Help! ザ・ビートルズ  | 自然と音楽の森

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洋楽の楽しさ、素晴らしさを綴ってゆきます。

20151009Help


 ◎Help!
 ▼ヘルプ!
 ☆The Beatles
 ★ザ・ビートルズ
 released in 1965
 2015/10/9


 10月9日はジョン・レノンの誕生日。
 1940年生まれ、今年で75歳。
 四分の三世紀、アニヴァーサリーイヤーですね。
 ジョン誕生日おめでとう!

 というわけで今日はビートルズのHelp!

 この曲は2作目の映画『ヘルプ! 4人はアイドル』のテーマ曲として、1965年7月23日にシングル盤(B面曲はI'm Down)8月8日にA面が同映画のサウンドトラックとなるアルバムHELP!の1曲目として英国で発売されました。


 最初はオリジナルステレオヴァージョン
 映画『ヘルプ! 4人はアイドル』冒頭シーンの静止画に歌詞が写るものです。



 
 続いてテレビ番組のライヴ。




 ジョンお得意、曲の前に喋って踊る(!?)仕草が見られます。

 ジョンがエレクトリックギターで弾いていますね。
 これはこれでいいのかもしれないけれど、でもやっぱりアコースティックギターのカッティングだからいいかな、とあくまでも僕の個人的意見ですが。

 まあ、彼らのライヴは往々にしてだれているのですが、それでもこれは演奏がライフだから貴重といえますね。
 ジョージも「下降するリフ」を軽やかにこなしている。
 コーラスもそれなりにうまくいっているし。


 この曲について詳しくは、本家BLOGのこちらの記事をご覧ください。
 本家ではビートルズの213曲をすべて記事として上げることにしていて、その一環として、ジョンの誕生日に合わせて上げたものです。
 
 以下はそこからの抄訳です。

 ジョン・レノンはこの曲を勢いで作ったというのですが、それはよく分かります。
 一度しか出てこない曲の始まり、Aメロ、Bメロ、それぞれのつなぎの部分が強引というか、流れのようなものがなくコード進行も歌メロもスパッと切り替わります。
 曲が出来てしまったからしょうがない、これで行こう、これしかないというジョンの強い意志をそこから感じますね。

 サビの最後、"Won't you please, please help me"の部分でいきなり声が高くなるのも、考えたら出てこない、勢いから出た音だと思います。
 しかし、そこを下降するギターリフでつなぐという抜群のアイディアが、強引ではあるけれど納得させられるつなぎになっています。
 最後の方でようやく出てくるとのことで、演奏中に思いついたのでしょう。

 そう、この曲のキーワードは「下降するギターリフ」
 7小節目8小節目に最初に出てきてサビの最後にも入るあのフレーズで、下降するギターフレーズは中学時代に最初に覚えたリフのひとつ。
 ビートルズでギターを弾き始めた人は同じような体験をしているのではと。
 これ、正確に言えば、音は上がっていくんですけどね。
 5弦7F→4弦5F→3弦開放→2弦開放と8分音符でつなぎ、以降5弦6F→4弦4F→3弦開放→2弦開放と、5弦と4弦を抑えるフレットがひとつずつ下がっていくのを「下降する」と表現しているわけです。
 最初は1音ずつピッキングしていたのですが速くてついてゆけない。
 そのうちある本で、ダウンピッキングでピックを弦の上を滑らせるように動かすことを知り、やっと弾けるようになりました。

 もうひとつこの曲の特徴が「後追いコーラス」。
 最初のバースはこんな感じ。
 ポールとジョージのコーラス
 When ~ When I was young ~
 ジョンのヴォーカル
   When I was young, so much younger than today
 このようにずれてコーラスするもので、これも抜群のアイディア。

 コード進行がまたいいですねこれが。
 コードストロークだけで歌う曲ってありますが、僕の中ではその代表格。
 キィはAですが、途中でGが出てくるのが曲者というか。
 (キィがAの場合、通常使われるのは、属和音Eと下属和音D)。
 しかしそれは「循環コード」というものであることも当時本で知りましたが、これがまた効果的で面白い。
 また、キィがAで使われる和音、A、F#m、D、Bm、E、C#mとすべて出てくるのでギターの練習にはもってこいの曲。
 ヴァースの部分でAからばれーおC#mにいきなり上がるのを弾けるようになった時の嬉しさといったら。
 いまだに、今も、そこをひいてひとり悦に入っていました(笑)。

