【ラジオロックその3-電波は時空を超えて】



深夜の中学生から20年後、オレはTFMのスタジオにいた。
オレの番組がまもなく始まる。ラジオ局の分厚い窓の外には皇居が見える。
スタジオ内の、これまた分厚い窓の向こうにディレクターの顔が見える。
なにやらボタンをいじくって何か作業をしている。
ヘッドフォンからディレクターの声が聞こえてきた。
「お願いします。どうぞ。」
オレが叫ぶ。
「ギターウルフセイジの、ミッドナイトサンダー!!」


田舎のラジオの前で電波を受け取っていたオレが、
今、あの、あこがれの東京からオレの電波を発信する。
あの頃のオレに今のオレが電波を発信する。
それは過去と今がつながる瞬間だった。
電波は時空を超えて夜空を飛んだ。
こんなオレがあのオレに電波を送っていたのだ。
あの時のDJ達も今のオレと変わらなかったのだ。
間違いなく同じ気持ちを持っていたはずだ。
誰かがオレの話しを聴いている。何かを伝えたい。君のハートを直撃したい。


ふとんにくるまって深夜放送を聴いていた中坊のオレと、マイクの前で
しゃべっているオレ。目の前にはただ夜の闇。
なんだか不思議な気分だゼ。

ただその闇にロマンを感じる心は、何も変わってなかった。イエーラジオロック!!