◎MY TRUE STORY
▼マイ・トゥルー・ストーリー
☆Aaron Neville
★アーロン・ネヴィル
released in 2013
CD-0355 2013/1/31
アーロン・ネヴィルの新譜がブルーノートレーベルから出ました。
2013年初の新譜記事として、今日はこれを上げます。
アーロン・ネヴィルの新譜にまつわる情報は、Facebookでこのところよく上がっていて、テレビ番組でインタビューを受けたり、ライヴを行ったり、飼い猫の写真だったり(笑)。
このアルバムは、ドゥワップとその周辺の音楽を集めたカヴァーアルバム。
年代的には、アメリカンスタンダードというには新しく、本格的なロックの時代に入る前の1950年代から、一部ロックと重なる1960年代前半までといったところ。
アーロンがデビューしたのは1960年だから、デビュー前後の頃に周りを囲まれていた曲たちということになりますね。
ここで「ドゥワップ」について、Wikipediaからの引用で確認しておきます。
なお、引用者は改行を施し、一部表記変更を行っています。
*****
ドゥーワップ(doo-wop)はポピュラー音楽における合唱スタイルの一種。
ドゥワップ、ドゥー・ワップとも表記される。
1950年代半ばから1960年代初頭のアメリカで隆盛し、数多くのコーラスグループが生まれた。。
ドゥーワップの特徴は、メロディー(主旋律)以外は「ドゥーワッ」「シュビドゥビ」「ドゥビドゥワ」といった意味を持たない発音でのリズミカルな歌い方(スキャット)にあり、それが「ドゥーワップ」の名の由来となった。
グループの構成は3人から6人。
ステージやレコードでは通常は簡素な楽器の伴奏がつく。
メンバーそれぞれの担当パートはほぼ決まっており、主旋律を歌うリード・ボーカル、和音(ハーモニー)の中高音部を担当するテナー、中低音部を担当するバリトン、低音部を担当するベースに大きく分けられる。
人数が少ないグループや楽器の伴奏がつくのを前提としたグループではバリトンやベースがいないこともある。
ポピュラー音楽のコーラス・グループの多くはドゥーワップの歌唱スタイルを取るが、ドゥーワップという言葉は「1950年代の黒人音楽の一ジャンル」という限定されたイメージが強いため、通常はそのジャンルとスタイルを指す以外の使い方はしない。
*****
日本人に分かりやすいのはシャネルズでしょうね(笑)。
アーロンがデビューした頃はまさにドゥワップの時代だったというわけで、「僕の真実の話」というタイトルは曲名から取っているものですが、音楽に向き合う姿勢を示してもいるのでしょう。
このアルバムで歌われている曲のうち、僕が知っていたつまり曲名と曲が一致する曲は4曲、他1曲は曲は聞き知っていたけど曲名は知らなかったものでした。
今回は、僕自身の勉強の意味も込めて、オリジナルを調べて書き出すというかたちで記事を進めてゆきます。
曲名に続いて()内に記したものは(作曲者名 - オリジナル演奏者名 / オリジナルリリース年)です。
その前に、このアルバムは、キース・リチャーズがギター、グレッグ・リースがギターそしてベンモント・テンチがキーボードで全曲に参加し演奏しています。
そしてキースはドン・ウォズとともにプロデュースもしています。
◇
1曲目Money Honey (Jesse Stone - Clyde McPhatter & The Drifters / 1953)
オリジナルのクライド・マクファター&ザ・ドリフターズは、後にドリフターズになる母体のようですが、でもドリフターズは複雑な経緯があって話すと長くなるので、ここはその事実だけを書きます。
ただこれは、オリジナルよりも、ビリー・ウォード&ザ・ドミノズのヴァージョンでヒットして知られるようになり、ローリング・ストーンズもカヴァーしていた、という曲。
そうか、キースはここでいきなりつながってくるのか。
ついでに、「ローリングストーン誌が選ぶ500曲」では252位に入っているそうですが、それはまだ500曲を見たことがなかった、いずれの機会に。
この曲は「あうぅ~」と半音上がるコーラスで始まり、歌のバックに「しゅぱっしゅわ~」とコーラスが入る、僕が抱いていたドゥワップのイメージそのままで、アルバム1曲目から心を捉まれる最高の出だし。
2曲目My True Story (Eugene Pitt & O. Waltzer - The Jive Five / 1961)
