毎年恒例、今年の良かった洋楽新譜アルバムのまとめです。
新録音による新譜限定、リイシュー盤は除きます。
15枚、早速、1位から順に紹介します
★1位
HYPNOTIC EYE
Tom Petty & The Heartbreakers
トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ。
1位はおそらくここにいらっしゃる方は皆様お見通しかと。
ロックンロールという音楽だけを追求し続けてきたこの姿、このストイックさは恐ろしいほどのものがありますね。
それでいてロックが好きな人であれば誰にでも訴える力がある。
それは彼らの曲の良さも証明された、ということでしょう。
2曲目Fault Line、もう最初に聴いた直後から口ずさんでいました。
2010年代ロック最高傑作、あと5年あるけれど、そう断言します。
もしこれ以上の作品が出るなら、それは彼ら自身のものになるはず。
そう、傑作、という言葉がこれほど似合うアルバムも、そうはない。
★2位
STANDING IN THE BREACH
Jackson Browne
ジャクソン・ブラウンの新譜は歌心がある曲ばかり。
ファン歴は浅いものの(笑)、ずっと昔から接してきていた僕が、これほど歌としていい曲を書く人だったか、と少々驚いたくらい。
1曲目The Birds Of St. Marksは、今から40年以上前、デビュー前に書いた曲として一部マニアには知られていた曲を、漸く公式に録音したもので、12弦ギターで始まるそれこそバーズのような響き。
彼の優しさとシニカルな部分がうまく溶け合った、名曲といっていい。
今更ながら、彼の音楽は意外とアメリカーナしていないと気づき、センスの鋭さにあらためて脱帽しました。
ただ、このアルバム、訳あって聴く回数を制限しています。
3月の来日公演、行きたいけど、行けなそう、でも行きたい・・・これ以上行きたいという気持ちを増長させないためです。
だから公演が終わるともっと聴くかな、いや、そんなことすると、やっぱり行けばよかったと後悔するかもしれない・・・(笑)。
★3位
SMOKEY & FRIENDS
Smokey Robinson
スモーキー・ロビンソンの新譜は、彼が書いた曲を(共作あり)、ゲストを招いて再録音するというもの。
言うまでもない、彼が素晴らしい作曲家であることを再認識。
ゲストとのやりとりも微笑ましく、録音がいい雰囲気で行われたことが想像されて心温まるものがあります。
例えばYou've Really Got A Hold On Me、スティーヴン・タイラーが最後シャウトするところで、スモーキーは間近でその声に接して驚いたようで、笑いながらほめたたえているのが面白い。
僕のようにスモーキーが好きな人でも、彼の曲が好きな人でも、そしてゲスト目当てでも、どんな聴き方でも満足できる良質なアルバム。
スモーキーにはこれからもますますお元気でいてほしいですね。
★4位
YOU SHOULD BE SO LUCKY
Benmont Tench
トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのキーボード奏者にして他のアーティストにも引っ張りだこのベンモント・テンチ。
ソロアルバムを出すと聞いた時、最初は誰か歌い手がいるのかと予想していましたが、なんと自ら歌っています。
歌はまあ味わいがある系でインパクトのある声ではないですが、趣味的な音楽をさらりと聞かせるにはむしろ合っています。
トム達本家のアルバムが出てから、そうか、あの緊張感から開放されたい部分もあってこのソロを作ったのか、と思いました。
ナット・アダレイのWork Songに歌詞をつけたようなイメージのYou Should Be So Luckyのファンキーさが颯爽としていていい。
★5位
TERMS OF MY SURRENDER
John Hiatt
ジョン・ハイアットはよっぽど僕と合うみたい。
前作でポップに大きく振れた反動か、今回はトラッド的、ブルーズ的、アメリカーナ的なざらつき感が強い作品になっています。
アコースティックギターの強さが前面に出ている音もいい。
そして何よりやっぱり歌としていい曲ばかり。
