◎From A Distance
☆Bette Midler
▼フロム・ア・ディスタンス
★ベット・ミドラー
released in 1990
2017/6/29
本日はこの曲、From A Distance ベット・ミドラーのお話。
基本的にこの記事は、テレビなどで話題になった曲か、何かのきっかけで僕がその時よく口ずさんでいる曲を取り上げることにしていますが、今回は後者。
庭に新たに植える薔薇を今年も買うことにしました。
"Woman"といろいろ見ていると、近くのホーマックに「ディスタント・ドラムス」という品種の苗がありました。
その名前を見た瞬間、頭の中に流れてきたのが、ベット・ミドラーのFrom A Distance。
もうほんとにそれから毎日ずっと流れています。
残念ながらというか、マーヴィン・ゲイのDistant Loverではなかったのですが、ベット・ミドラーのその歌の歌詞に、「(遠いところから見ている)マーチを奏でる楽器」というくだりがあって、マーチ=ドラムとつながり、この曲になったのです。
もしかしてこの薔薇を作出した人は、この曲が頭にあったのかなと思って調べると、違いました。
ゲイリー・クーパー主演1951年の映画Distant Drums 「遠い太鼓」からとったものということで納得。
アメリカで作出された薔薇であることも分かりましたが、いかにもアメリカらしいとこれも納得しました。
薔薇とは違ったのですが、でももう僕の頭の中では、ベット・ミドラーの歌が流れ続けることになりました。
ええ、まさに彼女にはThe Roseという名曲があって薔薇とつながっていますからね(笑)。
◇
ベット・ミドラーについて短くウィキペディアなどより。
ベット・ミドラーはハワイ州ホノルル出身(知らなかった今まで)。
1945年生まれ、20代の頃からミュージカルなどで活躍。
1973年のセルフタイトルアルバムでグラミー新人賞受賞。
1979年映画「ローズ」に主演し注目され表題曲The Roseはグラミー賞を受賞、誰もが知る名曲中の超名曲ですからね。
しかしそれから音楽的には若干の低迷期に入る。
1984年に結婚したことも影響しているかもしれないですが、1983年のアルバムNO FRILLSではローリング・ストーンズのBeast Of Burdenをエロっぽくカヴァーした上に、ビデオクリップでミック・ジャガーと絡む、なんてこともしました。
(ただしこのカヴァーはとってもいいのですが)。
1985年にはあのWe Are The Worldにも参加しましたが、ひとりだけで歌うパートは設けられず、最後のコーラスで全体が写ったところでようやく右端の方に見えたというくらい。
僕も実はしばらくは気づいていませんでした。
一方で映画は注目を浴び、1986年の「ビバリー・ヒルズ・バム」では、主人公のニック・ノルティが居候する家の主婦役として出演し、アクのある個性を活かし癖があるけど洒落た女性を怪演。
その映画ではYou Belong To Meを鼻歌でさらりと歌うシーンが僕は印象的でした、とこれは余談。
続く同年の「殺したい女」では悪女役で主演、コメディエンヌとしての評価が上がりました。
でも、僕はこれ、劇場で観ましたが、正直、あまり、でした。
当時は新作2本立てでしたが、もう1本の方がめあてで、せっかく同じ金額でもう1本観られるのだからと観ただけでしたし、2本立てだったから余計に疲れる内容でした。
ただ、サントラはビリー・ジョエルの新曲Modern Womanがあるなど注目されてヒットし、僕もLPを買いました。
(だから余計に映画がかっかりだったかもしれない)。
ここまでは「この人こんなこともできるんだ」で終わっていました。
しかし、1988年の映画「フォーエヴァー・フレンズ」に主演し、テーマ曲Wind Beneath My WIngsを歌って見事にビルボード誌No.1を獲得し、グラミー年間最優秀レコード賞を受賞してからは、周りの見方が変わりました(と僕は感じました)。
スケールの大きい感傷的なバラードを完璧に歌い切り、ほんとうに歌が上手い歌手としての評価が固まったのです。
その大ヒットを受けて5年振りに制作した自らのアルバムSOME PEOPLE'S LIVESは、ほんとうに歌が上手い人という評価を不動のものにした名作。
僕も初めて聴いたとき、ああやっぱりあの歌を歌う人だからこれが、そしてこの曲ができるんだなと素直に思いました。
この曲も2位になる大ヒットを記録しましたが、チャート以上に歌として注目されたと僕は思っています。
アルバムもジャズっぽい雰囲気も漂う大人の作品。
いつかアルバムを記事にしたいと前々から思っていますが、いつになることやら・・・(笑)
◇
From A Distanceはアメリカのシンガーソングライタージュリー・ゴールド Julie Goldが1987年に書いた曲。
多くの人にカヴァーされたようですが(僕は1曲を除いて聴いたことないですが)、最も有名なのがこのベット・ミドラーによるもの。
内容は明白な反戦メッセージソングで、フォークの系譜でしょうか。