ザ・ジャイヴ・ファイヴも僕は知りませんでしたが、グループ名が韻を踏んでいていかにもコーラスグループという響きですね。
話は戻るけど、Money Honeyも単純な単語で韻を踏んでいる言葉遊びが楽しい。
曲は正調R&Bバラード。
3曲目Ruby Baby (Jerry Leiber & Mike Stoller - The Drifters / 1956)
オリジナルの前にこの曲は、ドナルド・フェイゲンがTHE NIGHTFLYで都会風に歌っていましたね。
そのアルバムは僕が洋楽を聴き始めた頃に大ヒットしていて、当時は買わなかったけれどCDの時代になって割と早くにCDを買って聴いたので、この曲はしっかりと頭に刻み込まれています。
でも、オリジナルはドリフターズだったんだ。
この曲もタイトルが脚韻になっていますが、この言葉感覚がドゥワップなのでしょうね。
間奏のギターがいかにもキース、多分テレキャスター、切れとふくよかさが同居した音。
4曲目Gypsy Woman (Curtis Mayfield - The Impressions / 1961)
作曲者はカーティス・メイフィールド、ご存知ジ・インプレッションズの曲。
あ、でも、カーティスがライヴで演奏していて僕はCD持っていてだいぶ聴いたんだけど、ここで聴いてすぐには結びつかなかった・・・
ほんとうに曲の覚えが悪い上に、年を取ってから初めて聴いた(それは40歳過ぎてから)ものは余計の覚えが悪いですね。
それはともかく、バラード風の割と柔らかい曲で、まだカーティスのソロ時代のようにファンキーとまでは至っていない曲。
あ、だから分からなかったのか、と自己弁護・・・
5曲目Ting A Ling (Nuggette - The Clovers / 1952)
この曲はオリジナルでは単語の間にハイフン"-"が入っているのですが、ここではアーロンの表記通りに書きました。
ドゥワップは1950年代半ば以降に本格化したということは、これはまだ走りの頃でしょうかね。
アーロンも1941年生まれだから(もう72歳なんだ)、これは11歳、日本でいえば小学生の頃の曲ということですね。
ただ、韻を踏んでたたみかける曲名はもう始まっていますね。
6曲目Be My Baby (Jeff Barry, Ellie Greenwhich & Phil Spector - The Ronettes / 1963)
洋楽を好んで聴く人でこの曲を知らない人はいないでしょう。
ザ・ロネッツのあまりにも有名な曲ですが、僕の世代では1990年頃に映画「ダーティ・ダンシング」でかなり注目され、僕もそのサントラを買ってよく聴いていました。
当時は「スタンド・バイ・ミー」をはじめ、オールディーズを使った映画がたくさん出てきた頃でもありました。
この曲は歌メロがあまりにも素晴らしくて僕も平素からよく口ずさむ曲だけど、オリジナルの印象があまりにも強いので、アーロンがここで歌うのは意外な展開でした。
バラードっぽい、といっていいかな、穏やかにあの声で歌うのが、しかしともすればオリジナルとイメージが違うかもしれない。
7曲目Little Bitty Pretty One (R. Byrd - Bobby Day / 1957)
これは曲名は知らなかったけれど曲は知っていました。
Wikipediaには向こうでCMやテレビ番組でもよく使われていると記されていて、多分これ、どこかで耳にしたことがある人がかなり多いと思う。
「う~うぅぅとっとっとるぅっ」という印象的なコーラスで始まるのですが、音がないと分からないですね・・・
この辺は文章だけのBLOGの限界を感じますが、興味があるかたはぜひ探して聴いてみてください。
8曲目Tears On My Pillow (Sylvester Bradford & Al Lewis - Little Anthony & The Imperials / 1958)
これはなぜか曲名だけ知っていたけれど曲は聴いてみて覚えがなかった、聴いたことはあったのかもしれないけれど。
リトル・アンソニー&ジ・インペリアルズは、ビリー・ジョエルがAN INNOCENT MANでイメージしながら曲を作ったと挙げていた中に名前があって知りましたが、曲はそれと意識して聴いたことはなかった。
これも12/8の正調リズム&ブルーズのバラード、イメージそのままイノセント・マン。
