【納豆どう納豆?】

 

 

朝飯を食べる時、いつも思う事があるのだ。

 

 

 

朝、テーブルの上にみそ汁の湯気が立ちのぼる。
その横には白いごはん。これまた湯気がかすかにたっている。
「いただきます」と言って、目の前に置かれた箸を右手で持つ。
そして納豆の入った器を左手で持つ。
思いっきりかき混ぜる。泡が立つまでかき混ぜる。
それをどろ~り、ごはんの上にのせ、器からひく糸を空中で
くるくるっと箸でからめとって、納豆ごはんを口の中にほおばる。
「うまいぜー、しあわせー!!」そしてここでいつも思うのだ。
「ああ、納豆食えないやつ、かわいそう」

 

 

 

そりゃあ、食えないやつにしてみれば、大きなお世話だろう。
だけどオレは言いたくなっちゃうぜ。
「どうなっとぅんだ。なっとぅくいかん。なっとぅらん。
タレかけて食えばうまいぜ。バカタレ!!」

 

 

 

今でこそ、ほぼ毎日納豆を食っているオレではあるが、
実を言うと、以前はそんなに食っていなかった。
むしろ、そんなに好きでもなかったかもしれない。
その自分が毎日食べ始めた原因は二つある。
まずは金だ、金がなかった。
バイトをやめるとだんだん金がなくなる。だから次のバイトを捜す。
しかしその間に生まれる貴重なプー太郎タイム。
そのしあわせな時期をなるべく長く続けたいじゃないか。
だからと言って、すぐ安い納豆をというわけじゃなかったのだが、
その時一緒に住んでいた同じプーの同居者が、オレに断りもなしに
納豆を何パックもまとめて買ってきた。
スーパーの袋から次々と冷蔵庫の中に移される。
そしてやがて、冷蔵庫の中には納豆の大陸棚が広がった。
それからというもの毎日毎食、納豆を食ったさ。
そしたらある日、起きて腹が減ったなあと思うと、
無意識に納豆パックを冷蔵庫から出している自分に気づいた。
毎日食わずにはいられない、身体の異変が起こっていた。
完全に習慣化していたのだ。
納豆は習慣だ。
そうじゃなければ納豆の旨さはわからない。
そうだ!!納豆は習慣なんだ。
このタイミングをくれた神よ、ありがとう。

 

 

 

いろいろな食べ方があると思う。
突拍子もない食い方はあんまり好きじゃない、
シンプルな食い方が一番だ。
鰹節がのっかった納豆にネギをパラっとかけて、醤油を
つるつるっと垂らし、シャカシャカっとかき混ぜてご飯にかける、
これがうまいのだ、っと以前はそう思っていた。
が、ある時、それだけじゃないという一大出来事にあったのだ。
ある昼下がりに、オレは家でざるそばを食っていた。
ふと見ると、テーブルの上の小鉢に、朝の残りの納豆が残っていた。
小鉢ごと取り、逆さにして、納豆を箸でそばつゆの中に
落とし込んでみた。
そしてざるから、箸でつまんできたそばをつゆの中につけた。
箸をあげた。そばに納豆がからみついている。
そのまま口に突っ込んだ。
「うめえーー!!じゃねえか」
後から考えればそれほど特別な事じゃなかった。
しかし、オレのテーブルにしあわせなトッピングが増えた
瞬間であった。
めでたし、めでたし。

 

 

 

納豆の豆知識。
納豆の糸は地球で一番のびる糸らしい。
100m以上のびるらしい。すごいね。
あの小さな納豆と納豆が、糸で引き合いながら100m。
その糸は、空気中をゆらゆら漂いながら小刻みに震えているかも
しれない。
ということは!?もう1セットあったなら。
二人で、糸の引き合う納豆を左右の手に一粒ずつ持って、
相手が口ならこちらは耳に、こちらが口なら相手は耳に持って、
納豆糸電話?こいつは可能か?
こういう事を考えるのはオレだけだろうか?