この曲は、まずヴァースの部分で、天上の"God"から今の地球はこう見えるということを、話者=歌手=ベット・ミドラーが代弁し、サビでは"God is watching us"と勇気づけています。
要約です。
***
1番
遠いところから見ているこの地球は
青と緑に囲まれ山の頂には白い雪が
川は流れて海となり鷲が飛んでいる
大地にハーモニーがこだまする
普通の人々による希望と平和の声が
2番
遠いところから見ているとこの地球は満ち足りている
銃も爆弾も病気もないし飢えた人もいない
わたしたちはマーチを奏でる楽器となって
希望と平和の歌をみんなで演奏する
3番
遠いところから見ているとあなたちは友だちのようだ
たとえ戦争のときであっても
だけど何のために戦っているのか理解できない
人々のハーモニーがこだまする
希望を持つこと、愛することの大切さ
それはみんなが感じていること
コーラス
神様は遠いところからわたしたちをみつめている
***
遠いところから見ていると書いたけど、これは現実世界を精神世界から顧みているということかもしれない。
或いは煩いの多い世界を冷静に眺め考えている、とか。
ほんとうにこの曲は感動的。
力唱してはいない、むしろ抑えて歌っていますが、そのことでメッセージがより平易に受け止められます。
Wind...は個人の思いだから熱く歌っても構わない、だけどこれはメッセージソングだから優しく歌う。
そしてなんといってもこの曲には多くの人を優しく包み込む母性のようなものを感じます。
アメリカでも「アメリカのお母さん」みたいなイメージに受け止められたのではないかと想像します。
アルバムタイトルが「誰かの人生」というものですが、この曲のメッセージの普遍性はまさにどこにでもありふれたものとして解釈できます。
悪女や変な女性を演じてきたベット・ミドラーですが、それらはすべてこのための下地だったとすら思えます。
だから僕は、ベット・ミドラーを代表する1曲はと聞かれると、Wind Beneath My Wingsもいいけれど、こちらFrom A Distanceの方がより彼女らしいと思います。
ということでここで曲です。
☆
From A Distance
Bette Midler
(1990)
このビデオクリップのベット・ミドラーが亡くなった祖母に似てるんですよね。
顔をよく見ると日本人だから当然まったく違うんだけど、この時の髪型と全体のイメージが。
でも、ネットで今の写真を見るとやっぱり、髪型が違っても顔の作りが似てるなあと思いました。
まあそれは置いておいて、ビデオクリップもほろりとさせられる。
ベット・ミドラーの仕草が柔らかくて気持ちが伝わってきます。
前掲の歌詞"Marching in the common band"の部分では実際に子どもが太鼓を叩いて歩いていますね。
このビデオクリップは多分数回しか観たことがなくてこのシーンは覚えていなかったのですが、でも刷り込みでこの映像が頭に残っていたのかもしれないですね。
音はまあいかにも1980年代後半(90年ですが)といったものですが、時代としても音がだんだんとあの80年代サウンドを脱して落ち着いてきた頃であることがあらためて分かります。
歌としての英語の歌詞で僕が個人的に好きなのは、3番の以下のくだり。
"I just cannot comprehend"
"comprehend"という大学受験では必ず覚えるけれど歌詞にはあまり出てこない単語が出てきたのがなんだか妙に嬉しかった。
この単語が歌詞に出てきたのは僕の中では2回目で、1回目はプリンスのI Would Die 4 Uでした。
この曲は、ジュエルが1999年のクリスマスアルバムJOY : A HOLIDAY COLLECTIONでカヴァーしています(僕が唯一聴いたことがある他のカヴァー)。
メドレーの中の1曲でオリジナルに比べると軽いのですが、元々フォークシンガーだったジュエルとしては、自らのアルバムにどうしてもこのメッセージを加えたかったのでしょうね。
この曲はクリスマスの雰囲気にも合い、ジュエルなかないいセンスだと思いますね。
◇
そしてもうひとつ、薔薇つながりの偶然を。
この曲は恵庭のえこりん村に2人で花の苗を見に行った時に流れていました。
オリジナルではなくよくあるスーパーのBGM風の歌メロを楽器が奏でるインストゥルメンタルものですが、多くの薔薇をはじめ花に囲まれたえこりん村にはとってもよく似合っていました。
ベット・ミドラーはやっぱりイメージが薔薇なんですね。
というわけで今回は、先週撮影した大通公園の薔薇の写真を織り込もうと思いました。
大通公園には、歌詞に出てきて重要な言葉である"Harmony"「ハーモニー」という品種の薔薇があるのです。
ところが、撮影したものを見ても名札を撮り忘れたのでどれか分からず。
明日、撮って来て追加補足したいと思います。
"God is watching us"
そうそう、薔薇の「ディスタント・ドラムス」は、まだ購入していません。
ちょっと他より高いんですよね、安くはならないかなあと・・・