タララララ、タラララララ、
タララララ、タラララララ、
タララララ、タラララララ、
タララララ、タラララララ、
タララララ、タラララララ、
タララララ、タラララララ、
(シークエンスフレーズを弾いている音)



ダー博士は毎日ギターを弾いている。


それは音の確認の為である。


よって、音の違いを比較するのに適しているシークエンスフレーズやスケールの上昇・下降ばかり弾いているのである・・・



しかし、それも人間を襲うアンノウンが出現した場合には中断せざるを得ない。



人類を守る使命の為に。




班長 : 「ダー博士、アンノウンが現れたわ。転送装置で現場へ飛ばすわよ!被害者が出る前に始末してちょうだい!」


ダー博士 : 「了解!!」


青白い光と共に、アンノウンの前にダー博士が転送された。


ダー博士 : 「変身!!」


ダー博士は構えたギターでミクソリディアン・スケールの上昇フレーズをマシンガンミュート速弾きで一気に奏でると、ピックの動きが光速に近づくにつれて時間の進み方にずれが生じてピッキングとフィンガリングのタイミングを合わせるのに必要なエネルギーが一定の量を超え、

仮面ライ・ダーに変身した・・・







ほわんほわんほわんほわんほわんほわんほわん・・・





(場面がガラリと変わる。)







エレキギターを弾く人であれば、おそらく誰もが知っているであろうストラトキャスター。


その3WAYもしくは5WAYスイッチの切り替えで、どのポジションにしたらどのピックアップがONになるのかは、今さら説明しなくても分かっているはず。




しかし、ストラトの愛用者でない場合、もしかすると、
ストラトのリア・ピックアップのトーンは効かないものである。
ということさえ知らない人も多いのではないだろうか?


まぁ、それはいい。
(良くない。)



では、

何故ストラトのリア・ピックアップのトーンは効かないのか。


この問題は、「精神的な理由」「物理的な理由」の2つに分類することが出来る。


物理的な理由を知りたい人に精神的な理由を述べても何も解決しないのだ。





まず、精神的な理由から。

この場合の「精神」とは、いわゆる「スポーツマンシップ」などと同じ意味のものであり、

言わば「Fender精神」である。

すなわち、
「これがリアの音なのだ。丸いトーンにしたいならセンターやフロントを使え。」
ということ。



いや、それはそれでいい。
(良くない。)


しかし・・・


ダー博士にとって重要なのは「物理的な理由」である。




もしも今、小惑星が地球に衝突して、ギターの配線の分かる人が居なくなってしまった場合に、ゼロから自分でストラトの配線を考案出来るだろうか?







まずは歴史の教科書から。


昔のストラトは3WAYでした。

(3WAYスイッチの場合)
・ポジション3=フロント
・ポジション2=センター
・ポジション1=リア


それを当時のギタリスト達が、切り替えレバーを中間で止めることで2つのピックアップをミックス出来ることを利用し始め、1968年にはついにFender社はそれ用の5WAYスイッチ仕様に変更したのである。


(5WAYスイッチの場合)
・ポジション5=フロント
・ポジション4=フロント+センター
・ポジション3=センター
・ポジション2=センター+リア
・ポジション1=リア


これの実際の回路と配線がどのようになっているのか、

ダー博士のストラトキャスターは5WAY仕様である為、5WAY仕様で解説する。



ちなみにダー博士は
3WAYのことは「スリーウェイ」と読むが、
5WAYのことは「ごウェイ」と読んでいる。

DS-1のことを「ディーエスワン」と読み、
YJM308のことを「ワイジェイエムさんまるはち」と読むのと一緒である。


うーむ。



まず、実際の配線を見ると




このようになっている。
数字はスイッチの端子番号。


右側に描いたスイッチの状態はポジション1を示していて、
7番端子が1番端子と導通し、8 番端子が4番端子と導通していることを意味する。

上から順番にポジション1、2、3、4、5

2回路入りで、7番端子側の動きと8番端子側の動きは連動する。


上図の状態だとポジション1であり、
スイッチの7番端子と8番端子が結線されていることから、1、7、4、8番の端子が全て導通しているということである。




回路図で描くと一目瞭然。
ポジション1でリア・ピックアップを選択した場合のみ、トーン回路を通らないことがいきなり白昼堂々と天下の晒し者にされてしまうのである。


(ポジション1)



(ポジション2)



(ポジション3)



(ポジション4)



(ポジション5)


これが全てであり、

ストラトのリア・ピックアップのトーンが効かない理由そのものである。



さて、ここでエリック・ジョンソン並みに頭が冴えている人はお気付きだと思う。


8つあるスイッチの端子のうち、4番端子だけ、何も繋がっていないわけで、

ここにこそ、
例の「Fender精神」が隠されているのである。


さぁ、「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」のごとく面白くなってきた。


タイムマシンを使って、もう一度あの配線図を見に行ってもらいたい。


スイッチの7番端子側はピックアップを選択していて、8番端子側はトーン回路を選択していることが分かる。

そのトーン回路の選択で、4番端子に何も接続していないから、リア・ピックアップはトーンが効かないのだ。


逆に言うと、


ただ単に、4番端子を5番端子と結線してあげるだけで、

普通にリア・ピックアップもトーンが効くようになるのである。


エリック・ジョンソンのストラトはリアもトーンが効くようにしてあるそうだが、あの滑らかで独特な音色は、あくまでもピッキングとフィンガリングのタイミングやタッチによるものだと思われる為、リアにトーンを効かせただけで真似できるシロモノではない。


エリック・ジョンソンに見習うべきはそんなことよりも、

「伝統的なストラトキャスターはリア・ピックアップのトーンは効かないものである。」
というFenderの精神をいとも簡単に無視して自分の出したい音を具現化させたことにある。


そう・・・数々の名ギタリスト達が、あの伝統的で絶対的なMarshallの歪みに不満を抱き、反抗してエフェクターを使うことでで自身の音を確立させてきたのと同じように。




うーむ。