SOULBOOK ロッド・スチュワート | 自然と音楽の森

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自然と音楽の森-March31RodStewartSoulbook

◎SOULBOOK

▼ソウルブック

☆Rod Stewart

★ロッド・スチュワート

released in 2009

CD-0384 2013/3/31

 

 ロッド・スチュワートの新作が5月に出ることが決まりました!

 

 今回はカヴァーアルバムではなく、実に12年ぶりとなるオリジナルを中心とした新作、いやがうえにも期待が高まってしまう。

 Facebookで新曲を聴けるのですが、僕はまだ聴いていない、買ってからのお楽しみにとっておきます。

 

 そんなロッドのソウルのカヴァーアルバムを今日は取り上げます。

 

 4日前のアイアン・メイデンの新譜を除くと、僕の中にはこのところソウルのカヴァーの流れでが来ていて、その一環としてこれを聴き、記事に選びました。

 

 ロッドは、その2001年のアルバムの後Warnerグループから契約を打ち切られたのを機に、一時ロックから離れ、アメリカのスタンダードを集めたカバーアルバムをリリース。
 これが大ヒット、Warnerの鼻を明かし、2、3、4枚目と続けてリリース、いずれも大ヒット。
 2005年にひと区切りつけたロッドは、贖罪のつもりか(笑)、今度はロックの名曲を集めたカバーアルバムをリリース。

 なかなか良かったのですが、ロックの場合はどうしても、オリジナルを聴きなじんでいるもののほうが多くて・・・

 

 そして2009年の秋、満を持したかのように、ソウルのカバーアルバムをリリースしました。
 まさに、ついに、という感じで、このアルバムほど、多くの人が待ち望んでいたアルバムというのもそうはないのではないか。
 逆にいえば、どうして今までなかったのか。
 

 僕はもちろん最初に店頭で見た日に買って聴きましたが、聴き手と作り手が同じイメージをすんなりと共有できる、期待通りの仕上がり。

 ゲストも多数参加、豪華な、気持ちが豊かになるアルバムでもあります。

 

 今回もカヴァーアルバムということで、オリジナルにも触れながら話を進めます。

 

 

 1曲目It's The Same Old Song
 オリジナルはフォー・トップス、モータウンの人気グループ。

 トップスは体育会系の熱いノリが特徴で、この曲は特に元気一番みたいな明るい曲。

 ただし歌詞を読むと、それは強がりであるのが分かるのですが。
 ロッドはいきなり、とろぉっと、なんだか神妙なアカペラで歌い始め、あれれ、どうしちゃったんだろうって・・・強がりの部分を強調してみたのかな。

 だけど心配ご無用、演奏が始まると、オリジナルに近いイメージ、明るく楽しくホップした曲が始まります。
 音がこもったような、古臭い、懐かしい、アナログ的な響きなのがまたいい。
 ロッドは、それほど声を張り上げるわけでもなく、淡々と聴こえるけど気持ちがこもったいつもの歌い方。
 僕がトップスで最も好きな曲なので、とりわけうれしい選曲。

 でも僕は、この曲はオリジナルよりも先にKC・&・ザ・サンシャイン・バンドで聴いていました。

 それから余談、ホワイトスネイクのNow You're Goneの曲名を歌う部分は、この曲のそれからいただいているに違いない、旋律が同じなのは偶然ではないはず。

 

 2曲目My Cherie Amour
 オリジナルはスティーヴィー・ワンダー、これはよく知られていますよね。
 そのスティーヴィーがハーモニカでゲスト参加、聴くと一発で分かります。

 

