◎Proud Mary
☆Creedence Clearwater Revival
▼プラウド・メアリー
★クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル
released in 1969
2017/6/25
今日は洋楽の1曲の話。
このところ車でクリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル、C.C.R.のベストをずっと聴いていますが、少し前に記事にしたBad Moon Rising(記事こちら)のひとつ前に入っているのがこの曲。
Bad...を繰り返しかけているうちにこちらも聴きたくなり、いつしか2曲続けて繰り返すようになりました。
元々大好きな曲ですからね、でもまた「はまった」、という感じ。
さて、まずはProud Maryの楽曲の概要ついて。
さすがにこれくらい有名な曲だと日本語のウィキペディアにもページがあるので、そこから摘要を。
Proud MaryはC.C.R.通算3枚目のシングルで、2枚目のアルバムBAYOU COUNTRYからの最初のシングル曲。
ビルボード誌最高2位を記録。
この後4曲の最高2位の曲を出し、合計5曲も2位の曲がありながらついに1位にはなれなかったC.C.R.の悲運の始まりのようなことはウィキにも書かれています。
次のBad Moon Risingが2位の2曲目であることは書きました。
この曲は「メアリー・エリザベス」"Mary Elizabeth"という蒸気船をイメージしてジョン・フォガティが書いたものだという。
船はよく女性に喩えられますね。
しかし彼は曲を書くまで実際にその蒸気船を見たことがなく、曲がヒットしてから見に行ったとの逸話も紹介されています。
Proud Maryは『ローリング・ストーン』誌が選ぶ最も偉大な500曲(the 500 greatest songs of all time)の第155位にランクインしています。
まあ、155位がどれくらい高いか高くないかはお任せしますが。
曲を。
☆
Proud Mary
Creedence Clearwater Revival
(1969)
さてここからは僕がこの曲の歌詞について思っていたこと。
僕はですね、最初これを「プロ」の人の曲かと思いました。
「プロ」つまり"prostitute"、意味は各自お調べいただくとして、そういう仕事をしつつも誇りは忘れない女性のことかと。
僕が初めて聴いたのはまだ10代、そういう考えが「ロック的」なものであると信じていた頃のことでした。
でも、歌詞をよく読むと、そうではないらしい。
最初のヴァースでは、街での仕事を辞め、どこか小さな町で昼夜を問わず働く女性が主人公であることが分かります。
ここの「街」はニューヨークかな、とにかく大都会。
今働いているのはそれほど都会ではないところ(=片田舎)。
蒸気船のイメージでいうなら、ミシシッピー川流域など南部ということになるでしょう。
実際歌詞にはMemphisやNew Orleansが出てきます。
余談で、スティーヴィー・ワンダーのLiving For The Cityは逆にミシシッピーの田舎からニューヨークに出てきた話ですね。
メアリーさんは何のために働いているのか?
気になるくだりがあります。
"working for "the" man every night and day"
"the"がついているので特定の男性ということになりますが、その男性が歌詞の中に出てきたのはここが初めてなのに、最初っから"the"がついているというのは、誰か有名な人のことを指していると考えられます。
そうではなく歌詞に普遍性を持たせたいのであればここは"working for "a" man"となるはず。
じゃあ誰?
可能性のひとつは、当時世の中で話題になっていた誰か。
大統領でもいい、俳優でも歌手でもいい、「あの人」"the man"といえばたいていの人が思い浮かべる誰か。
しかしこれは、当時の社会情勢が分からない上に(今はネットで調べれば察しくらいはつくかもだけど)、歌詞の中にも特定の男性は出てこないので分からない。
次に考えられる可能性は、ジョン・フォガティ自身。
そうであるなら、もう分かっている誰かということになり、"the"が最初からついていることに違和感はない。
ジョン・フォガティの話としてこの歌詞を考えるとどうなる?
