◎Anna (Go To Him)
▼アンナ
☆Arthur Alexander
★アーサー・アレキサンダー
released in 1962
2015/11/2
本日の1曲、アーサー・アレキサンダー Anna (Go To Him)
ビートルズが1963年のデビューアルバムPLEASE PLEASE MEでカヴァーした曲のオリジナル。
先ずはお聴きください。
続いてビートルズのカヴァーも。
ビートルズは1963年2月11日に「10時間セッション」を行い、10曲を録音し、既に発売されていたシングルAB面の4曲を加えてアルバムが作られました。
ビートルズのこの曲はその10曲のひとつ。
僕は本家BLOGで「ビートルズの全213曲」を1曲ずつ記事で上げてゆくことにしていますが、この曲について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
ビートルズの話を少しだけ。
僕はこの曲を中学時代に初めて聴きましたが、今回は僕の想い出を。
中2の頃、確かもう3学期だったから1982年のこと。
買ったばかりのアルバムPLEASE PLEASE MEを聴いていたところ3曲目のAnna (Go To Him)が流れてきたところで母が言いました。
「懐かしいね、この曲をカセットテープに録音して」
まったく意外なひとことでした。
母は音楽は好きで歌謡曲番組をよく観て聴いていたけれど、洋楽が好きというわけではない、と、その時までは認識していました。
母がシングルレコードが50枚くらい入る箱を持っていたのは知っていて、僕も興味本位でたまに中を見たりしましたが、洋楽は確か、なかった。
江利チエミとか坂本九とか美空ひばり、よくあるそういうの。
そうそう、父が好きだった夏木マリの「絹の靴下」が入っていたのは、小学生の僕でも何か違和感があったことを覚えています(笑)。
録音して欲しいというのでセットテープに録音することにしましたが、いくら短い30分テープでもそれ1曲だけ録音するのはもったいないので、他にビートルズの聴きたい曲がないか、僕は聞きました。
母は、何曲か知っているようでしたが、曲名は思い出せませんでした。
しょうがないので僕が、同じ年代の曲を30分集めて録音しました。
すべては覚えていないのですが、確実なのはShe Loves YouとDo You Want To Know A SecretそしてI Want To Hold Your Handsでした。
後日母に感想を聞きましたが、曖昧な答えで、ほんとうにこの曲以外は興味がないようで、僕もそれ以降母とはビートルズの話はしなくなりました。
きっとこの曲には何か想い出があるのだろうなあ。
でも、どういう思いや想い出かは聴かなかった。
うちの家族はドライなので、個人的な話はあまりしないのです。
僕が他人に対して個人的な話を聞かなくなったのもこのせいです。
向こうが話した場合は聞き役として聞くことはあるけれど。
日本でこの曲が流れたのは1963年後半か64年でしょうけど、母は、結婚する前、父と付き合っていた頃かもしれない。
ところでこの曲、日本のみ4曲入りEP盤が出ていました。
アンナ
ボーイズ
シー・ラヴズ・ユー(ドイツ語版)
悲しみはぶっとばせ
この曲はリーダートラックとなっています、つまりA面曲。
ただこれ、最後の曲は1965年のHELP!からの曲だから、リリースされたのは1965年以降ということになりますね。
ということはやはり、結婚した頃に聴いたのかな。
今となってはもう、話を聞くことができないのですが。
◇
オリジナルのアーサー・アレキサンダーは、この曲を1962年9月にシングル盤としてリリース。
ビートルズのデビューが同じ年の10月5日だから、その少し前。
彼らは新しい曲を積極的にステージで取り上げていたということで、そうした先取性、貪欲さもビートルズらしいところですね。
ビートルズがカヴァーしたオリジナルをいつか全部レコードを買って聴いてみたい、と、ビートルズを聴き始めた頃に思いました。
しかし、それから35年以上。
まだ達成しておりません。
この曲もオリジナルは聴いたことがない。
ビートルズがカヴァーした曲は計26曲ありますが、コンピレーションでも何でもいいから買って聴いた曲は、なんと、7曲しかありません・・・
ううん、あまりにも不義理ではないか・・・
というわけで、本家でこの曲を記事に上げると決め、オリジナルのCDを買って聴くことにしました。
THE GREATEST Arthur Alexander という編集ものです。
聴くと、いかにもその時代の「ソウル以前」といった趣き。
声が特徴的で、力強さと脆さが同居しているような響き。
この曲のみならずベスト盤を通して聴いた感想は、パーシー・スレッジのひな型、という感じがしました。
