Everybody's Got Something To Hide Except Me And | 自然と音楽の森

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洋楽の楽しさ、素晴らしさを綴ってゆきます。

20160213Beatles


 ◎Everybody's Got Something To Hide Except Me And My Monkey
 ▼エヴリバディーズ・ゴット・サムシング・トゥ・ハイド・エクセプト・ミー・アンド・マイ・モンキー
 ☆The Beatles
 ★ザ・ビートルズ
 1968
 2016/2/13


 本日は、本家BLOGで上げている「ビートルズの213曲」の記事の抄訳。

 年初の「申年」の記事でも触れた曲ですが、ここであらためて。



 Everybody's Got Something To Hide Except Me And My Monkeyは、2枚組アルバムTHE BEATLES 通称「ホワイトアルバム」のC面4曲目として1968年11月22日に世に出ました。
 作曲者はジョン・レノン、名義はもちろんLennon-McCartney。
 ビートルズの4人だけで録音されています(普通のことですが)。

 この曲は、アルファベット、アポストロフィーとスペースを合わせて57文字分、ビートルズでいちばん長い曲名となっています。
 ただ、文章として長いだけで、長い割には覚えやすいですね。


 先ずは曲から、静止画ですが。



 爽快でかっこいい。

 テンポの速いロックンロールですが、カタにはまっておらず、ロックンロールを分解し過ぎたようなお遊び感覚に満ちた曲。
 この曲に似た曲って、世の中にそうはないんじゃないかな。
 ビートルズやジョン自身にもないから、一度しか使えないネタ、そんな感じがする曲でもあります。

 この曲にはサンバ風の打楽器が入っていますが、「チョカルホ」という打楽器だそうです、知らなかった。
 そんな楽器よく見つけてきたなあ。
 それがあったアビィ・ロード・スタジオのなんと奥深いことか。

 その音に象徴されるように、この曲はどこかしらエスニックな雰囲気を持っていますね。
 ブラジルというからにはサンバで踊りたくなるリズム、でも、速すぎないかな・・・
 I Call Your Nameでレゲェ(カリプソ)を先取りしていましたが、ビートルズには実はリズムの面でも先見の明があった。
 とまで言ってしまうと、言い過ぎかもしれない。
 ビートルズはいろんな音楽が好きでいろんなことを試してみた、ただそれだけで当たり前のことのような気が、僕はします。


 これ、ビートルズではいちばん開放的な曲といっていいいでしょう。

 ジョン・レノンのヴォーカルも炸裂しています。
 「変な声」、最後の部分の"come on, come on"と繰り返すところも、テレコが壊れたかのように繰り返されるのが面白い。

 この曲は「アフタービート」に惑わされます。
 ギターのカッティングとドラムスだけで始まりますが、演奏がフルになるとギターの音が実は裏打ちの拍だったと分かる。
 だからジョンのヴォーカルが、間違ってフライングしたかのように息詰まりながらせわしなく入ってくるように感じられるのが面白い。
 人を喰っているというか、茶目っ気たっぷり。

 しかしその実、演奏はタイトすぎるくらいに引き締まっている。

 ジョージ・ハリスンのギターもハードロックのリフといっていいほど。
 ギターソロはないけれど歌の終わりのオブリガートもハードロック的。

 リンゴ・スターのドラムスはスネアの音が妙に高いのが印象的。
 ばしっと引き締めている感じがしますね。

 そして何よりポール・マッカートニーのベース。
 圧巻は2'03"に飛び込んでくるあまりにもぶっ飛び過ぎのフレーズ。
 前にも書きました、このベースの音を聴いて何も感じない人は、はっきり言ってロックを聴く「センス」がない、と言いたいですね。
 リッケンバッカーらしい腰のあるものすごい迫力の音で、エリック・クラプトンがポールのプレイに舌を巻いたのも分かります。

 なんだか分からないけどハイパーな曲。
 こんな曲が、同じC面のHelter-Skelterの前に面に入っているの味噌。

 中3の頃、ヘヴィメタル狂だったクラスメイトがいて、彼にビートルズにもHelter-Skelterという「ヘヴィメタル」な曲があるんだと教えられましたが、残念ながらその時まだそれを聴いたことがなかった。
 少ししてようやくLPを買って(2枚組で高くて後回しになっていた)、いよいよ買って聴いた時、Helter-Skelterの前に出てきたこの曲に先にノックアウトされた、そんな思い出が。
 ポールのそのベースにはほんとうに倒れそうになりました。
 ビートルズがなぜ音楽創作集団として偉大なのかが、頭ではなく感覚としてで分かった、僕にはそんな曲のひとつでもあります。

 この曲で面白いのは、タイトルはEverybody... Except Me And My Monkeyですが、曲中ジョンは、"...except "for" me..."と"for"を入れて歌っていること。
 この場合はどちらも文法的に正しいとのことですが、いざ歌うとなると"for"があるほが語呂が良くてジョンも歌いやすい、しかし一方で曲名は少しでも短くしたい、といったところでしょうか。
 ただ、歌を聴いて慣れた上で曲名を読んで発語してみると、なんだか舌足らずな感覚を受けてしまうのが面白いところです。

 ところで。
 「僕と僕のモンキー以外は何か隠さなければならないことがある」
 「僕のモンキー」とは一体!?
 ジョン・レノンはこの曲の録音の頃オノ・ヨーコと行動を共にするようになっていました。
 "monkey"は昔(今も?)西欧人が使う日本人の侮蔑語。
 でも、この曲を聴くと、ジョンの"monkey"に対する激しいまでの愛情を感じてしまうのは僕だけでしょうか・・・!?

 ただ、ですね。
 ジョンとヨーコには隠すものが何もないからといってLPジャケットで全裸になることはないでしょうに・・・
 一応補足説明すると、TWO VIRGINSのことでして、ご興味があるかたはネットで探してみてください・・・

 そして。
 この曲でジョンは"take it easy"と歌っています。
 僕は”take it easy"という言葉、イーグルスではなくここで覚えました。
 イーグルスの曲を知ったのはこれよりだいぶ後のことでしたから。

 2番の歌詞では"make it easy"と少し言葉を変えていますが、"make..."の場合は"take..."より少し能動的な感じがします。
 つまり、"take..."はあくまでも成行任せであるのに対して、"make..."はもう少し自らの気持ちを動かして臨むという感じかな。


 短いし、アルバムの中の1曲に過ぎないけれど、ビートルズがなんだかすごいことがあらためてよく分かる曲ですね!