9曲目Under The Boardwalk (Arthur Resnick & Kenny Young - The Drifters / 1964)
この曲はザ・ドリフターズの曲であると知るはるか前、おそらく二十歳の頃には曲としては知っていましたが、曲名とアーティスト名が一致したのは、ATLANTICのソウルの名曲を集めた編集盤を買った20代後半のことでした。
僕の愛唱歌のひとつでもあります。
この曲は、"Under the boardwalk, down by the sea"と歌うサビの部分の突き抜けた歌メロが歌っていて最高に気持ちよくて、印は踏んでいないけれど言葉のリズム感がいい。
アーロンはしかし、そこは突き抜けないでもわっと上がってもわっと下がる、そんな感じに響いてきます。
それにしてもアーロン・ネヴィルはドリフターズが大好きなようですね。
ソロアルバムWARM YOUR HEARTも、ドリフターズの曲名でありそれをアルバム名にまでしているほどだから。
ドリフターズは、僕がドゥワップと言われて最初に思い出すグループでもあります。
10曲目Work With Me Annie (Hank Ballard - Hank Ballard & The Midnighters / 1954)
ハンク・バラード&ザ・ミッドナイターズは名前すら知らなかったけれど、いかんもそれらしいグループ名ですね。
この中では、おそらく元々の歌がいちばん明るくて軽いのではないかと思うけれど、ベンモントの間奏のピアノがなんというかいかしている(死語か?)
アート・ネヴィルがハモンドB-3で参加しています。
11曲目This Magic Moment / True Love (Medley) (Doc Pomus & Mort Shuman - The Drifters / 1960)
2曲のメドレーとなっているこの曲、ブックレットには作曲者がまとめて書かれていて、ということは前者も後者も同じ作曲者かなと思う、曲調も似ているし、でも後者については調べがつきませんでした。
ちなみにジョージ・ハリスンも同じ曲名の曲を歌っていますがそれはコール・ポーターの曲で明らかに違います。
This Magic Momentは僕はマーヴィン・ゲイで知りましたが、この曲はマーヴィンにはとても合っていると思う。
でもそれもやっぱり元々はドリフターズだったんだ。
アーロンにはこうなったら、ドリフターズだけでまたカヴァーアルバムを作ってほしい(笑)。
12曲目Gooodnight My Love (Pleasant Dreams) (John Malascalco & George Motola - Jesse Belvin / 1956)
その通り子守歌のようなゆったりとした曲でアルバムが終わるのは気持ちが落ち着いていいですね。
しかしBメロでは意外と感傷的に歌メロが崩れるのがまたいい。
この曲はかなりのアーティストが歌っているようで、アート・ガーファンクル、グロリア・エステフェン、フォー・シーズンズ、ベン・E・キング、etc...
もしかして聴いたことがあるのかな、でもやっぱり最後まで覚えていなかった。
◇
キース・リチャーズは、我が強そうなイメージがあるけれど、先輩を立てるのは上手いですよね。
先輩たちも、キースの大きな音楽愛を感じてそこに共鳴するのでしょう。
ベンモント・テンチは相変わらずワーカホリック(笑)。
毎年必ず1枚は、本家トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ以外に参加したアルバムを買いますね、いや1枚じゃない、数枚。
ドン・ウォズにもやはりアメリカ音楽への深い愛情を感じます。
そしてブルーノートから出ている、それだけでも味わい深いと感じてしまうのはなぜだろう(笑)。
アーロンの歌い方は全体的に柔らかく落ち着いていて、ずしっとしてメリハリを利かせるよりは、まろやかに包み込むように聴かせようといった響き。
ロックを聴き慣れているとかなりソフトで、手応えが感じられないかもしれない。
というのはもちろん好き好きで、これはあくまでも喩えとしてイメージを書いたもの。
まろやかだけど、意外とというか車には合うと思う、まだ聴いてみたことはないけれど。
聴き応えはたっぷりの素晴らしいアルバムですよ。
しかし決して重たくないので、今は家で、夜になると2度繰り返し聴いています。
今年も素晴らしい新譜が次々と聴けることを期待しています!