


朝、テレビをつけた。
夜空に炎が燃えていた。
大気圏に突入したハヤブサの最後だった。
「おお、綺麗!」
そう思ったら、なんだか泣けてきた。


我が身と引き替えに回収カプセルだけを地上に落とし、
最後は流れ星になったハヤブサ。
それを見て、鉄腕アトムの最終回を思い出した。
文字通り有名な鉄腕アトム、その最終回は悲劇だ。
人類の為に、アトムはカプセルを抱いて太陽に突っ込む。
しかし、オレはその悲劇とハヤブサを重ねたわけではない。
ハヤブサの最後はもちろん悲劇じゃない。
言いたい事はこうさ。
宇宙科学ロッカーであるオレの話を聞くんだ!


「ハヤブサから、ロボットと人間との新たな歴史が始まる」
人間誰しも長年使ったりすると機械や物へ愛着ができる。
オレの場合はバイクや車だったりする。
数年前ツアー車を手放した。その時はつらかった。
長年オレ達を助けてくれたその車に、こころからありがとうと思った。
しかし、ハヤブサはその機械や物への愛を、もう一段上の次元に変えた。
満身創痍になりながらも地球をめざしたその姿に、ただの機械を超えた感情を
オレは持った。
ただの機械だ。
しかしその機械に「寂しくなかったか?」「よくがんばったな」
抱きしめたくなるような感情にオレは自分で驚いた。
それはまさしく新しい感情だった。
そしてふと思った。
「人間はロボットを愛せる」
アトムのようにロボットが人間に愛される世界は実際に来る。
マンガの世界だけだと思っていた。
映画の世界だけだと思っていた。
しかしハヤブサはそれが本当になると言う事を、オレに気づかせた。
未来には、ロボットと結婚する人間が現れるかもしれない。
いや、必ず現れるだろう。
何てこった、いいのか悪いのかわからんゼ。
だがそれは愛だから、まだいいのもしれない。


もしギターウルフのワイルドゼロという映画が、少し先の未来に作られる
はずだったらオレのセリフはこうなっていた。
「愛に男も女も国境もロボットも関係ねえ!」


今、科学の発達は猛烈だ。
このまま行くと、将来は血も涙もない殺伐とした機械文明へ突入するような
気がしていた。
だがそこには、生々しい人間的感情が入り込む余地が十分あることを、
ハヤブサの炎は教えてくれた。