 ただ、スティーヴィーはハーモニカのみ、歌ってはいないのがミソ。

 あの独特の声が入ると、もうそのイメージになってしまい、ロッドの世界を確立できなくなりますからね。

 とろけるほどに甘い歌メロはロッド向き、歌メロの甘さではスティーヴィー・ワンダーの中でも十指に入るくらい素晴らしい曲。


 3曲目You Make Me Feel Brand New

 オリジナルはスタイリスティックス、日本では根強い人気を誇っていますね。

 メアリー・J・ブライジがゲストで参加。

 オリジナルはファルセットで「歌い倒す」ところが、ロッドはここでも大人びた穏やか、あくまでも自分の歌い方に徹しています。

 しかし、それだけでは何かパンチ力が足りないところに、女性ヴォーカルでも破壊力抜群のメアリーを招いたのが、この曲ではうまく機能していると思います。
 ロッドはかつてYou Are Everythingもカバーしていましたが、スタイリスティックスが好きなんですね。
 実は、スタイリスティックスは僕にはちょっと甘すぎて、あまりなじめないんです・・・
 これから聴こう。


 4曲目(Your Love Keeps Lifting Me) Higher And Higher

 オリジナルはジャッキー・ウィルソン。

 ロッドのこれを買った時点で僕が知らなかった2曲のうちの1曲で、ジャッキー・ウィルソンもまだ聴いたことがないし、だからうちにCDがないはずと思いつつHMVで曲目検索をかけたところ、映画『永遠のモータウン』のサウンドトラックのデラックス・エディションに収録されており、うちにCDがあることが分かりました。
 編集盤に収められた曲の場合、あれっこの曲うちにあるんだ、ということがまま起こりますね(笑)。
 モータウンのアップテンポの軽快な曲の典型で、ロッドもお手のもの。


 5曲目The Tracks Of My Tears

 オリジナルはスモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズ。
 そしてスモーキー・ロビンソン自身が参加!
 僕がソウルでいちばん好きな曲だから、これを歌ってくれた上に本人も参加なんて、もう感涙もの。
 コーラスの最後の"I need you"の後にオリジナルにはないコード進行を施し、さらに、ブリッジの部分にはかなり手を加えて劇的にしています。

 スモーキーの揺ら揺らとしたトレンブリング・ヴォイスをコーラスに、アコースティック色を強く出した、しっとりとした仕上がり。

 そんなことあり得ないけど、僕がソウルのカヴァー集を作るならこれは必ず選ぶ、最初に選ぶと思う(笑)。

 

 6曲目Let It Be Me

 

 オリジナルはサム&デイヴ、と思ってそれが入ったCDのライナーノーツを読むと、シャンソンのカバーらしく、作曲者のクレジットの中にはジルベール・ベコーの名前がありました。
 ということは、サム&デイヴはシャンソンのカバーをしていたわけで、当時としては、今でもだけど、なかなか洒落てますね。
 ただし、ロッドはサム&デイヴのを聴きなじんでいたと考えるのが自然でしょう。
 ジェニファー・ハドソンがゲストで参加、彼女は今年のスーパーボウルでも試合開始前に歌っていましたね。

 いかにも古臭いストリングスのアレンジ、まろやかな仕上がりで、今回のアルバムはロッドらしさを出すことを意識しているようですね。

 7曲目Rainy Night In Georgia

 オリジナルはブルック・ベントン。

 ボズ・スキャッグスに続いての登場であり、アーロン・ネヴィルもソウルのカバーアルバムで歌っていました。

 これはそもそもロッド向きの曲という感じですが、そういえばアーロンもあまり手を加えていなかったので、これはそういう曲なのでしょうね。

 ボズに比べるとだいぶ湿っています、それも個性。


 8曲目What Becomes Of The Broken Hearted

 オリジナルはジミー・ラフィン。
 知らなかった2曲のもう1曲だけど、モータウンの編集盤を見ると、見事、収録されていました。
 ミドルテンポのちょっと切ない系の曲。

 ゆったりとした歌メロで流れてきて、コーラスが終わるところだけちょっと早口になるのが印象的。


 9曲目Love Train

 オリジナルはオージェイズ。
 明るく楽しく元気に力強く人類愛を訴えるポップな曲で、オリジナルはNo.1に輝いており、70年代ソウルの良き時代を象徴するような曲。

 ロッドも煽るように歌っていて、この中ではいちばん盛り上がる曲。


 10曲目You've Really Got A Hold On Me

 これもスモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズ、2曲目ですが、やはりスモーキーは偉大ですね。
 それ以上にビートルズが歌っていることで有名な曲。
 ロッドは、オリジナルと同じく女性コーラスを入れて、掛け合いを楽しんでいます。