カントリーっぽさがどこかにある、ということですが、その部分は僕は想像していなかったところでした。
聴き馴染んだビートルズとの比較を話します。
先ずはビートルズはキィを上げていますね。
でも、音作り全体のイメージはそれほど変わらない。
テンポもリズムも同じです。
ただ、リンゴ・スターのドラムス、さすがは「聴かせるドラムス」、ちょっとひねってあってより印象が強い曲になっていますね。
キィ以外でいちばん違うのは、”Anna"の歌い方。
ジョン・レノンは「アーァナァー」と歌うのに対し、アーサー・アレキサンダーは「アナーァッ」という感じ。
そしてアーサーは、Bメロで歌が前突っ込みになっているのを、ジョンはもっとゆったりと丁寧に歌っています。
もうそれに慣れてしまっている、ということを差し引いても、ジョンの歌い方の方が分かりやすくていい、と思う。
ジョージ・ハリスンが弾く印象的なギターのリフ、フレーズ、オリジナルではピアノによるものですが、この曲の肝でもあるのでビートルズもほぼ同じに再現しています。
”Go with him"と歌った後に入る「ォアーナァー」というコーラス、ビートルズではジョージの声が特に効いているものですが、オリジナルにもあるけれど音が小さい。
コーラスグループでもあるビートルズはそこを強調したのは当然か。
余談ですが、ジョージとポール・マッカートニーがコーラスをつけると、ジョージの声の方が目立つことが多いんですよね。
ジョージの声はコーラス向き、て、これほめ言葉なのかな(笑)。
オリジナルは最後やや急にフェイドアウトしていますが、ビートルズはエンディングをつけた、これもよかった。
やはりライヴで演奏してきた以上エンディングは必要だったわけで、これもビートルズにしては自然なことでしょう。
ところで、この曲を聴いた多くの人が思うのではないかということ。
曲のサブタイトルは"Go To Him"なのに、ジョンは"Go With Him"と歌っている。
もしかしてオリジナルは"To"と歌っているのをジョンが変えたのか、と思いましたが、オリジナルも同じ"with"でした。
だからこの謎は今回も解けませんでした。
僕が考えたのは、"go to him"というのは表に出ない心の中の問題で、彼女なんてヤツのところに行ってしまえ、と思っている。
だけど歌では目に見える行動を示していて、一緒に行けよという"go with him"になったのかな、と。
まああとはレコード会社の誤植という可能性もあるかもですが。
ただ、サブタイトルと歌が違うことを、ジョンは妙に気に入った、だから持ち歌にしたのかもしれない、と。
しかし、ジョンがオリジナルと変えている歌っている部分が1か所あり、そこが僕にはとっても興味深かった。
サビの以下のくだりです。
Give back "your" rings to me
And I will set you free
Go with him
オリジナルでは"my" ringsと歌っていたのを、ジョンは”your" ringsに変えています。
"my"だと「俺がやった指輪を返せ」、それは俺のものだ、という強欲さというか、ある意味情けないというか。
しかし"your"だと、僕が君にあげた、それを君は暫く大事にしていた、という気持ちの部分、そして付き合っていた時間が感じられ、より人間的に響いてくる、と。
さすがは詩人ジョン・レノンといったところでしょう。
比較の話になりましたが、オリジナルも気に入りました。
CD全体も僕が好きな60年代前半のR&Bだし、買ってよかった。
今回、決めました。
本家で213曲の記事を上げてゆくのをきっかけとして、オリジナルを聴いたことがない曲のCDを買って聴き進めてゆくことに。
目的があれば物事も進んでゆきますよね。
ちなみに、僕がこれ以前にオリジナルを聴いたことがある7曲は以下の通り。
Please Mr. Postman / Marvelettes
Roll Over Beethoven / Chuck Berry
You've Really Got A Hold On Me / Smokey Robinson & The Miracles
Rock And Roll Music / Chuck Berry
Kansas City / Wilbert Harrison
Words Of Love / Buddy Holly
6曲目だけロックンロールのコンピレーションもので聴きましたが、あとは皆有名な人ばかり(1曲目はモータウン)。
僕がいかに「言うだけ」だったかが分かりますね(笑)。
こちらのBLOGでも、オリジナルを買って聴いた際には、いつもではないかもしれないけれど、記事を上げてゆきます。