 ポール・マッカートニーのベースが「トーントトーン トーントトットッ」という1拍目が伸びるリズムを刻んでいるのがまた素晴らしい。
 旋律ではなくリズムでもベースを聴かせてしまうポール、すごい。

 リンゴ・スターのドラムスも微妙に跳ねているのがいい。
 大学時代にバンドでドラムスをやっていた友だちによれば、この微妙な跳ね加減は難しいとのこと。
 やはりリンゴは技量よりもセンスで聴かせる人ですね。
 いや、下手だというのではなく、テクニックに走らないということ。


 この曲はモノーラルヴァージョンとステレオヴァージョンが違います。
 モノーラルヴァージョンの方がジョンの歌い方がややソフトで、
 ステレオヴァージョンはジョンらしいドスの利いた声になっています。
 そして、0'21"の部分の歌詞が、ステレオでは"But now these days are gone"と歌うのに対し、モノーラルは"And now these days are gone"となっています。
 "but"と"and"ではまるで意味が反対ともいえますよね。
 ジョンは、短い間の別テイクで歌詞のニュアンスを変えてしまうほど迷っていた、繊細だった、ということなのでしょうね。

 もうひとつ顕著な違いは、0'26"の部分のジョンの歌い方。
 "Now find I've changed my mind"という歌詞の"changed my mind"の部分ですが、ステレオでは「チェンジママインド」と早口なのに対し、モノーラルでは「チェンジドマイマインド」と単語を区切って歌っています。
 細かいようですが、聴くとはっきりと分かります。
 特に歌い方のソフトさ、鋭さは感覚としてよく伝わってきます。
 シングル盤ではモノーラルヴァージョンが使われましたが、モノーラルヴァージョンは現在モノーラル盤CDで聴くことができます。
 その他に入っているのはすべてステレオヴァージョンです。

 ジョンの歌もまさにこのメッセージを歌うにふさわしい。
 この時は「演じる」必要がなく、ほとんどそのまま歌ったのでしょう。
 だからある意味この歌は「ソウル」であるともいえます。
 「ソウルミュージック」ではない「ソウル」。

 曲の最後、張り詰めた先に何かが吹っ切れたように明るく終わるのが、まさに救われた感じがしますね。
 ビートルズの中でも曲の終わらせ方が特に巧い1曲でしょう。




 個人的な思い出をもうひとつ、ふたつ。

 僕は中学時代、英語の発音を自分なりに熱心に勉強していました。
 中学生向けの英和辞典には発音時の口の形を絵にしたものがあり、それを見て真似して覚えました。
 時には数学の時間に、いちばん前の席でそれをしましたが、数学の先生が寛容な人で、何してんのとだけ言われました。

 「ヘルプ」では"L"の発音が、僕も日本人である以上、最初はかなり違和感がありました。
 「ヘルプ」って言ってはいけない、「ヘゥプ」という感じになる。
 でもすぐにそれが自然に言えるようになり、嬉しかったものです。
 Please Please Meの"please"とともに、このHelp!で僕は"L"の発音を覚えたといっていいでしょう。
 ああ、あと"love"もですが。


 これは英語で歌うことの楽しみが詰まった曲でもありますね。
 Help me if you can I'm feeling down
 And I do appreciate you're being 'round
 Help me get my feet back on the ground
 サビのこの部分は歌っていて最高に気持ちがいいですね。
 "ou"で韻を踏んでいるのも素晴らしいし、3行目のくだりは意味としても素晴らしい。
 もちろんヴァースの部分も、どこを歌っても気持ちがいい。


 ジョンはこの曲について、「たいていの人は」単なるロックンロールだと思うだろうと語っていました。
 しかし僕は「たいていの人」ではなく、最初から最もジョン・レノンらしい曲として認識していました。
 勢いで作ったこと、歌詞のメッセージ性も含め、最もジョン・レノンらしい曲のひとつ、いやほんとうに最もジョンらしい、それがHelp!という曲だと僕は思います。
 僕の中ではもうほとんどこの曲はジョンの姿そのままといっていい。

 だから、ジョンの75回目の誕生日にはふさわしいかなと。


 この曲は僕の中では常にビートルズの上位25曲に入っている、たまにTop10に入る、という感じかな。
 今日はもちろんTop10、いや今日だけなら堂々1位ですが。