しかしそれにしても、売れない、話題にならない(日本では)。
「降伏期間」とまあなんとも自虐的タイトル、その開き直りはファンとして心強いものはありますが。
カントリーブルーズっぽいMarlene、愛情と皮肉が交錯する愛嬌のある曲、そして歌い方にはくすっとさせられてしまう。
★6位
RIDE OUT
Bob Seger
ボブ・シーガーはアメリカの歌謡曲のような人かもしれない。
この新譜は、歌を歌ってますという心意気がよく伝わってきます。
それにしても今回は、しみじみと響いてくる曲が多い。
バイクの轟音というイメージはなく、大型SUVのクルーズ感覚かな。
中でも、ウディ・ガスリーが歌詞を書きウィルコが曲をつけて歌ったCalifornia Starsは、ソウルっぽいブラスの使い方も含めて、ああいい歌聴いているなあ、と、ほんとしみじみ思う。
一方で世界の問題を箇条書きにして叩きつけるIt's Your World、この重たさには考えさせられてしまう。
特に、"Let's talk about breathing in Beijing"というくだり・・・
正直、期待をいい方に大きく裏切った収穫の1枚でした。
★7位
GIRL
Pharrell Williams
【2015年1月19日追加】
大晦日に書く際になぜか忘れていた2枚を追加します。
なぜ忘れていたのか、買ったCDはエクセルにデータを落とし、記事編集の際にはそれを見直していたのですが・・・
その1枚目、ファレル・ウィリアムス。
世代的に80年代の音楽を聴いた人だから、僕も入りやすい。
分かりやすく言うと、80年代の音楽に、80年代には薄まっていた本物の黒さを加えたといったところでしょう。
それはブルーノ・マーズも同じでしたが、こうしてあらためて考えると、ヒップホップ革命は大きな意味があったのだと思いますね。
おまけに、当然のことながらこれは歌メロがいい歌ばかり。
ひと月ほど車で聴いていましたが、昨年僕が買った中では車に合うという点ではいちばんでしょう。
★8位
HIGH HOPES
Bruce Springsteen
ブルース・スプリングスティーンはここ数年、アルバムを出すペースが速い上に、新作が出る度に前作よりいいと思う作品を出してくる。
今回はレイジ・アゲンスト・ザ・マシーンのギターのトム・モレロをバンドメンバーとして迎え入れたことが音にも特徴としても出ていて、音の塊がボスの声に引っ張られて押し寄せてくる感覚。
いいんです、やっぱりボス大好き、と思いました。
ただ、ジャケット写真のイメージが少し今までと違うかな。
しかし、最後のDream Baby Dreamを聴いて僕は悩みました。
スーサイドというデュオの曲のカヴァーとのことですが、夢を持つことの大切さをボスが切々と歌い上げる感涙ものの曲。
さて、お前には夢があるのか。
その時の僕は、夢らしい夢を持たずに生きていたことに気づき、ボスにそう言われて恥ずかしくなり、アルバムを聴くのをやめました。
それだけボスの歌の訴求力が強いということでしょう。
しかし、それから僕も考えて、今は夢がある、と言えるようになりました。
★9位
THE BREEZE
Eric Clapton & Friends
忘れていたもう1枚はエリック・クラプトン&フレンズ。
亡くなった朋友J.J.ケールに捧げるアルバムで、多彩なゲストを招いて彼の曲を歌ったカヴァーアルバム集。
エリックはほんと、J.J.ケールと息が合うんだなと。
普通に彼のアルバムとして聴けました。
しかも、ここ数年ではいちばんいい作品。
トム・ペティが参加しているのはうれしい限りですが、「弟分」(?)のマーク・ノップラーもいい味を出している。
若手ではジョン・メイヤー、そして御大ウィリー・ネルソン。
年に忘れいていたことを思い出してからまた聴いています。
★10位
LULLABY AND... THE CEASELESS ROAR
Robert Plant
ロバート・プラントはもはやロック界の仙人といえるでしょう。
音楽を通して世界中を旅して、もはや、アフリカでもない、アジアでも南米でもない、もちろんヨーロッパやアメリカでもない、それはもうロバート・プラントの世界としか言いようがない、「無国籍のエスニック音楽」を作り上げてしまいました。