 11曲目Wonderful World

 オリジナルはサム・クック、10年前後ほど前にCMでも使われていて、日本でも割と知られた曲でしょう。

 この曲は明るくさわやかでちょっとシニカル、昔からとってもかわいらしい曲だと思っていますが、ロッドの歌い方は、なんだか少し照れているように感じられます。


 12曲目If You Don't Know Me By Now

 オリジナルはハロルド・メルヴィン&ザ・ブルー・ノーツ、そのリードヴォーカルは「ヒゲダンス」のテディ・ペンダーグラス。

 これはシールのソウルでも取り上げました、シンプリー・レッドのカバーがNo.1になったことなど。

 この曲は、シンプリー・レッドもロッドも、キー以外はもう手の加えようがない、そのままのアレンジで、それだけ完成度が高い曲ということでしょうね。
 ゴスペル風ソウルバラードの究極、70年代の逸品。 


 13曲目Just My Imagination

 オリジナルはテンプテーションズ。

 スモーキーと並ぶモータウンのファルセットヴォイス、エディ・ケンドリックス一世一代の名唱によりNo.1に輝いたバラードの名曲。

 ロッドはもちろんファルセットではなく、あくまでも自分らしく歌っています。
 僕はこの素晴らしい曲を、中3の時初めて買ったローリング・ストーンズのレコードであるライヴ盤STIL LIFEで知りました。
 ストーンズのスタジオバージョンはSOME GIRLSに収録されており、バラードではなくミドルテンポのロック仕立てになっていますが、それもなかなかいい。
 僕はロッドのこのアルバムを最初に聴いて、「この終わり方はずるい!」と思いました。

 余韻を残しすぎ、どうしてそこで去ってしまうのという寂しさがこみ上げてきましたが、アルバムを聴いてそんな気分になるのはめったにないこと。
 テンプスのオリジナル、エディ・ケンドリックスはこの曲をNo.1にした後にテンプスから去ってしまうのですが、僕はいつもそのことが頭にあり、だから余計に、この曲が最後というのが寂しく感じました。
 アルバムの最初と最後の曲にはとりわけこだわる僕としては、明るく景気がいい曲で終わって欲しかった・・・というのは、わがままか。
 でも、この曲の副題は(Running Away With Me)、そうか、ロッドは最後に去ってゆく、それでいいのかな。
 でもやっぱり、ロッド、去ってゆかないで!

 

 

 僕はこのアルバム、とっても大きな不満があります。

 

 

 どうして13曲しか入ってないの!

 

 もっと聴いていたい、13は縁起が悪いんじゃないの? せめてあと1曲入れてほしかった・・・
 だから余計にJust My Imaginationが最後というのが、これだけ大きな余韻が残って後に引きずるアルバムもそうはない、と。

 

 まあそう思った時点でロッドの勝ちなのでしょうけど、もちろんこの場合は喜んで負けます(笑)。

 

 ロッドは、熱く歌うという感じではまったくなく、むしろ涼しげに、さらっと歌いこなしています。
 だけど、そこに気持ちがこもっているのが、ロッドらしいところ。
 しかし、ソウルを聴くという気持ちで臨めば、いわゆる熱いソウルとは違う、だからそこは人により好き嫌いが出る部分かもしれないとは思います。

 

 

 ゆったりとした時間を過ごすにはとてもいいアルバム。

 

 何より曲がよく、気がつくと口ずさんでいます。

 それでいて車にも合うのはさすがはソウル、気持ちが乗りながらも落ち着いて運転できます。

 

 これ、続編は出るのかな、出て欲しいなぁ。

 

 もちろんその前に、5月のオリジナルアルバムを楽しみに待つことにします!!