MXR distortion+
その存在を知らない者はいないだろう。
「distortion」というネーミングではあるが、その実態は
シングル・オペアンプの非反転増幅回路とダイオード・クリップによる典型的なオーバー・ドライブ
であると言えよう。
しかし、Marshallの歪みと組み合わせることで得られるその攻撃的なギターサウンドは、まさにN.W.O.B.H.M (New Wave Of British Heavy Metal) の時代の幕開けと共に世界中をヘッドバンキングの巨大な波へと巻き込んだ、紛れも無い
ディストーション・サウンド
であった。
何度かのマイナー・チェンジはあったものの、若干のパーツの違いを無視すれば、その回路は(基本的には)現在でも変わることなく受け継がれている。
ただし、ヴィンテージか否かを決定付ける明らかな違いがある。
人によっては「筆記体ロゴ」あるいは「LEDの有無」「アダプタージャックの形状や有無」などにより区別することもあるし、確かにそれはそれで一つの判断基準ではあるが、ギターダー的には
たった一箇所のカップリング・コンデンサ
が、ヴィンテージか否かを決定付けていると考える。
もちろんこの見解を押し付けるつもりは微塵も無いし、あくまでも個人的なこだわりに過ぎないということが前提であると捉えて頂きたい。
これはヴィンテージから現行への変革を遂げる途中の段階を観測することが出来る貴重な基板。
実は0.05μFという値(容量)は、現在では一般的には製造されていないので、昔のデッドストックを探すか、海外で多少流通しているものを入手するしかない。
例えば今回はUSA製Montreuxの0.05μFセラミック・コンデンサを入手した。
さて、緑色のマイラー・コンデンサには「473K」という表記があり、Kというのは部品としての許容誤差が±10%であることを示していて、0.0423μFから0.0517μFまでが0.047μFとして合格して出荷され得るわけで、また、0.05μFの±10%は0.045μFから0.055μFである。
ゆえに現実的には0.05μFに交換したからといって音に違いが出ることはまず無い。
もし音に違いが出るとしたら、同じ0.047μF同士や0.05μF同士でも音が異なることになってしまう。
試しに手持ちの0.047μFのセラミック・コンデンサを測定してみよう。
小さいものは実測で0.042μFで
(42nF = 0.042μF)
それでも0.047μFのマイラーと0.05μFのセラミックでは見た目が異なる。
そして
この見た目こそが大変重要なのである。
さらにいうと、この0.047μFをこの0.05μFに交換しても
決してヴィンテージにはならない。
あくまでもヴィンテージの「仕様」になるだけだ。
それどころか、考え様によっては
緑色のマイラー・コンデンサ仕様のままの方がレアで貴重な基板なのである。
うーむ。