サウンド面では歌の合間に入ってくるギターなどのフレーズが印象的で、実はブルーズの魂も受け継いでいるのが分かる。
呟くように小声で歌うヴァースを受けてダイナミックなギター低音により曲が展開するTun It Upが特にその色の曲。
レッド・ツェッペリンのフリークともいえる僕ですが、今のロバート・プラントは大いに支持します。
★11位
STORYTONE
Neil Young
ニール・ヤングのアルバムは今年も上半期に先ずはカヴァー曲集であるA LETTER HOMEを出し、そして新曲から成るこれと、相変わらず年2作も出し、意欲旺盛な人ではあります。
今回もとてもいい、いつも通りのニール・ヤングです。
強いていえば今回は繊細さがアルバムの色になっていて、みずみずしいとまでいえる若さが感じられます。
しかし、10月にさいたまのソウルマニア友だちMと話したことが頭の中にずっと残っていて、そのことを考えてしまう。
ニール・ヤングは実際の人物像と歌のイメージが違いすぎると言われているらしいと僕が話すと、Mは、そりゃそうだろう、と一言。
その後に出たこの新譜を聴くと、まさにMが言った「繊細なようなふり」、そのものだったからです。
人の意見に左右される、というわけでもないのですが、話した直後だっただけに影響が残りました。
★12位
LOVE IN THE FUTURE
John Legend (2013)
ジョン・レジェンドは今年になってこの中のAll Of Meが大ヒットし、小林克也さんも絶賛していました。
僕は、昨秋にこれが出たのは知っていて、そのうち買おうと思ってすぐに忘れ、そこにあの大ヒット。
やられましたね。
でも、中高生時代を思い出して楽しかった。
昔は、LPを買った後でシングルカットした曲が大ヒットすると、なぜか鼻高々、逆の場合は悔しかったものですが、そうしてヒットチャートを追う楽しさが戻ってきました。
アルバムもいいですね、今のソウルと言える落ち着き。
そして大きな優しさに包まれる感覚がいい。
ジョン・レジェンドはきっとピアノが上手いのだと思う。
僕は弾けないので技術的にどうとは言えないけれど、歌とピアノのコンビが素晴らしい、上品で上質な響きの音楽。
1年遅れなければもう少し順位が上だったかもしれない。
★13位
1989
Taylor Swift
いつの時代にもポップスターは出てくるものだ。
テイラー・スウィフトの新作は、自らが新たなポップスター、ポップアイコンであることを高らかに宣言した堂々たる1枚。
最初のシングルShake It Off、その言葉を歌う部分が、商品として最高、いい意味で言ってます、まさにポップソングらしいポップソング。
そして次のシングルBlank Space、Bメロ(サビ)に入って5小節目"Got a long list of ex-lovers"の部分の歌メロは最高に気持ちいい。
歌メロという点でいえば今年出会った曲で最高に好き。
彼女は上品なのもいいですね、僕好み(笑)。
さて、ポップスターとして大きく出た彼女、次はどこへ向かうのか。
★14位
STRUT
Lenny Kravitz
レニー・クラヴィッツの新譜は近年にない大きな打ち上げ花火でした。
最初に聴いた瞬間から胸倉を掴まれるような曲ばかり。
ポピュラー音楽としてのロックの楽しさを詰め込んだアルバムは、トム達とは正反対、贅肉たっぷり、欲望の塊。
しかし、正直、ひと月もしないうちに飽きました。
僕にとっての「不幸」は、前作BLACK AND WHITE AMERICAをあまりにも愛しすぎていて、その方向性の違いが大きいことでした。
最初のうちは、前は前、今は今と納得させようとしていましたが、そうすることでかえって前作への思いが募ってしまい・・・
さらなる「不幸」は、スモーキーのOoh Baby Babyのカヴァー。
「なんてことしてくれたんだ・・・」と、僕は正直思いました。
レニーらしいといえばそれまでですが、それをよりによって僕が大好きな人のこの曲でやってくれるなよ、と・・・
そりゃスモーキーのように歌うと真似にしかならないかもだけど、でも、リンダ・ロンシュタットのように素晴らしいカヴァーもあるから。