プラウド・メアリーさんは、プロになるためにバンド活動をする夫なり恋人を支えて一生懸命働く女性ということかもしれない。
そうであるなら、いつかはスターになるであろう男性を支えていることに誇らしさがある="proud"であるのも分かる。
でも、これはジョン・フォガティの自伝的な内容ではなく、ミュージシャンの一般的なイメージを表現しただけかもしれない。
クリーデンスでは後のTraveling Bandも、ツアーで回る一般的なロックバンドのイメージを、クリーデンス自身の体験と重ね合わせて読み取れるような歌詞になっていますから。
或いはもっと広げて、音楽活動をしている人に限らず、放浪癖があって定職につかない恋人か旦那かもしれない。
どさ周りするミュージシャンもある意味放浪の人ですが。
しかしこの男性はなんとも楽天的。
1番のヴァースの後半には(それまでは)このままではどうなってしまうのだろうと心配して寝付けなかったなんてことなんてなかった、というくだりが。
さらに2番では、川の女王でもあるクイーン・メアリーの働きっぷりを実際に見るまで、それがいかにつらくて、街の生活の方がよいこともあったことに気づかなかったとも。
放浪癖がある男性というイメージはここのくだりの、"till I hitch a ride"という言葉ていることから感じます。
なお、クリーデンスにはSweet Hitch-Hiker(記事こちら)という曲もあって、ヒッチハイクのイメージは強いですね。
とにかくメアリーさんは男のために働いている。
さびの前のパッセージに出てくる"Big wheel"というのは、僕は最初、人生が大きく巡ることの比喩かと思っていましたが、何かのきっかけでこれが蒸気船のイメージの歌だと知り、ああそうか絵などでよく見る蒸気船のあの大きな輪っかで、単にそれが回っている視覚的表現かと気づきました。
カルチャー・クラブの「カーマは気まぐれ」のPVに蒸気船が出てきますが、歌詞の意味が分かってそれを最初に思い浮かべたのは僕の年代だからでしょうね(笑)。
さて、この男性は楽天的と書きましたが、間奏の後の3番の歌詞は植木等を思い浮かべます。
川を下ったところにたくさんの人がいる、お金がなくても心配しなくていい、人々が喜んでくれるから、というのが3番の内容ですが、
「金がない奴ぁ俺んとこ来い、俺もないけどなんとかなるさ」という精神構造と似ていませんか?
南部の人々の持つ開放的な雰囲気ということでしょうけれど、でもほんとうに喜んでお金をくれるのかな?
そうではなく、都会のようにお金のためにあくせく働くことはない、お金なんてあまり意味がない、心が満たされるのがいちばんいい、南部ではそれができる、といいたいのかもしれない。
で、ここのくだり、
"You don't have to worry, thought you have no money"で'You"と呼びかけているのは、ある特定の男性だけではなく、あなたたちみんながそうなるかもしれないんだよというメッセージに昇華されていると感じられます。
要するに楽天的なことを肯定している曲、簡単にいえば人生に前向きなメッセージを発する曲といえるでしょう。
実際歌詞に関係なく曲だけ聴いてもそう感じますよね。
そこが魅力なのでしょう。
◇
音楽面についてもひとつだけ。
イントロがとにかく印象的。
C-A C-A C-A-G-F F-F6- F-D D
コード進行だけで聴かせるものですが、CからAにシンコペーションで移るのがとにかくいい。
歌のバックで楽天的に鳴り続けるDコードがまたいい。
コード進行だけで聴かせる曲の筆頭格と僕は思います。
この曲は自分で弾いていてもしびれますね。
間奏のギターソロもソロとして主張するのではなく、「ビートルズ的」に歌の続きとして鳴っているもので曲に親しみを覚えやすいですね。
このコード進行について、英語のWikipediaに興味深いことが書かれていたので摘要を書きます。
ジョン・フォガティはベートーヴェン交響曲第5番が大好きで、日本では「運命」として知られるその曲のあまりにも有名な冒頭のフレーズと同じ音を出してみたくてProud Maryのあのイントロになったのだという。
そうなんだ。
試しに「運命」の「ジャジャジャジャーン」とProud MaryのC-Aを重ねてみると・・・
どうだろう?
似てるといえば似てるし、違うといえば違う。
でも、完全には似ていないのが優れたソングライターのセンスなのかもしれないですね。
さてここからあと2曲、まずはC.C.R.自身による1969年のライヴ。
☆
Proud Mary
Creedence Clearwater Revival
続いてジョン・フォガティによるFarm Aid 1997のライヴ。
☆
Proud Mary
John Fogerty
ジョン・フォガティは、完全復活した1990年代以降、「ザ・ブラック・ビューティ」黒のギブソン・レスポール・カスタムを使っているんですよね、これがまたいい。
そしてこの曲といえばこの人たちを忘るべからず。
☆
Proud Mary
Ike & Tina Turner
アイク&ザ・ティナ・ターナーの名カヴァー。
前半はゴスペルを彷彿とさせるおとなしいバラード調、しかし途中からアップテンポの快活すぎる曲に。
大胆なアレンジで好き嫌いが別れるかもしれないですが、自分たちのものにしていますね。
ティナ・ターナーのキャラクターがこの曲の内容に合っているというのもあるかと思います。
最近はクリーデンスの記事が多いですが、うん、やっぱりいい、最高にいい、としか言えないですね。
かろうじて10代、若くて頭が柔らかい頃から聴いているクリーデンスは、僕の体にしみ込んでいるのでしょうね。