などと珍しく辛口になりましたが、ポップロックとしては聴きやすいです。
レニーも来日公演がありますが、やはり、行けなそう。
3月前半は大物のコンサートが集中がしているので、願わくば、10日くらい東京にいて全部行きたいのですが。
★15位
ROCK OR BUST
AC/DC
AC/DCのこのアルバムがなんとも不思議。
すごくいいかと言われると、今回はそうでもないかな。
でも、今は25枚連装CDプレイヤーに入れっ放しになっていて、このCDの番が来ると、自然と気持ちが入って、ついつい聴いてしまう。
僕が元々ハードロック好きというのはあって、このアルバムのハードさは今の僕の齢にはちょうどいい具合なのでしょう。
AC/DCといえばシャープなSGのギターサウンドが特徴でしたが、今作はもっと厚みのある音で、違うといえば違うんだけど、でもその音だから自然と聴いてしまう部分はあるのだと。
マルコム・ヤングが病気で引退したのは残念だけれど、バンドはそれでも生き残る宣言をした、そんなアルバム。
マルコムの回復を願ってやまないのですが。
★16位
ART OFFICIAL AGE
Prince
プリンス喧嘩別れしたワーナーと仲直りして戻って来た。
往年のファンにはうれしいニュースでした。
そして出たアルバムは、アンダーグラウンドな感覚が希薄で、大手らしいきらびやかでハッタリの強い音にしてきたのはさすが才覚溢れるプリンス。
それにしても、プリンスの音楽ってこんなに爽やかだったかなあ。
そりゃあのトレードマークともいえる奇声の唸りもあるけれど、それすら「待ってましたっ!」となってしまう。
タイトルは「人工的」という意味の"artificial"とかけたものでしょうけど、"official"としっかりと入れているこのエスプリがいかにも。
プリンスはやっぱり大好きですね。。
★17位
ROYAL SESSIONS
Paul Rodgers
ポール・ロジャースが念願叶ってマスルショールズで録音した主にサザンソウルのカヴァー曲集。
オーティス・レディングは3曲、いかに好きかが分かりますが、一方でボーナストラック3曲のうち2曲がサム・クックというのはサムを敬愛しているけれど、遠慮している部分もあるのかな。
まあ、日本では聴けるのですが。
バート・バカラックの曲でディオンヌ・ワーウィックで有名なWalk On By、アイザック・ヘイズの「怪演」でも知られていますが、それを普通のソウルっぽく歌ったこのテイクもいい。
そしてなぜか1曲だけモータウンのIt's Growing、これもスモーキー・ロビンソン作曲。
ポール・ロジャースはポール・マッカートニーのトリビュートでもLet Me Roll Itで決めていますが、やはり彼が歌うと歌に筋が通って映えますね。
このシリーズ、僕は続編をぜひ聴きたいけど、どうかな。
さて、今年は特別賞が2枚あります
★特別賞
THE ENDLESS RIVER
Pink Floyd
ピンク・フロイド20年振りの新作にして最後のアルバム。
音楽としてもいろいろなイメージを掻き立てられますが、彼らの本当の最後のアルバムということに敬意を表して。
亡くなったリチャード・ライトへの思いもあり、このアルバムはピンク・フロイドの音楽だけではなく、人が好きな人には愛おしいアルバムに感じられるはずです。
★特別賞
THE ART OF McCARTNEY
Various
今年最後の最後になって最大のアルバム、ポール・マッカートニー・トリビュートアルバムが出ました。
「ジ・アート・オヴ・マッカートニー」
ほんとうにポール・マッカートニーは史上最強のメロディメイカー!
◇
今年も大好きなアーティストの新譜が続々と出ました。
昨年のポール、今年のトム達と、2年連続で元々大好きなアーティストが期待通りかそれ以上のアルバムを作ってくれて1位に輝いています。
しかしそれ以前はボビー・ウーマックなど、そうとは言えない人のアルバムが1位になっていたこともあったので、僕も保守的になってきた、ということでしょうか。
来年はどんなアルバムが聴けるか、楽しみです!
◇
2014年もこれで終わり。
今年も1年間、当BLOGをお読みいただきありがとうございます。
よいお年をお迎えください